本3 その他CP
□温泉旅行に行こう♪
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練習が終わってロッカー室。
シャワーも今は混雑しててなかなか空かないから汗で張り付く上半身のユニホームは脱いで、ロッカー室の真ん中に置いてある背もたれの無い長いソファーに座り頭からタオルを被って堀田はじっとしていた。
夏場はやはり体力的に凄く身体にしんどい。暑さのせいで何だか直ぐに眠気に襲われる。それだけ疲れが溜まってるのか、とぼんやりと考えてたら、ものの数分のうちにそのままうとうとと眠りに入ってしまった。
「堀田く〜ん」
どのくらい経ったのか自分を呼ぶ聞き慣れた声に堀田はハッと目を覚ました。
「あ、起きた」
顔を上げると、にまっと笑う石神の顔が目の前にあり寝起きながらもここがロッカー室だったのを思い出し、堀田はぱっと身体を引いた。
「残念。もう一回呼んで起きなかったら色々シよーと思ったのに」
「な…」
相変わらずへらへらと笑う石神は何を考えてるのか読めない。
「ほら、風邪引か無ぇうちにシャワーして来いよ」
そう促され、そうですねと堀田が立ち上がる。ふと周りを見渡してみたら既にメンバーの殆どは帰ってしまったようだった。
それに気付かないなんて、大分深く寝てたのかと堀田はすっかりがら空きのシャワー室へと入って行った。
「お帰り〜」
シャワーから出るとロッカー室には石神一人だった。
「まだ居たんですか?」
堀田がシャワーを浴びる前、既に石神はシャワーを済ませて着替えをはじめていた。シャワーだけだからそんなに長い時間じゃ無いとはいえ寝起きだし、もう次に使う誰かが居るわけじゃないしで、わりとのんびり浴びて出て来たから誰も居ないと思っていた堀田は少し驚いた。
何でまだ居るのか、自分に何か用でもあるのか尋ねようとしたが、にっと笑う石神に何となく聞くのは止めて堀田はさっさと帰り支度をはじめた。
「堀田」
すい、と隣へ来た石神に頬をふにと掴まれる。何ですかと聞き返すより先に石神が続けた。
「疲れてる?」
「え…?」
石神からの指摘に堀田は目を丸くした。
「練習中とかは気力でどうにかしてんのか…わかりにくいんだけど、たまに何かそんな顔してるからな」
「…そ、…スね。ちゃんと寝てるとは思うんですけど、何かあんまり疲れがとれて無い気がしてます…」
そう答えながら、何考えてるのかわかりにくいけどやっぱり周りを良く気にしてるなと堀田は石神に密かに関心する。
「帰っても飯食って軽く身体動かして、寝る前にシャワーして…くらいだし…」
夏の練習がキツいとはいえ私生活で無茶してるわけじゃ無いし、なかなか疲れがとれないのは何でだろう、と改めて考える。
すると石神から尋ねられる。
「シャワーだけ?風呂は?」
「…そういえば風呂は入って無いですね」
「シャワーだけじゃ無くて、ちゃんと風呂入ん無ぇと…やっぱ駄目だぞ」
若くても、と冗談まじりにそう言う石神に(と、言っても全ての言動が冗談ぽいが)変わん無いじゃ無いですか、と苦笑しながら返して内心言われた事に成程と納得する。
ちゅ
「ーーーッ!?」
納得してた僅かな油断に、今だに掴まれてた頬の反対側も掴まれて口付けされた。
こういう間を逃さずついてくる石神に言葉を無くして、かぁと赤くした顔を引くと視界にはやっぱりニヤリと笑う石神が居て何となくやられた、と悔しくなる。
そんな堀田は気にせずに石神がさらりと一言。
「温泉行こう♪」
「……………は?」
「明日からお盆休みだし」
「え?ちょっ…ガミさん!?」
急に何を言い出すのか、さすがに動揺する堀田の目の前に石神が更にぱっと温泉宿のパンフレットを突き出した。
「予約してあるから心配すんな」
「え?…いや心配してる訳じゃ無くて…」
「たまには二人でまったりのんびりしような」
「〜〜〜〜っ」
話聞いて下さい、とか他にもツッコむ所が多過ぎて言いたい事は山ほどあるが、ぎゅうと石神に抱きしめられて、言えないまま…
「楽しみだな♪」
かくして、仲良く(?)石神と温泉へ行く事になった堀田だった。