本7 その他CP
□こわいものとは?A
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モチミク
「持田さん…」
彼此、3日目。ウンザリしてる後輩を横目に持田は構わずDVDをセットする。カリスマ性もさること乍、其処に存在するだけでも威圧感を憶え、口にはした事が無いが"憧れ"ている持田に対してウンザリ等して良いかと云えば、本来出来る筈もありません、となるのだが、流石にそう成らざるを得ない精神状態の三雲なのだ。
目の下には隈が出来ている。少し窶れた感もある。勘弁して下さいと目で訴えつつ持田の名前を呼ぶ声にもイマイチ覇気は無く、限界であるのは明らかだった。
其れでも、つけられたDVDをベッドを背に床に座り持田の横で並んで鑑賞する。並ぶと一瞬トキメく自分に苦笑する。しかし、TV画面に映し出されたモノに気分は底に落とされる。鑑賞とは作品を理解し味わう事。現在、画面に映し出されているモノは三雲には到底其れが不可能なシロモノなのだ。断れ無いのは"後輩"という立場上かつ相手が"持田"だからだ。
「……っッ!」
今、正に画面に揺らめく影にビクっと三雲が肩を跳ねさせた。
嫌でも鑑賞させられているのはホラー映画である。他チーム等サッカーののDVDなら良いのに…。
三雲は如何にか気を紛らわそうと一呼吸する。吐く息は限り無く溜息に近い。
三雲が案外怖がりである事を知っているのは、よりにもよって持田である。メンバーに知られている事と天秤にかけ、何方がマシかと聞かれても答えは出そうに無い。
そして、其れを知った持田が此れをネタに三雲で遊ば無い筈も無い。そんなこんなで3日目である。連日苦手な映画を見せられて三雲は日毎に大分参っていた。
怖い筈であるのに律儀に画面を黙って見ている三雲に、持田はチラリと視線をやる。如実に疲労の色を見せる三雲に試合で使い物にならなくなっても面倒だ、とそう考える事は考えたがこの鑑賞会を続けてしまう理由も持田に密かにあるのだ。
互いに口を開く事も無く映画の効果音と台詞が静かに淡々と流れていく。持田的には既に飽きている。頬杖をつき只画面を眺めていると、不意にくっと服が突っ張る感じがする。真っ暗な部屋で、TVの明かりのみがぼんやりと光る。良くこういうのを見てると呼んでしまうなんて聞くが、馬鹿じゃ無ェの?くらいの気持ちでつまら無い話だと気にした事も無かったし、本当か如何かは体験した事も無かったが「マジか」と視線を下ろしていく。
ハッキリ言って、如何でも良い事だし映画自体も実は興味は無い。来るなら来るで構わ無ェけど、誰にちょっかいかけてんのかわかってんのか?…と、本当にそんな事になっていても寧ろその類の方が恐れてしまいそうな視線を其処へ向けるが、視界に入ったモノに持田は座らせていた目を丸くした。
服は確かに掴まれていた。
確かに掴まれいる。(二度見)
「…………」
本人も多分無意識だろう。
「三雲…」
「…な、何…ですか?」
三雲は身体を強張らせている。開いた口調も何処と無く堅い。
其の手の先は持田の服をぎゅと掴んでいた。
「お前…」
「はい?」
「……いや、何でも無ェ」
「……?」
案外…可愛いらしい事もするんだなー…と、
そんな三雲にちょっとハマっている為、持田は連日ホラーなDVDを持参でやって来るのだった。
おわり