本7 その他CP

□UNDER モチミク編
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モチミク





「も…ちださん」

「あ?」

毎度の様に三雲の部屋へと上がり込んだ持田が、暑いと言って着ていたTシャツを豪快に脱いだ。男同士だし着替える姿も同じチームなので見た事もあるし、況してや実際にあったら冗談とは思えない気合いの入った刺青が有るわけでは無いので、今更驚く事も無いのだが、三雲は冷蔵庫からミネラルウォーターを出し乍も傍とその姿を二度見した。
暑さで機嫌を損ねてる今日の王様が気怠そうに声を発するので、思わずたじろいでしまった三雲は言葉に詰まる。

「…んだよ」

「あ…!はいっ」

一瞥されたその視線に怯み、三雲は慌てて返事をする。

「持田さん…何か、逞しくなってるなーと思って…」

「は?」

持田に言われる事も無く汗を拭く様タオルを差し出し乍、三雲がそう話す。それから、ミネラルウォーターも渡し…事持田に関しては専属マネージャーかの様に気がまわる己に内心戸惑った。多少なりとも動揺が顔に出る。
そんな三雲の内心はどうでも良いし興味も無い持田は何言ってんだコイツ?という表情で片眉を上げたが、直ぐに「あぁ」と自身を見る。

「他にやる事無ぇからな」

足への負担を考慮し、練習のメニューも三雲達とは別に組んである持田には、じゃあ他を鍛えるか、何て時間を費やした結果なのだろう。足は見た目では自分と変わらないのに上半身は持田の方が逞しい。
筋肉を鍛えれば、怪我もし難くなる。持田の足がそう言うレベルの話では無いのを本人からは聞く事が無いものの、チームメイトとして否が応でも耳に入って来る情報で知ら無い訳では無い三雲は、鍛える其の理由を推察し乍それはそれとして…道理で当たり負けしない筈だ、と納得する。

「凄いスね」

「だろ?」

男から見ても格好良いと思える。三雲の驚きに持田はにっと口角を上げた。機嫌は良くなってそうである。

「わ…ッ!」

一先ず飲むのをやめたミネラルウォーターを手渡されると同時に、くっと持田が笑う様な気配がした。ミネラルウォーターを受け取ると急に手を引かれ持田を下にベッドへと倒れる様に三雲は膝をついた。

「持田さん!危ないですよ!」

「じゃあ気ろつけろよ」

万が一持田の足に自分の体重が掛かったりしたら洒落になら無い。持田の急な行動に、もしそうなったら…と青ざめ乍三雲が声を荒げた。
無茶をしたのは持田の方なのに此方に気をつけろ、とは王様は今日も傲慢な発言を為さる…、三雲は困惑した面持ちで持田の方を見たが、持田は平然とし嘲笑する様に喉を鳴らした。

「…ッ、ちょ…持田さん⁈」

持田の手の平がペタリと自分の直肌に這わされ三雲は狼狽する。三雲のシャツを躊躇無く捲り上げ持田は両の手の平で肩から鎖骨へと滑らせる。それから胸の突起へとその手を掠めたのが、其れが態となのはピクリと反応した三雲に意地悪く笑う持田の表情で分かる。持田はそれ以上、三雲を気にも止めないまま手の平を滑らせる。他愛も無く反応してしまった三雲が気恥ずかしさで渋そうな表情をするので、其れに気遣う事も無く笑みを吹き出した持田の手の平は更に下へと下り三雲の腹部で止まる。

「俺の勝ちだな♪」

三雲の腹筋に手の平を押し当て確認する様に自分のと比べ、にやりと笑う持田の表情は子供みたいに見える。本当にどんな事でも負けず嫌いな人だ、と悔しさ半分とこういう処も含めて好意を抱いている自分に三雲は複雑な顔をした。

「…持田さん、本当鍛えてますね」

「…お前ー…」

負けを宣告された三雲は悔しさが多少なりとも表情に出ていたのか、持田からは拗ねている様に見えた。至近距離で肌に触れている所為だろうか…普段ならプライドも手伝って落ち着いて見えるが、今は年相応かそれ以下の後輩の表情は、それが何だか可愛くも見えて不意に焚き付けられた。

「……っ」

何でコイツに?とか色々と考えるのも面倒臭くなり持田は衝動のまま三雲を抱き締めた。

三雲は驚いて息を飲む。

暑い、と言ってたその身体は今だ冷めず火照っていて、直に触れるその筋肉質な身体を余計に…妙に意識してしまい心拍数が上がる。

「三雲」

「な、何スか?」

「耳真っ赤」

「……ッ…」

耳元で笑う持田の息がかかり益々落ち着きを無くした心臓にどうしようも無くなり三雲は息を詰めた。抱き締められて想いを持て余し震えそうになるー…、なんて何処の乙女だと自身の脳を心配したくなる。

「…おい」

鼻先が触れそうな程近付いた持田の目が熱を帯びている。心臓が跳ねる感覚に奥歯を噛み締めた。身体が熱い…。重なる唇はスローモーションの様に感じたが、身動き一つ取れ無かった。

「…ん…ぅ」

逸らされる事が無い持田の視線に耐え切れず、三雲は目を閉じた。合わせてつい閉ざしていた唇は強引に抉じ開けられる様に開かされ互いの舌が当たる。一瞬、萎縮する三雲をお構い無しに深くなる口付けに、三雲は思わず持田へと手を着く。

「…っ、あ、すみませ…、重い…ス、ね」

出来るだけ体重が掛からない様にしていた三雲だったが、そんな気さえ使えなくなる。口付けされ持田の手が身体を這い回るのに上擦った声で如何にか言葉を繋げるので精一杯だった。

「お前が動けよ」

上がる口角に覗く赤い舌が肉食動物に他なら無いと片隅に過る。
首を縦に振ろうが、横に振ろうが自分に選択の余地が無いのを三雲は確信しているのであった。






おわり
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