本4 ジノバキ
□これから試合!
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軽くアップを済ませていると、サポーターの熱気がいよいよ火を噴き出す寸前の火山みたいになる。
これから試合だ。
みんなそれぞれ近くにいる者同士で組んでいき円陣になる。当然誰が隣とか毎回違うし特に気にする事でも無い。
今日、ジーノの横は村越と…反対側に椿。
肩を組んだ時、試合前だってわかってたけど、ふと気になってしまったから聞いた。
「バッキー…シャンプー変えた?」
「へ?…あ、わかるんスか?」
椿が動くと近くにいるせいかふわりと香りがしてくる。まだ汗もかいてないからシャンプーの香りだけが鼻をくすぐった。
「余所の家のじゃ無いよね?」
「その言い方だと俺、野良みたいじゃ無いスか…」
「ふふ、冗談だよ」
「ドラッグストアで薦められて…」
(断れなかったんだな…)
↑メンバー一致の心の声
「あ、角のトコだろ?綺麗なお姉さんが宣伝してたよな」
「ガミさんも行ったんスか?」
「俺も試供品もらったぞ」
椿のジーノと組んでる反対側にいる世良も話に入ってくる。
「メーカードコだよ?」
「え、えー…何とかって英語のメーカーだったと…」
「ってそれじゃ全然わかんねーって」
「う…、あっ、赤いボトルでした…確か」
「じゃ俺の使ってるのと一緒かもな」
「CMしてるやつ?」
「そーそー」
「金のボトルと白もあるよな」
「金のやつ臭いきつくないか?」
「や、まだ使った事無い」
丹波や清川も会話に入って円陣を組んだまま緊張感ゼロな会話が続いた。
「バッキーにしちゃ良いの使ってるんじゃない?触り心地良いし」
ジーノが椿の背にまわしていた手を頭へ移動させて毛並みを確かめるように撫でてくる。
「って!お前ら!試合前にモチベーション下がる会話すんじゃ無ェよ!」
(クロ(田さん)は関係無いからなぁ)
↑メンバー一致の心の声。
「…あ、…えっと」
椿が自分のせいでは無いのだがオロオロしている。
「で?コッシー、いつまでこうしてるんだい?」
「……あぁ」
脱線させたのは誰だったか…他人事のように話すジーノにツッコミの言葉を失う。
くどいようだが、
これから試合だ。
「何か円陣長くないですか?監督」
松原が心配そうな顔で達海を見る。
「うーん?…まぁ大丈夫っしょ?」
円陣の会話が知れたら怒られそうだなぁ…、チラリとコーチ陣を見ながら椿はそんな事を思った。
おわり