本3 その他CP

□挑むなら万全の状態で
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「少し早く来すぎたか」



 まだ朝、というか早朝にクラブハウスに来た後藤がコンビニの袋を片手に足早に一室へと向かう。袋の中身はクラブハウスサンド(別に掛けたわけではない)、コーヒー、一応栄養を考えてサラダとサービスにプリン(上に生クリームのついたやつ)を付けた。これは朝食の差し入れ。明後日は試合がある。多分、ここに住まう住人は眠らずに策を練っているだろう、と心配も足を早める原因だった。




 バタン!



 勢いよくその扉は開いた。出てきた住人の勢いは皆無に等しかったが…。扉の前に立つ後藤にも気付いていない様で、手にした資料をパラパラ落としながらグラウンドへと足を向かわせていた。




「達海!」



 倒れないか心配になる程、足はフラフラでぼーっとしているここの住人である達海を呼び止める。ゆっくりとした動作で後藤へ振り向く達海に普段の良からぬ事を企んでいる様な意地悪っぽい口元も悪戯っぽい目も今はどこへやら…とろんとした目で力無くも口角を上げる達海は何だか健気にさえ思える。そう思える事自体惚れ過ぎだ、と心の中で苦笑する。




「おはよー、ごとー」




 眠気のせいか舌っ足らずな口調の達海にやはり心配になる。



「寝てないのか」




 わかってはいたがそう口にして達海へと近づく。 




「歯ぁ磨いてても寝かけちまうしさー、まだ色々考えたいからグラウンド行こうかと思ってー…」




「お、おい!達海っ」




 いつものジャケットのポケットに手を入れたまま足が縺れてしまい、倒れそうになったのを後藤が慌てて抱き留めた。




「大丈夫か!作戦立てるのも大事だがちゃんと寝た方がいい……って」




 倒れ掛けたにも関わらず腕の中でぐーと寝息を立てる達海に呆れてため息が出る。



「…はっ。あー…悪ぃ」



 ぱちと直ぐ目を開けて達海が見上げてくる。




「一度睡眠取った方がいいぞ。ほらベッドで…ってまた寝てるし」





 後藤の腕の中で会話も途中に寝てしまうので仕方ないので抱えたままベッドへと強制送還した。



 寝ながらもぎゅうと達海がスーツをしっかり掴んでくるのでたまにこういう可愛い事するんだよな、と目を細めて名残惜しいが今は寝かせなくてはとスーツから達海の手を離す。何だか可哀相な気もしてお詫びに寝息を立てる唇に口付けた。



「練習前には起こしに来るよ……あ、でもその時は俺じゃなくて有里ちゃんかもだが」




 寝てるから聞こえないだろうがそう言い残して達海から身体を離す。しかし、ぐいと背に手がまわってきた。




「……っ」



「ごとー…」



 達海が眠たそうに後藤を見上げてくる。眠そうなわりに背にまわされた腕の力は強い。



「すまん、起こしたか?でも少しでも寝ておいた方がいいから…」



「もっとして」



「…え」



「…シよ」



「…達海…」




 ぎゅうとしがみついてくる達海に愛しさが込み上げてくる。が、しがみつく達海から再び寝息が聞こえてきて苦笑した。



「今は寝ろ」



「んー」




 不満そうに唇を尖らせる達海を心を鬼にして(?)寝かしつけて、



「また元気な時に誘ってくれ」



 そう言いちゅと軽く口付けると達海も大人しく眠りについた。















おわり
 
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