本3 その他CP
□本当の所は解らない
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モチミク
急に呼び出される、なんていつもの事。
回数を重ねれば何事も慣れていく。人間て案外単純だなとつくづく思ってしまう。
呼び出しの内容なんかは告げられない。「来い」と言われこちらに考える間どころか声を発する間も無く携帯は切られる。
今日も三雲は掛かって来た携帯に「はい」と出て「来い」と言われて、ものの2、3秒でしか無い通話履歴にツーツーと電子音を虚しく鳴らす携帯をじっ見つめた。
逆らう事など出来ないので、直ぐに呼び出した主である持田の家に向かった。
この呼び出しは誰が何と言おうと自分には絶対の為、友人と遊んでいようが買い物中だろうが直ぐに切り上げて向かう。言われた訳では無いがいつの間にか自然にそうなった。だから何故、と聞かれても答えなど無い。
呼び出されたから行く。それだけ。
「飯作って」
「…はい?」
持田の家に着いてみて、開口一言に言われた事に三雲はぽかんとする。
『王様』と呼ばれるのに紛れも無い態度で、キングサイズのベッドで堂々と背をもたれさせる持田に続きの言葉に困り果てる。
広い部屋なのでキングサイズのベッドに何の違和感も無い。割に余計な物の無い持田の家だが(因みに高級マンション最上階)、あらゆる家具がデカい。そして何だか見た目が高級そう…というか豪華だ。電化製品も例外無く。初めてココへ来た日はかなりビックリした三雲だったが、何よりデカかったのはココの主の態度だと、気づくのにさほど時間はかからなかった。
「何…食べたいんスか」
「椿君」
料理なんてロクにしないし、何を作るか、作れと言われるか…と緊張を走らせていた三雲は持田から返ってきた言葉に、ただ黙るしか無い。冗談だろうが笑う余裕も無かった。
今、自分がどんな顔してるかすら解らない。
「んな顔すんなって」
大声を出して笑う持田に三雲は益々その表情を困惑させた。
呼び出される事に慣れても、悪戯を仕掛けた子供が引っ掛かった相手の子供を笑うような無邪気で残酷な笑いをする持田には、この先も慣れられそうには無い気がした。
思考は停止してぼんやりしてると、持田の手が伸びて来て三雲はビクッと肩を跳ねさせた。次の瞬間にはベッドへと引き寄せられて持田の下敷きになる。
「……っ…ん、…んッ」
どこでどうスイッチが入ったのか頬をペロリと舐められる。直ぐに噛み付くように口付けされてぎゅと目を閉じた。
「何でお前呼んだっけ?」
「え…?飯作る為じゃ無いんスか?」
「あー」
思い出したかのようにそう気の無い返事をして体重を遠慮無く預けて自分の上に覆い被さる持田の体温とか耳にかかる息遣いに、多分、好きである以上喜んで良いはずたが三雲はただただ緊張した。
「なーんかさー…」
三雲の緊張など知るよしも無いし知る気も無い持田がぼんやりしながら話す。
「お前の顔が見たかった気がする」
「……え…?」
予想もしないその台詞に三雲の緊張も緩んで自分でもよくわからない複雑な心境になる。とりあえず驚いたし、嬉しいし、だけど何か悲しいが少し怖かったりした。
そんな三雲が見上げてる持田は何だか腑に落ちないというか不本意そうで、でもそういう事なんだと不思議がってて、互いが互いに気持ちが微妙にズレてしまっているけど、今はきっと同じ事を思ってる。
「持田さん…」
「…三雲、変な顔してるよ」
「え?」
「何?何か言いかけたろ」
三雲も持田と同じ事を言おうとしたがさすがに怒られそうだから、言いかけて止めたら持田から言われ驚いた。
「な、何でも無いです」
「あー?気になるだろ」
「いっ…だだだだだっ!も、持田さっ…」
三雲の腰に伸びてきた持田の腕がぐぎっと鯖折の勢いでしがみついてきた。言わないと(選手?)生命が危ないかもと頭に過ぎったがそれは直ぐ無くなった。
「まぁ、良いけど」
意外にあっさりと追求されずに腰も解放されて気が抜けたのと、ほっとした三雲だったが、痛みからは解放されたものの腰にくっついたままの持田にどうして良いかわからず動揺する。
「あの…持田さん?」
「黙ってじっとしてろ」
「……………」
さっきの台詞といい、こんな事されたら勘違いしそうになるな、と持田にしがみつかれながら再び、驚いて…半分以上はその意図がわからない恐怖なのがやはり悲しいが、少し嬉しくて…後は…好かれてるかも知れないと僅かな期待。
ただ本当の所は解らない。
おわり