本3 その他CP
□コンパス
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ガミホタ 堀田目線
バスッとイマイチな音と共にボールは宙を舞った。
「ちっ」
「おー派手にミスったな、ドンマイ、堀田」
この頃、練習中でもミスが多くてそれが自分のメンタル面でのせいだともわかってはいるが、軽〜いガミさんの台詞に少しイラッとした。
ボールを取りに行くガミさんを見ながら軽いしいい加減だし何考えてんのかわかんねぇし、サッカーの調子の悪さから何で付き合ってんだろ?何処が良いんだ?−なんて考えにまで発展してしまう。
(…違うだろ)
八つ当たりだ、と反省して髪を掻いた。
とにかくボールをもう少し蹴りたかった。
練習後、少し残っても良いかと一応監督に聞いてみる。「程々にしとけよ」と了解を得た。俺の心境を見透かされてる様な気がしたが、監督あれで中々鋭いし追求されるのも嫌だから直ぐにグラウンドへと戻った。
自主練なんて久しぶりだな。新人みてぇ。
別に一人で残るつもりだったけど監督に話した時にたまたま(?)横にいたガミさんに残る事を聞かれ、頼んだわけでもないし同じ様に残ると言われたわけでも無いがベンチに座ってじっと静かに俺の動きを見ていた。
堀田の動きを見ながら「やっぱ上手いわ」と石神はそのボール運びや捌き方の技術の高さに本当に感心した。
気になる事はただ一つ−…
「なー堀田ぁ」
ずっと黙って俺の練習を眺めていたガミさんにふいに呼ばれて、集中を切らされ俺は少しムッした。息を整えつつガミさんを見る。ガミさんはそんな俺を気にするでもなく口を開く。
「そんなに急いだって何処にも行けないぞ」
「……………」
相変わらずわけのわからない事を、と思ったのは一瞬で、言われた言葉は鋭さこそ無いものの確実に心へ突き刺さる。
自分でもわかっていた事を言いあてられて返す言葉も無く、きゅと唇を噛んだ。
「…バレバレ…スか」
『焦ってる』事。
「まぁそんな動きしてるしな」
そう言いベンチから立つと軽く伸びをしてガミさんが俺の横にやって来る。
「…今のままじゃ駄目っスよ」
ポジションを奪われて考えがサブ組になりかけてる自分は諦めてるんじゃないか…と焦っても駄目なのもわかってるが思う様にはいかず、やはり焦る…悪循環。
「そー言うけどさ、これから俺達より若いのなんてどんどん入ってくるぞ」
「わかってますよ!」
つい声を荒げてしまいガミさんが黙る。しかし、直ぐまた口を開いて
「俺達はそいつらより長くボール蹴ってんだ。経験値は裏切らねーよ。…今までしてきた事は無意味じゃ無い…って俺は思うけどな」
「…………………」
「”余裕”かましてろよ。お前上手いし、チャンスはいくらでも廻ってくる」
「…ガミさん…」
こういう時のガミさんの台詞はすっげぇ心強い。
道に迷う俺の行き先を示してくれてる様で…。
(普段はいい加減そうなのにな…)
それから少し低めの位置からぽん、と頭を撫でられる。
焦ってた気持ちがすっと消えていく気がした。
ボールを屈んで拾い起き上がる途中で自分より少し低いガミさんの調度良い位置で、軽くちゅと口付けされた。
「……狡いっスよ」
「イイ事言ったご褒美だろ?」
そう言ってニヤリと笑うガミさんに、不本意ながらやっぱりこの人が好きだと思ってしまった。
ガミさんの言葉に元気出た…。(←不覚)
おわり