本3 その他CP
□制限速度があるって事で
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※『怪我に注意』(『本』ページ)の続きぽいお話。
サカセラ
練習中
今日の世良は調子が悪い…というか変だった。
というのも数分前にいちゃつく(?)ジーノと椿を至近距離で見てしまったせいなのだが、二十歳越えてんだし子供じゃあるまいし、そんなに動揺してんじゃねーよ(まぁ俺も見たくないが)、と恋人でもある後輩に呆れつつ堺は目を据わらせた。
(……ガキ)
心の中でそう思いつつため息をつく。隣にいた達海に「何か世良変じゃねぇ?」と言われさらにもう一つため息をつく。
練習後
一人でロッカー室に戻って来た堺はまだユニホーム姿のまま戻って来たジーノと鉢合わせる。
「…椿は?」
一緒でなかったので聞いてみる。
「ベッドで寝てるよ」
さらりと言われた言葉に、ただの擦り傷だったよな…と思ったが深い事は聞いてはいけない気がしたし怖かったので、それ以上は聞かなかった。代わりに少し怒った口調で言い放つ。
「あんま変なもん見せんなよ」
ロッカー室のドアを開けながら堺がそう言うと、先輩、後輩だという事は気にせず当たり前の様にジーノが開いたドアへ入る。
「セリーには刺激が強すぎたかな」
からかう様に笑われ、続けて「まぁ頑張ってね」と言うと着替えはじめるジーノに堺は見透かされてる気分になる。
ジーノはさっさと着替えを済ませると椿の荷物も持ってロッカー室を出たが、やっぱり怖くてその事には触れられ無かった。
(まぁ頑張ってね、か)
中々進展しない世良との関係まで見透かされてる様で何だか癪だった。
まぁ確かに何も進展してねーよ。
椿も子供みたいだけどジーノが上手そうだしな(色々と)。
となると俺が問題なのか?
ジーノの様にエスコート(恥)してけと…?
(…………………………)
無理だ!!
つか気持ち悪い。
想像も出来ねぇ…あ、鳥肌立った。
別に俺も男だし、手ェ出すもんは出してーし。まぁ色々…。
………………(自主規制)
本当は大丈夫なのかも知れない
男同士だし気にし過ぎかもな
でも子供っぽいとこ見ると出す手を引っ込めてしまうのは…
…やっぱ進展しねーのは俺のせいか?
ぐるぐるまわる思考。
「さ、堺さんっ!!」
「何だよ!!」
「わーーっ!スイマセ〜ン!!だって呼んでんのに返事ないしっ」
「…あ、いや、悪ぃ」
考え込まされてる張本人が横に居て、つい声を荒げてしまいはっとなる。
ロッカー室には今、声を荒げた事にしゅんとなる世良と自分しか居ない事に気が付いて考え込み過ぎかと苦笑した。
「…お前、大丈夫なのかよ」
堺が怒ってる訳では無いのがわかりぱっと明るく表情を変える世良に単純だなと堺が思ってると脳天気に笑う。
「あはは、今日は皆に変だって言われたっす」
「…何か用か?」
「あ…んと…」
今度は目を泳がせて落ち着かない。やっぱりまだ変だなと目の前でもじもじして顔の赤い後輩に伸ばした手はその頬を、ふにと掴む。
頬をつままれ「何するんすか〜」と騒ぐ世良に可愛いとか思ってしまった事は言えない。頬でも掴んで馬鹿でもやらないとどこまで手を出してしまうか正直分からない。
子供にしか見えない後輩に、大人の浅ましい欲をぶつける気がして躊躇う。やはり少しずつ進んでいかないと駄目だと決めて手を離す。
「痛かったか?」
掴まれてたせいで赤くなった頬を優しく撫でる、なんて真似は出来ず、手こそ出ないが気遣って堺が聞いてくれるのが世良は嬉しい。
「大丈夫っす!で、あの…今日、その…お、王子と椿が真ん前で…その、…見ちゃって、驚いたんすけど…」
「あぁ、ジーノにちゃんと言っておいたぞ。変なもん見せんなって」
「あ、いや…そーじゃないんすッ…」
口ごもる世良に堺は何が言いたいんだ?とわけがわからない。黙っていると、ばっと世良が意を決した顔で堺を見る。
「俺も堺さんと色々シたいっす!!」
「は?」
下から見上げてくる世良に密かにくらりとしながら、数分前の自分の決意はどうしたら良いんだ?と耳まで真っ赤な世良の頭をわしゃわし撫でる。
「…馬鹿」
「ひどいっすよ、堺さ〜ん」
「ちょっとずつ進んでかねーと俺に泣かされんぞ」
「ふぇ?」
間の抜けた声を出す世良に今日は手を引っ込めず頬へと触れる。
子供みたいに真っ赤な顔をして騒ぎ出しそうな口はちゅと口付けて塞いだ。
ちょっとだけ二人の関係は進展した。
おわり