本4 ジノバキ
□要許可(出す気は無いけど)
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「……………」
「おい、椿!判断遅いぞ、もっとしっかり周りを見ろ!」
「は、はいっ!スミマセン!」
ぽふ
「椿ー、今度俺とチーム交代だってさ」
「はいっ、わかりました」
ぽふ
「何か相変わらずお前って好不調に波あんのな」
「…う、スミマセン…」
ぽふ
「誰かこっちのチーム入ってくんねーか?」
「あ、じゃあ…俺が…」
「元気だなぁ、椿ー」
ぽふ
「……………」
ベンチに座り練習を眺めていたジーノは次第に目が座っていくのが自分でわかった。たまたま近くを通りかかった夏木が、ビックウッと顔を青くした。
そんな夏木はどうでも良い。
今日も自分を見つけて、尻尾を振ってるようにしか見えない可愛い愛犬は朝から元気に「おはようございます!」と挨拶を忘れない。気怠いな、なんて思っててもそれを見ると癒されるから、コンディションの調整くらいにしか思って無い練習も頑張っちゃおうかな、なんて気になる。
そんな愛犬は自分自身にイマイチ疎い。素直で可愛いくて本当に犬みたいにボールを追い駆ける姿もさる事ながら、一生懸命な表情とか褒められた時の嬉しそうな表情は、本人は無意識だろうがもの凄く可愛い。
「………………」
だからって
皆して僕の許可無くバッキーの頭を撫で過ぎじゃない?(出す気は無いが)
そんなこんなで王子様らしく上から発言甚だしいジーノが段々不機嫌になっていった。(どうでも良いが夏木が遠巻きからビクビクしてるのが欝陶しい←存在感在り過ぎなんだよ←機嫌激悪)
「王子が色々教え込むから…」
ふいに横に来ていた赤崎が話をはじめる。
「椿が可愛い上、色気も増長させてますよ」
「……………」
足を組んでその膝に肘をついて頬杖をついていたジーノはチラと赤崎へ一度視線を向ける。
「…色々ねぇ。何を知ってるのかな、ザッキー?」
「…………別に」
夏の合宿の事を思い出し(当サイト妄想)、ギクリとなる赤崎だったがそこは動揺しないで冷静に対応する。
「争奪戦でしょ?」
ニッと挑発的に笑う赤崎。
「主を威嚇するなんて困った犬だね」
「犬になった覚えは無いっスよ」
「……………」
「……………」
ヤベェ…怖いぃ……
↑遠くで怯える夏木の感想。
くどいようだが夏木はどうでも良い。
スッと立ち上がったジーノがつかつかと椿のところへ歩いて行く。意図はサッパリわからず赤崎はそのままジーノを見送った。
「…へ?あ、…王子?」
椿の前に来て立ち止まったジーノ。何だかわからないけど異様な威圧感に椿が何かしたかな??とオロオロしている。
「……にゃ…っ…」
………!!!???Σ
次の瞬間、カプリと首筋にジーノに噛み付かれて椿が目を真ん丸くさせる。そして、思わず変な声出ちゃった…と顔を真っ赤にして口を押さえた。
「………んんっ」
なかなか解放して貰えず硬直したままの椿同様、グラウンドのど真ん中でそんな事されてはメンバーも硬直するしか無かった。
「………んっ」
漸く解放された椿はぺたんとその場に座り込む。
「どうしたの?バッキー」
抜けぬけとそんな事を聞いてくるジーノを眉を下げて見上げる椿は、練習でもまだそれ程でも無かったのに肩で息をしていた。
「…こ…しが…ぬけました…」
頼り無い口調で返事を返す椿に、仕方無いなぁとジーノがクスと笑う。
そして、ジーノの指がついと首筋をなぞるように触れてきた。
にっこり優しく微笑むジーノが椿の頭へ手を置く。
ぽふ
「僕の」
「…………」
何かこのやり取り前にもあったなぁ、と首筋から頭へ手を移動させたジーノが自分の頭をよしよしと撫でるからどちらにしろ動け無いが、椿は大人しくされるがままに撫でられた。
「……いやー、今日の練習非公開で良かったね〜。ゴトー」
「笑い事じゃ無いぞ、達海」
練習後
「今日は泣かされるなー、椿」
「何がですか?」
「…オイオイ」
冗談半分で軽〜く椿に話を振った石神もさすがに苦笑した。この時ロッカー室にてメンバー全員が、
無自覚も大概にしろよ
と、心の中でツッコんだ。
おわり