本4 ジノバキ

□よしよししてもらえたら嬉しい
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 長いオフが続いて、久しぶりの練習だった。



 王子からは休みだったけど連絡は特に無くて、日本にいないんだろうなと寂しかったりもしたけど、休みの間は世良さんとか若手で遊びに行ったりもしてたし、暇さえあればボールを蹴ったり筋トレしたりして過ごしてたら休みは終わった。



 久しぶりの練習初日。さすがに王子が来てるか微妙だったけど姿を見つけた。



「…お…」




 名前を呼ぼうとしたけどザキさんと話してるのが見えて呼ぶのは止めた。





 俺がそんな感じでモタついていると王子と目が合った。



 遠めだったからペコと会釈をして、いつも通り自分から行くのが当然だろうと王子のところへ行こうとしたら、王子が手を前に出して制止させられた。




「来なくて良いよ、バッキー」




「…………え…っ?」




 言われた一言に身体が固まった。






 何で…



 来なくて良いって…




 俺、何かしたんだろうか?



 休み中も連絡なかったし




 飽きた…とか?






 そういえば前にいつまでも失敗を引きずる俺に餌与えないとか宣言された事があったけど…




 俺の事




 必要無くなったんだろうか…?




「……………」




 色々悪い考えがぐるぐる頭の中を駆け巡って、ぎゅと目を閉じた。






 だけど話がしたくてばっと顔を上げたら、いつの間にか目の前に王子がいた。




「…………っ!?」 



 よしよしと頭を撫でられて、久しぶりのせいか少し懐かしくて、凄く嬉しくて…




 そして




 そのまま、ぎゅうと抱きしめられた。





「……ぁ…、え…?」




 王子の言葉と行動が解らなくて、俺は目を丸くしてぽかんとした。





「どうしたの?久しぶり過ぎて主の顔、忘れたの?」




 困った犬だね、と肩を竦めて笑う王子がいつもと変わらなくて、急に力が抜けた。




 王子が抱きしめてくれてたから何とかその場に留まったけど。




「ちょっと、休み明けだからって大丈夫かい?」





 呆れた口調でそう言う王子をわけがわからないまま見上げた。



「…来なくて…良いって…王子が言うから…」




 声が上擦ってるのが自分で解った。



 泣きそうなのも何だか情けなくて…。





「……っ…ん」




「可愛いね、バッキー」 





 額にちゅと口付けされて、顔も身体も一気に熱くなる。何がなんだか良くわからない。





「久しぶりだから、僕の方からバッキーのトコに行ってあげようかなって思ったんだけど」




「…え?……え?」 




 可愛い誤解してたんだね、と嬉しそうな王子の顔を見てやっと勘違いだと気づいて恥ずかしくなった。





 安心もしたけど…。





「ホント、バッキーは面白いし可愛いね」





 再びよしよしと頭を撫でられて、




 恥ずかしいけど、嬉しいから




 こっそり王子のジャージの裾の辺りをぎゅうと掴んだ。







 王子にはバレバレだったかも知れないけど。
















おまけ


世「相っ変わらずイチャイチャしてますけど…」



堺「放っておけ」





 まわりの目は気にしません(笑)。















おわり
 
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