本3 その他CP

□王様ピロー
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モチミク





「……………」



 えーっと…。



 何でだ?




 シャワーを済ませてバスルームから部屋へと戻って来た三雲は毎回ながら視界に入れた今の状況に言葉を失っていた。



 自宅のように自分のベッドに寛ぐのは同じチームの先輩。雰囲気、態度、言動、すべてに王様の要素を持ち合わせているこの人は、自分の部屋の合鍵もお持ちで何故か良く部屋に居る。気が気じゃないので連絡無しで来るのは止めて欲しいが、お蔭様で部屋はいつも綺麗な方だ。



 それに、たまに悩むがこの王様が…多分(弱気)とても好きだから来てくれる事自体は嬉しいし…。



 そう思い少し赤面した三雲は自宅の自分のベッドにも関わらず恐る恐る近付いて王様の名前を呼んだ。




「持田さん」




 返事は無かった。




 不機嫌なのかと緊張を走らせながら自分に背を向けて横になる持田に更に近付く。




「………っ」




 ゴロン、と持田が寝返りをうつ。



 持田のふいの動きに情けないが心臓は跳ねて、どくどくと早いリズムを打ち鳴らした。




(寝てただけか…)



 呼んでも返事が無い理由がわかったのと規則正しい持田の寝息に、次第に心臓の高鳴りが少しだけ落ち着くと三雲は改めて持田を視界に入れた。




「…ぅ……わ……」 



 寝返りをうち仰向けで眠る持田の、横に投げ出された腕が視界に入った。




 サッカー選手として及第点は余裕にある脚に比べると少し細いが綺麗に筋肉のついた逞しい腕だった。



 寝心地良さそう…。




 …なんてうっかり思ってしまい漏れた声を手で慌てて抑えて、口に出さない限りはバレないだろうが、過ぎった考えに軽く冷や汗。



 考えが知れたらタダじゃ済まないだろうな、とふいと持田から目を離す。



 軽く頭を掻いて、何考えてんだ…、とベッドへと頭を突っ伏した。直ぐにハッと今の行動で持田を起こしたんじゃないかと、心臓はまた落ち着くタイミングを逃した。 



 持田からは相変わらず規則正しい寝息が聞こえたからほっとして、情けないような気恥ずかしいような気持ちで急に熱っぽくなった頬を三雲は再びベッドへ押し付けた。




(……………う…)




 はた、と持田と近い距離に気づく。投げ出された腕が目の前にあり三雲は硬直した。




「………………」




 怒られっかな…。




 寝てるし…。




 少しくらいなら…。




 …大丈夫…。 








 ーだったら良いな(低姿勢)。





 ころん、と



 持田の腕に寝てみた。




「……………っ」




 腕枕…。







 ってヤバイ。恥ずい。




「〜〜〜〜っっ」




 真っ赤になってるだろう顔を覆うように手をあてた。持田は爆睡なのか起きない。かといって心臓が落ち着く事は無いけど…。 



 こんな事してるくせに、直ぐにどかない自分は結構怖いもの知らずだな、と苦笑した。




 でも…。




 ちょっとだけ…。





「………………」





 …………幸せだったりして…。





 ほんのりそんな余韻に包まれてじっと持田を見つめた。




「…怒んないで下さいよ…」



 ぽつりと呟いて熱くなった顔をもう一度押さえた。





「す………」



 腕から伝わる体温に思わず口から出そうになった言葉にハッとなる。




 言え無ぇ…と直ぐに口を閉じて考えないようにぎゅと目も閉じた。




 気持ちを落ち着かせようとゆっくり目を開けて、眠る持田を視界に入れた。




(…でも、何で俺の家で爆睡してんだ…)




 答えの出るはずの無い疑問を考えて、持田を眺めていたら少しだけのつもりがうとうとと三雲も吸い込まれるようにそのまま眠りについてしまった。










「何だこれ?」




 さすがに成人男性が腕で寝てれば痺れて目が覚める。



 確かにここが三雲の家なのはわかっている。三雲のものは俺のもの。ベッドも自分の同様に転がって寝てたのも覚えてる。自分の家に帰るより近かったから…。




 で、




 だからと言って





「どーゆー状況だ?」 




 腕枕って…。




 自分の腕で三雲が爆睡している状況に持田でも暫く考える。




 つか、この俺様を枕にしてんじゃねぇよ。



 本来ボールを蹴るはずの脚を容赦無く三雲の腹部へあてて正に蹴るばかり。つか、蹴っ飛ばす気全開だったが三雲が少し身じろいだ。




「……ん」




 蹴ろうとした脚を止めた。




「…も…ちださ…ん」




「………………」





 寝言か?




 つか、腕…痛ェよ馬鹿。




 再び脚に力を込める。




「持…田さん…すき…です…」




「…………」




 ふい打ちの告白に脚を止めて腹部から除けた。




 らしく無いが。




 仕方無ェな…とか思っちまったから、本当に仕方無ェ。




 幸せそうな顔して寝てるから。





「仕方無ェな」




 感覚の無くなってきた腕はそのままにしてベッドへ大人しく背を預けた。




 視線だけもう一度三雲へ向ける。




(幸せそうに笑ってんじゃ無ェよ…) 




 ほんっと仕方無ェな…。




 ぽふと手を置いて寝てる三雲の頭を撫でた。




「………ぅ…ん」




 撫でたら撫でたで、また嬉しそうにする。懐いてきた犬だか猫だかみたいに頭を擦り寄せてくるのが擽ったい。




 擽ったいって。




 さらにモゾモゾと身じろいでくるから、いい加減にしろよ、とか思い身体を起こそうとしたら三雲がぎゅうとしがみついてきた。




「…くそ」




 調子狂うな。




 正直、可愛いかったからすっかり蹴っ飛ばす気は削がれてしまった持田は…起きたら覚えとけよ
、と呟いた。





 起きる時間にはまだ早い。




 とりあえず再び目を閉じた。



 











おわり
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