本7 その他CP
□飲み会…その後 モチミク編(三雲side)
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モチミク
(飲み会その後〜モチミク編〜)
三雲side
「三雲、今日の飲み会お前も行くんだろ?」
「あ、はい」
練習後、ロッカー室でシャワーを済ませて着替えもそこそこに髪をタオルで拭いていると横に居たメンバーから声が掛かる。
行きたく無い、嫌だ、という程のものでは無いが行くまでの気怠さは何なんだろうか。楽しみより面倒臭さが勝っている今、行ってしまえば如何って事は無いのだが、返事は嬉々とは出来そうに無い。後輩として断る事は出来無いので半ば会社の行事と己に言い聞かせ、行くつもりだ。
そんな返事をし乍その先に持田さんと城西さんの姿が視界に入った。会話は聞こえ無かったが何と無く持田さんは来ないだろうな、と察した。
安堵感か残念なのか如何とも言えない溜息が出た。
ガチャリ
”居る”のは鍵を開ける感覚で分かる。
自宅への帰路で一人でぼんやりと飲み会では見なかった其の影が過る。こんな時に過るのが大概悪い印象では無い姿だ。トッププレーヤーとしての其の姿は、子供達が「大きくなったらサッカー選手になりたい!」なんて”将来の夢”にしたくなるものと変わらない。
…憧れてるんですよ。
…とか
とても口には出来ない。
(持田さん、来てるのか)
期待も少しはある。自宅へと帰るのが面倒らしく如何いう訳か居心地も悪くは無い様で良く此処へ来るのだ。
居てくれて嬉しい。……多分。
ただ、開けた瞬間のギクリと跳ねる心臓は何でだろう。
今日はかなり飲まされたから考えが纏まら無い。
「あ…れ?持田さん…」
ぼんやりする視界で無断在宅主を呼ぶ。返事が無い事に、今、焦りや恐怖が無いのは酔っているからか多少なりとも慣れか。
黙って暫く此方を見ていた持田さんはふっと視界を外した。
「…………っ」
それは何故か嫌だと思った。
突き放された様な気持ちで思わず身体が動いた。
「……持田さん」
名前を呼びつつ視界も思考もいよいよ無くなって来る。倒れ込む様に持田さんの背に額を当てる。素面ではまずは出来ない。
「…重ッ、三雲!お前、かなり酔って無ぇか?つか、退けよ」
低い声色が耳と、背に当ててる額から脳に響く。
「俺、持田さんの事…憧れてるんです」
一瞬
もともと他に誰が居る訳では無い部屋だが、更に静寂さが過った。
…一瞬、だったけど。
「痛ってぇ…」
殴られたのは、ベッドへと撃沈した後、気を失い掛けつつそうなんだろう、と気付いた。酔ってるって凄い。
記憶は其処で途切れた。
…だから
赤面した持田さん、とか
「…如何してやろうか」
そんな不敵な笑みと恐怖の台詞も知らないまま
きっと、さっき自分が言ってしまった告白も目が覚めた頃には忘れている。
おわり