本7 その他CP

□続・気になるもの
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ハマキヨ





「如何した?」

前回、ずっと石浜に(熱い?)視線を送られていた清川だったが今日に至っては逆に視線を送ってしまっていた事に、石浜に首を傾げられた時に気付いた。
あれから石浜には項にちょいちょい口付けされている(赤面)。意外なフェチがあったもんだと呑気に考えてしまったのは余裕では無く現実逃避に近い。
しかし、逃げてばかりもいられ無い現実に遭遇し、言いたい事は言え、と言った手前だけにバツも悪い。確かに言い難い事はある、と今現在身を持って知る。

「ハマ…」

自身のそんな手前勝手な情け無さに眉を下げる清川が申し訳無さそうにしている。清川の内心の困惑迄は分からないが、石浜は前回の自分を見ている様で苦笑した。となれば、次の行動も読める。

「……わ、悪い!」

「おっ……っと、と」

自分の横をすり抜けて後方へと走って行く清川に、行動は読めたのに止められ無かったのを、石浜はさすがこれからETUを担うSBだと笑った。

目は口程に物を云う、そんな言葉を脳内に清川は過ぎらせる。好意の視線は悪い気がしない。意識をしてしまった以上尚の事。

だから、



…だから、



「…だ・か・らって……俺って、何つー…」


くしゃくしゃと髪を掻く。




そんなこんなで練習後。

「"言いたい事があれば言えよ"♪」

にやりと笑う石浜が清川の隣へヒョイと顔を近付ける。ついビクッと身体を引かせてしまった清川は伺う様に石浜へと視線を向ける。

「あのさ…キヨ、無理そうなら言ってくれよ」

そう言い穏やかに笑う石浜はとても前回散々言い渋っていた側の様には見え無い。清川の態度にも傷付いた素振りも無かった。

「ハマ、お前ってさ…」

石浜が気を遣っているのはわかる。自分の態度も悪いのも…。
わかるから…、清川は拗ねた表情で口を開く。

「自己完結するクチだろ!」

「…は?」

「そーやって相談も無しで勝手に決めて一人で納得すんだろ!」

「…キヨ?」

「ーああぁーーー!」

「キーヨ?」




大分混乱させている様だと石浜は宥める様に清川を呼ぶ。前回同様屋上で、今日は此処へ連れて来たのは石浜だが…その視線の先には自己嫌悪に陥り小さくなってる清川が居る。石浜は思わず吹き出した。

「何笑ってんだよっ」

「ごめ…っ、だって可愛いくてさー」

「な、な…っ」

誰に対して言ってんのか本当にわかってんのか、と聞き返したくなる石浜の台詞に清川が赤面する。

「俺はさ、言いたい事言ったばっかで今は結構スッキリしてるよ。ただ、キヨが無理してんじゃ無いかだけ気になるけど」

「…………無理して無ぇよ」

「じゃあ、キヨの言いたい事って何?」

「…………ぅ」

覗き込む様に見遣う石浜に再度尋ねられ、清川は言葉に詰まる。本当勝手だよな…、反省はしてます、反省は。
多分きっとこのまま答え無くても石浜は怒ら無いだろう。それもわかるだけに余計に清川は自分が嫌になる。

「だ、だから!」

「うん」

「…っ…で…」

絞る様な声色の清川に石浜が小首を傾げる。聞こえ無かったという石浜の表情に清川は顔を赤くし乍"この際"(つか、どの際?←混乱気味)と勢いで口走る。

「何で項にしてくんのにクチにして来無ぇんだよ!」

「…………」

「……あ…」

「…………」

「…………」

変な沈黙に清川がオタオタとしている。ただ、何と言って良いのかは分からない様でジェスチャーだけでクルクルと動いていた。

「………………ぷっ…」

意外な台詞に驚いた石浜だったが、そんな困り果てた清川の動きに失笑する。清川には、「何だよ、もー」と剥れられるが、それでも笑いは止まら無かった。

「わ、悪い………っ、ふ、く…っ」

「本当にそー思ってんなら笑うのをヤメろっつーの」

「うん、そーだな……ぷっ…」

まだ笑い続ける石浜に、清川はもう諦めた様にストンとその場に座り込む。色々と口で文句は言うものの怒る気も無い自分にも内心呆れる。…笑ってる石浜は好きなのだ。

「…ぅ、わッ」

「気付かなくて、ごめんな」

そんな事を考えていると、石浜の手が頬に伸びてくる。

「べ、っつに…」



ちゅ



「……………」

「……………」

何でし無いのか、と機嫌を損ねてたのは他でも無い自分なのだが不意に重なった唇に清川の思考は停止していた。

「…口にしたらさー、いよいよ止まら無くなりそうだったから、なかなか出来無くて…って聞いてるか?」

動か無い清川の顔の前で石浜が手をヒラヒラさせた。

何でし無いのか、って聞いてきた筈なのにポカンとした儘の清川が可笑しくて、石浜はまた笑い出す。

「キーヨ?」

重症かな?清川はまだ動か無い。今の俺には据膳にしか見えません、と石浜が再び口付けると一気に真赤になり案の定「何すんだよ!」と怒り出す。

それでも、笑ってる石浜の顔を見てホッとしちゃう自分に清川は感情を迷子させているのだった。






おわり
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