本7 その他CP

□至当の幸福論
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モチミク ※裏 注意!




練習が午前だけで終わった今日、まだ日が明るい内に帰宅した三雲は天気も良かったので窓を開けフロアクリーニングワイパーを片手に部屋を端から端へと往復する。一人暮らしの生活では散らかされる事も殆ど無いのだが如何しても埃だけは淡々と溜まっていくので掃除をし無い訳には行か無い。
そうは言っても、練習の疲れや多少なりとも用事で見える範囲の処のみを掃除するに至るこの数日に今日は久しぶりに見え無い範囲も掃除する余裕のある日なので、一通り床面をフロアクリー二ングワイパーで拭き終えた三雲はベッド下へと不織紙を変え埃を巻き上げ無い様に這わす。ベッド下は埃が多い。
そうして手をベッド下へ伸ばし顔までは入ら無い隙間なのでベッドの横面へ頬が付く。顔を横に向け少しでも奥の床の埃を取ろうとしたのだが、顔を横に向けた際にベランダへと視線が向いたのが不味かった。

「………ッ」

床の掃除に没頭し今はすっかり忘れていた其れが、陽射しに当てられ風に揺れ戦いでいる。爽やかな気候で気持ちが良い本日、そう視界に入ったモノに三雲は何と無く居た堪れず、其の儘床に突っ伏した。
ベランダの内側とはいえ時間的に日差しが差し掛かり風に揺れ燦々と陽の光を浴びてる其れは帰って来てから早々に洗濯機へ放り込み洗われ、ベランダの物干スタンドに掛けられたベッドのシーツである。
毎回の堂々巡りに湧き上がる自省と羞恥と…でも少なくとも自分には充溢した時間だったと色々な感情が交錯し三雲は赤面した儘、身体は動けずに居るのに心臓は早めに脈打ち掛ける息苦しい様な感覚を落ち着かせ様と小さく何度か溜息を吐いた。

「…掃除……」

時折軽やかに風に身を任せるシーツを見、思い出してしまったのは蒼空な本日の日和には申し訳無い事情である為、記憶を押し込め様と三雲はぽつりと現行ですべき事を口にし行動へ移す。
先ずはベッドの奥へと伸ばした腕を引こうと動かした。すると、ワイパーが何か引っ掛けた様でカラリと音がした。空のペットボトルが転がる時に発するのに良く似た音に三雲は首を傾げた。
音の理由を確かめ様とワイパーを手前に引き掛けた三雲だったが急に以前の記憶が蘇り手を止めた。
…前にも似た様な事があったな…。其の時はシルバーアクセサリーで…。と、ぽつりぽつりと然し鮮明に戻る記憶に再び三雲は固まった。
ベッドの下を掃除するだけ、には随分な緊張感が三雲を覆う。

「…あっ!」

この儘で居る訳にも行か無いのだが、引く事すら躊躇う現状でこの音を立てた物が何であるかを推察した三雲は思わず声を上げ、他に誰が居る訳でも無いのに瞬時に手で口を押さえた。
取り敢えず”今は引けない”と判断した三雲はワイパーから手を離し心情を表す儘のろのろと身体を起こしてベッドの側面へと背を凭れさせる。ワイパーの柄の部分だけベッド下から出てる状態なので恰も”引いてしまえ”と自分に訴えられている気になる。只、其れが何か確信出来るが故、取るのに迷う。ワイパーから視線を外し横目でシーツを見、眉を下げた。


記憶はまだ日が変わる少し前へと遡る。夜中ともなると肌寒いかと帰宅してから開けた窓を三雲は閉めた。其れと同時位に玄関が開き三雲はビクッと肩を跳ねさせた。振り返り、真夜中の侵入者の顔を確認し一先ずは安堵するものの相変わらず連絡も無くふらりと三雲の処へ現れた持田を見、合鍵を所持して於いでだった…と開いた玄関に内心納得し跳ねた肩に誰に対するでも無い言い訳をする。其れから持田へと尋ねたのだが、三雲の「こんな時間に如何したんですか?」な態の質問は生返事で返した持田は風呂へと向かう。聞いた三雲も返事には期待してい無いので構わ無かったが、この後の対応は如何したら良いだろうか…と肩を竦めた。
既に三雲は風呂を済ませ浴槽も洗い出た処だったので其の由を伝えるとシャワーだけで良いと持田は浴室へと入って行った。
暫くしシャワーを済ませ下にハーフパンツを履いて上半身は裸の儘持田が出て来る。浴槽に浸かれ無い分熱めのシャワーを浴びてきたのだろうか、寒そうな素振りは無い。タオルでがしがしと髪を拭く持田へ三雲はミネラルウォーターを渡した。

「おう」

気が利く事で、と何と無く棘のある言い回しだが何時もの事と云えばそうなので、三雲は短く「どうぞ」とだけ口にし其処で会話は途切れた。

「そうだ」

ミネラルウォーターで喉を潤した後自宅と変わらぬ態でベッドへと座った持田は、不図思い出して三雲に自分の鞄を取る様に言い、手を指し出す。三雲に言い遣った以上自分で動く気は更々無い様でベッドの背凭れに自分の背を預け脚を伸ばした儘の体勢で無言で招く様に2回程動かし待っている。
仰せの儘に、と内心に持田が此処へ来て直ぐに玄関でドサリと音を立て、置いたと云うより落とされた鞄を拾い三雲は持田へと手渡した。

「やるよ。使えば?」

そう言って鞄から取り出した物を持田が三雲へ投げた。
何か分からず慌てて落とさない様に三雲は片膝をベッドへと付き乍キャッチする。何だろう、と小さく首を傾げ其れに視線を落とし…コメントは仕兼ね黙してしまった。

「も、持田さん…」

数秒の間の後、絞り出す様に名前を呼び返答に困惑し、三雲は持田を見、もう一度、貰った…否、受け取ってしまった物に視線を戻した。
パッケージこそ黒く一見して其れとは気付か無いかも知れ無いが、簡単な英語表記なので何かは分かった。
”LOVE GEL”と書かれてある其れが何なのかくらい分かる。気になるのは数分前の持田の台詞だ。「使えば?」とは如何云う事か…。誰か…と?一人で使う場合も有るとか聞いた事が有るけれど…。
…一人で、とか。使いませんよ…。
誰か、にしたって、持田と関係を曲がりなりにも持っている自分が、他と、は全く考えられ無いし別に男がイイ訳では無いのだ。それに女性と関係を持つ様な気も今の自分には無い。
持田への憧れとか想いはある。それはそれとして、第一は矢張り一日でも早くA代表に選ばれたいという想いが強い。その想いも突き詰めると嶄然持田と、共に闘いたいと思うからで、同じチームなのだから既に其れは叶ってると云えるが、きっとプレイヤーとして持田にもっと近付きたいと望むのが根底にある。
ー結局は持田の事ばかり考えている自分に三雲は頬を赤くし、そして再び持田へと視線を向ける。


…だったら、


三雲は不意にドキリと心臓を跳ねさせた。

…だったら、…?


…だったら、誰と?



…持田さん……と?


「………ッ‼︎」

至る考えに一気に顔が赤くなる。何を考えて…、早くなった鼓動をぎゅ、と抑える様に胸に手を当てた。

「何?使いてぇの?」

「…え…っ⁉︎」

鞄の時は微動だにする気配も無かったのに、ジリと持田がベッドへ片膝をついた儘の三雲へと近付く。投げた時はそんな意図等無かったと思うが、持田の目が妖しく自分を捉え背にザワリと痺れが走る。考えてる事がバレたのか、と真っ赤な顔をして戸惑う三雲に何やらスイッチでも入ったのか、更に近付く持田に三雲がビクッと肩を揺らした。その反応にくっと喉を鳴らし持田は笑みを浮かべる。
捕食寸前の肉食動物の目の様だ。ゾクリと再び背に走ったのが警告なら気付くのが遅い、と三雲は持田の親指が自分の唇を撫で終えると同時に目を伏せた。




「…ぁっ、あッ…は…ッ」

ベッドの軋む音が耳に入って来る。音を出しているのは持田の手撫に因って敢え無く身体が反応して震える自分自身である、と理性と羞恥と欲求の合間で三雲は惑い眉を下げる。正直、今が現実か如何かさえ迷いそうだ。

「あッ…ん、ぅ」

持田の手が身体に這わされると同時に粘着質な音が付いて回る。ジェルは身体の熱と身体を這う手の摩擦とでトロリと緩くなり、妙に妖しく身体を光らせている。

「は…っ、案外イイんじゃねぇの?」

嘲笑気味に聞こえる声に三雲は眉を寄せた。支配の術中にまんまと堕ちて行くに相違無い自分を見下ろし口角を上げる持田に今は返す言葉も無い。持田は悪戯に手を其の身体に這わせる。プロとはいえ未だ若手の作り途中の未熟な体格だな、と内心で…無思慮に触れる事に躊躇わ無くも無い。然しジェルで滑りを良くした腰骨をなぞる様に撫でるとビクビク身体を震わせる三雲に持田は笑みを深めた。瑣末な躊躇等好奇心には勝て無い。

「悪くねぇな、その反応♪」

「あ、ッ…や…」

胸の突起が持田の指で抓まれ捏ねる様に動かされ三雲の腰が跳ねる。反対の手は堅く反り立った三雲自身へと伸ばし上下に扱く。

「あ、…っア…んッ」

「何かもうイきそーだな」

先程「使いたいのか」と聞かれ三雲の返答等無視して身体中を濡らしたジェル塗れで滑りも良い肌がざわざわと粟立つ。普段と違う感覚に変に身体が反応して仕舞って今にも果てそうになり、笑みを含んだ持田の台詞に三雲はぎゅ、とシーツを掴んだ。

「ふ、…っぅ…あ…」

滑りを纏った手で持田は三雲の双丘を撫で指を往復し掠める。自分で思う存分ジェルを塗った癖に「やり過ぎじゃね?」と掌で撫で、其の滑りの度合いに喉奥で己の悪巫山戯ぶりに笑みが零れる。

「凄ぇ、ドッロドロ」

掬い取って滴る程の量で態と滴らせると、ポタリと雫が落ちる感覚に三雲がビクビクとイチイチ跳ねて可笑しくなる。蝋を落とすのを眺めるってこういう感じだろうか、と悪い笑みを浮かべると良からぬ気配を感じたのか不安そうな三雲と目が合う。持田は思わず吹き出した。

「…しねぇよ」

「…え?」

「いや、コッチの話」

容器から持田がジェルを追加した指を三雲の秘部へ塗り込める様に動かす。然程慣らす事も無く、ジェルにより滑り柔らかい其処はすんなりと指を受け入れた。数回出し入れし、確信し指を折る。

「ぅあァ…ッ」

「…っ、と」

持田の指が前立腺を刺激し、既に限界の近かった三雲が白濁を飛ばした。達した余韻で身体は小さく震えている。息を荒げ、まだ意識がぼんやりした三雲はトロンと目尻を緩めた儘自分の上にいる持田を見る。

「何かもうどれだか分かんねぇな」

「…ッ、すみませんっ」

自らの頬を手の甲で拭う持田に、三雲は慌てて身体を起こす。持田の頬を汚したのが自分の欲情であるのを漸く認識したからである。持田は自分の手を眺め嘲笑気味に笑う。頬を拭ったのに、拭いきれずにいるのはジェルやら三雲の先走りにより手が濡れている所為である。
然し、起きた三雲の身体を押し再びベッドへと沈めた。

「入れんだからじっとしてろ」

自分を見下ろす持田は妙な威圧があり三雲は押し黙る。ジェルは持田自身にも塗られ、シーツはドロドロである。互いの肌が触れるヌルヌルとした感触だけで無くジェルに付いているコロンの様な甘い香りに頭がクラリとする。
とはいえ、眩暈している間も無く三雲の膝に持田の手が置かれ、視線で「開け」と促された。

「……っ…」

今更だが自分から晒すのは如何にも戸惑う。直ぐには動けずにいる三雲の膝に触れる持田の指先に力が篭り、三雲に触れてい無い反対の手が三雲の顔の横でベッドを叩く様にバンッと大きな音を立てた。
同時に持田の顔が近付き三雲の耳朶に噛み付く。

「…ぃッ……っ」

「入れてぇんだから早くしろ」

「……っ…」

耳元で熱の篭った息が掛かり、じん、と三雲の熱も再び上がる。

「涙目」

三雲の耳元から顔を上げた持田が遠慮等無く失笑する。

「…耳、イタイっすよ…」

「あー?甘噛みだろ?」

耳を押さえる三雲に持田が軽く答える。
肉食動物の”戯れる”は、動物側の気持ちはさて置き危険を伴っているんだろう、と妙な類似体感をし三雲は苦笑する。…相手は人間の筈。

「…っ、あアッ」

何処へやら思考が脱線している三雲に持田の手が其の脚を開かせると、自身を秘部へと侵入させる。

「…ぁ、アッ…ちょ…っ…待っ、もちだ…さ…っ」

「…っ、息吐け」

「…んっ、…く、ぅ…っ」

何時もより滑りは良くなってはいるが、入れたい、と三雲に言い放っただけに持田の其れも何時もより巨躯の様に三雲は感じた。言われた通りに少しずつ三雲は息を吐き許容出来るかの不安を過ぎらせつつ、其れを続けた。

「…は、…ぁ…っ、持田さ…ん」

譫言の様に名前を呼び、三雲は怖ず怖ずと持田の表情を確認する。数回腰を揺らした後、持田の手が三雲の頭をくしゃりと撫でる。

「全部入った」

「…ッ…」

そう言い悪戯っぼく笑う持田に、ぎゅう、と思わずトキメイテしまった自分の脳に三雲は額を押さえた。

「何だよ?」

「い、いや、何でも…」

そんな心の内等到底口に出来る筈も無く、三雲はさっと視線を外す。
三雲の態度に少々憮然としたのか「ふぅん」、気の無い返事をした持田が少しばかり自身を引いた。

「も、持田さん…っ」

機嫌を損ねたのでは無いかと不安混じりに三雲が声を上げると視線の先の持田がニヤリと笑った。
結局の所、其の掌の上で踊らされているだけなんだろう、と分かってはいた筈だが三雲は複雑な表情をした。再度、奥へと突き上げられ悲鳴の様な喘ぎ声が出る。

「ひ…ッ、ぁ…あアッ…」

「好きなだけイけよ?」

踊らされてるとしても、其れで良いか…、と思える。
見上げた持田の表情は何処か”勝ち”を思わせる笑みで…自分等が到底敵いそうには無い、と、兎に角”負けたくない”持田の心情を感じて三雲はズレてると片隅で思い乍らも、そんな持田にトキメイテしまった自分の脳内を再び心配した。



「…掃除、を…」

昨晩のコトを思い出してしまい、赤くした顔を押さえ三雲は再び今為るべき事を口にする。
事後、洗わ無い訳にはいか無いシーツを放り込んだ浴槽を横目に珍しく自身の吐き出した欲情を掻き出した持田が、

「本当にもうどれがどれだかわかんねぇな」

と濡れる手を三雲の目の前へと差し出し、ジェルかお前のか俺のか、と嬌笑し付け加えた。
互いに達した後、気怠さの中思考は冷静さを取り戻すと滑りは気持ちは良いものでは無く、洗い流す為に入った浴室で掻き出す持田の手に敢え無く反応してしまい、見せられた濡れた手に一先ず鎮火した筈の熱が燻り出し困惑した刹那、意外にも持田も其れは同様だった様で再び至した事も思い出し三雲は立ち上がれ無い。
そういえば、ジェルのボトルの行方等気に出来る余裕も無かったが、確かに持田が此処に居た残滓の様だと、すっかり綺麗に洗われてゆらゆら戦ぐシーツを三雲は唯ぼんやりと眺めるのだった。



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