本7 その他CP

□ clear sky
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タンザキ




「……………」

身体が痛い。

つか、重い。

ボンヤリと気怠い思考と身体を起こして赤崎は即時に赤くした顔を覆った。

昨晩花火の上がっていた空を部屋から見上げて、清々しいまでの快晴に申し訳無いが唸る。

随分、ハメを外した…記憶が…有ります…。

「だーーーーッ‼」

「だーーーいじょうぶか?お前」

思わず叫ぶのをシャワーを浴びて来た丹波に真似をされ声を掛けられる。丹波の機嫌が異様ーーに良く(見えるだけかも知れ無いが)、且つニヤけた口元に(何時もか?)何と無く憮然とした赤崎はフイと顔を逸らした。

「俺も…、シャワー浴びて来る」

「うん♪」

のろのろと立ち上がると、ちゅと軽く口付けされた。

「おはよ♪」

「……ス」

緩んだ丹波の表情に反論する気力が今は無く、挨拶も手短かに、睨んでみたが効果も無く、そんな赤崎の内心を見透かしているかの様に丹波に頭を撫でられ、認めたく無いが心地良かったりしたので赤崎は再度叫びそうになった。

堪え、浴室へ。




「あれ?」

シャワーを浴びて戻って来た赤崎は丹波の姿が見当たら無い事に首を傾げる。帰るなら帰るで挨拶はしろよ、と唇を尖らせた赤崎だったが、カタンと音がして其方を向くとクローゼットの前で丹波が代表のオフィシャルスーツを出していた。

「何勝手に他人ん家のクローゼット開けてんスか」

「あ、赤崎。ちょっとコレ着てみてよ♪」

「話を聞…」

口調とは裏腹に安堵した自分に複雑な心境になる。何処か能天気な先輩はそんな後輩の心情を知らずに代表のスーツをクローゼットの表に掛け期待の眼差しを向けている。反論を言い掛けた赤崎だったが、余りに子供みたいに楽しそうに笑う丹波に肩を竦め手を差し出した。

「良いの⁈」

「…しょうが無いスね」

濡れた髪を拭き乍、照れた様な表情の赤崎は矢張り可愛い。丹波は満面に嬉しそうに顔を綻ばせた。

「手伝おーか?」

「大丈夫ス…」

緩む丹波の顔を横目に赤崎はスーツへと身体を通す。脱いでく姿も良いけど着てく姿も新鮮かも、何てこの後輩からは呆れられそうな事を考えつつ丹波が眺めていると、着終わった赤崎がピシッとスーツを整えていた。ネクタイもキチンとしてくれた辺りは赤崎らしいと眼福になる。

「ーッ!」

着替えを眺めていたのに改めて射抜かれ丹波は目を丸くする。馬子にも衣装!いや、違うか⁈チームのスーツ姿も良いけど違う姿も大変良い!◎
汚したり皴になるといけ無いのでやら無いけど(耐)押し倒したくなりました。昨日の今日なんで(爆)!

「も、良いスか?」

馬鹿な事が脳内で満載する先輩から不審な余波でも感じたのか、赤崎が早々にスーツに手を掛ける。

「えっ⁉早ッ!待て!写メ撮って良い⁈」

「はァ?」

カシャ、と赤崎が呆れ声を出すのと同時に携帯からシャッター音がする。

「って、もー撮ってんじゃ無ェか!」

「可愛…(いーvとか言ったら怒りそう)…格好良いなー♪さすが!似合うわ、赤崎ぃ」

「そ、スか…?」

手離しに褒めると赤崎も満更では無くなる。単純な処も可愛い。赤崎の扱いが小慣れて来た自分にもニヤけそうになる。

と、言っても勿論本心でもあるが。

「試合頑張ってな〜。あんまり緊張するなよ」

「椿じゃあるまいし大丈夫スよ」

自分で代表の結果聞け無かったのに?とは言わず、案外選ばれてしまえば波にも調子にも乗ってくるだろうし、赤崎はそれくらいの方がらしくて良いか、と丹波は一人頷く。

「あー、暫く会え無いんだよなー…」

「…………」

丹波が寂しそうにそう言うと赤崎も今更ながら其れに気付いたのか、黙り込んでしまった。

少しして普段通りの口調で赤崎が口を開く。

「…其の儘海外進出するかも知れ無いですしね」

「有り得る!」

「…………」

「どーした?」

「いや、からかって来ると思って…」

生意気ばっか言ってんじゃ無ェよ、と丹波の台詞を予想していた赤崎は拍子抜けして言葉を返せず丹波が首を傾げた。瞬時しんみりした空気を変える為に言った赤崎なりの気遣いだったかも知れ無いと丹波は笑い赤崎の頭をポンポンと撫でた。

「お前なら有ると思うよ」

「ま、…まぁ、当然ス」

いつもの様に勝気に返事をする赤崎の返事に丹波はにんまりと笑い、少し遠くへと視線をやる。

「色々先はわかん無ェけどさ…」

それは本当に"色々"な意味なんだろうと…まだ急には考えられ無いし実感は出来無いが、少し寂しさが過る。口には出来無いその感情を押し込めて赤崎はチラリと丹波を見る。丹波は"先"の事をちゃんと考えてるのだろうか…。軽口ばかり叩いてても10も上だし、先輩なんだよな、なんだかんだで…。感心と尊敬で目を伏せる。




「あ、一先ずU-22のユニ姿の写メ、送ってくれ!」

「…………」

「呆れた顔してるぞ」

「…呆れてるんスよ」

やっぱり、何も考えてる様には見え無い。つか、考えて無ェだろ!

気楽そうな丹波に少なくとも肩の力は抜けた赤崎だった。





おわり
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