本7 その他CP

□選んだモノは限りなく淡く
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Fahrenheit』の華倫様より頂いたモチミクの続きを勝手に妄想した駄文です。





モチミク







「…それは俺なら如何にかする、って捉えて良い……」

飲み込んで仕舞おうと思っていた筈なのに、不図、思わず尋ねてしまった三雲は慌てて口を押さえた。言うつもりは無かった…!狼狽するのを如何にか抑えたが、明らかにぎこち無い視線を目の前の持田に向けると、目を丸くしポカンとしていて、…ので、すか?、と言い終えるのに変な間が出来た。
次の瞬間には持田が吹き出すので、分かってましたよ…と想定通り過ぎる現状に己の持田に対する尺度を改めて正す。
…然し、戻ったか如何かは残念乍定かでは無い。

そう自省する三雲の事等知ったことでは無い持田は、笑いが止まらず「苦しいだろうが!」と未だ笑い乍三雲に理不尽な文句を放っている。

何でこんな事を口走ってしまったのだろう…。己の失態に三雲は額を手の平で覆い下を向いた。
如何せん先程抱え込んでしまった爆弾…意図せず抱え込まされた其れの起爆スイッチは今、誰の手にあるんだろうと、冷や汗を感じた背に眉を下げる。所謂”秘密”を知ってしまったのだが、別段、と言うか全くゴシップ好きでは無いし、こんな事を知らされても嬉々とは出来そうに無い。分かっているのは、決して”弱みを握った”訳では無いと言う事だ。
横で笑う持田の声を甘んじて受けるよりは仕方無い現状の中、思慮を巡らせてもぐるぐると混沌するばかりだった。うっかり言うつもりも無かった事を口にしてしまったのは、そうして一人だけ右往左往している様で少なからず悔しかった所為かも知れ無い。”一矢報いる”では無いけれど、僅かでも引っ掛かれば良い…みたいな、細やかで他愛無い程度の抗議だ。只、結果は引っ掛かかりもせず落とされたんだろうな、と肩を下げた。

「如何にかするだろう、つーか…」

三雲がもう若干諦めモードで持田の笑いが収まるのを待っていると、漸く持田が話をはじめる。

「お前が如何にかなってんのを見るのが楽しいから見守るわ」

「……………」

助け船は来無い、と確信する。

「あ、でも俺の居無い處で王子サマに苛められんなよ」

「?…どういう意味ですか?」

「面白く無ぇからな」

「…………?」

其れが如何云う意味なのかと三雲なりに推察する。持田の表情から己が其の意図を読み取る等、出来るとは思え無いが……ジーノに自分が遊ばれてるのが気に入ら無いと云う事だろうか…、微量でもそうやって自分を気に掛けて貰えてるなら、と淡い期待をしてしまう。思考と視線の先の先輩は夜とはいえ夏の暑さに気怠そうに息を吐いて、既に先刻の言葉は何処かしらに追いやってしまっている様だ。…いや違うかな…其れが見られ無い事を指すのか?と気に掛けて貰えてる訳では無いか…、と三雲が二つ目の考えに至る時には持田は欠伸をして花火へと視線を向けている。
思えば、こんな花火大会の日に後輩の男を連れてこういう店に来るというのは(まぁ、人混みを嫌がってとの事もあって此処だったのだが)、楽しくは無い…気がする。今宵、誘われた側ではあるが、そんな不安が過ぎり言葉は出てこない。

「に、しても…お前とだと気ぃ遣わなくて良いからラクだなァ」

杞憂だろうか。

先刻の不安が薄まる気がした。
持田の一挙一動で気持ちが変わる自分は案外単純かも知れ無い、と呆れつつもグラスを手にリラックスしている様子の持田を見る。

退屈している訳ではないのだろうか…。

自分で無くても気を遣ってる様な気はし無いけれど、と内心に…そんな持田の台詞に三雲は多少なりとも安堵する。
胸に掠めた”淡い期待”を今だけ密かに自分に満たしたいと、三雲も花火に視線を向け一呼吸する。内に留めるに至る憧れの先輩からの誘いと花火をU-22への激励だと思いたい。

「トコロで心中思うヒトってーのはダレだよ?」

「………ッっ!?」

この短時間で色々あり、すっかり渇いた喉を潤そうと出された飲み物に口をつけた三雲だったが、不意の持田の台詞に盛大に噎せた。
涙目で恐る恐る視線を持田に向けたが、からかう様な悪戯っぽい笑みで、聞いた割に強いて興味も無さそうで他愛無い軽口の様だった。

三雲の狼狽える姿を見て楽しそうな持田に、未だ咳き込み乍三雲は苦笑する。
尺度の正しさ云々の前に、ハカルモノが正しいか如何かアヤシイのか…、噎せる三雲に見兼ね店員から出された水を三雲は軽く頭を下げ受け取った。ゆっくりと飲み干した水はやけに身体に沁み渡る様な気がした三雲だった。








おわり






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