本7 その他CP

□格言然り
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サカセラ




「この試合、フィフティーンフィフティーンっスね!」

「…残りの70%は何処に行ったんだ?」




練習後、堺の家へお邪魔している世良は他チームの試合を見乍らテンションも高く冒頭の台詞を吐いていた。
毎度の事なので呆れつつ、しかし、ちゃんとツッコミを入れる律儀な堺である。当の世良はボケているつもりは無いので、大きな目を更に大きく丸くしてキョトンと堺を見る。
天然め…、そんな一言で片付けて良いものか悩むが小さく溜息を吐いて堺も同じTV画面を見る。

世良も再び視線を戻した。

試合を夢中で見る世良を堺はチラリと横目で見る。

赤崎と椿がUー22の代表に選ばれた事を知った日は、世良はそりゃもう騒いで落ち込んで羨んで嬉しそうにしてて、と感情の展開の早さにウンザリもしたが最近は随分落ち着いた様だ。
今やそんな期待は出来無い自分は、そんな世良が少し羨ましいと思った。だからと言って今を諦めてるとか未来に闘志が湧か無い何て事は無いが、矢張り可能性の広さの違いは感じる。

でも、自分より年上の選手だってたくさんいるしな…。

「堺さん、どーしたんスか?」

「あ?」

TVでは無く世良を見乍らボンヤリしていた堺。目の前に覗き込む様な世良が居て、はた、と我に返る。

「別に。お前見てると勉強になるなーと思っただけだ」

「へ⁈」

「何つー顔してんだよ」

「いや、だって堺さんがそんな事言うなんて…変ス!」

「…変…て」

俺、如何思われてんだ?世良があまりにもキッパリ言い放つので怒る気も失せてしまい、堺は失笑した。

「他人の振り見て我が振り直せっつーだろ」

「酷いッ!」

「って、ちょっと安心そーな顔すんなよ」

「いやー、ちゃんと堺さんだーとか思って」

「…馬鹿だな」

「わ、わ…ッ」

堺の手が世良の後頭部を押す。少々強引に近付いた互いの顔に世良が慌てる。

「キスしたい」

「う、わ、…ぁ、や、やっぱり堺さん変ス〜」

情け無い声を上げる世良に二度目となるとイラっとして堺の眉がピクリと釣り上がる。

「嫌じゃ無ェなら黙ってろ」

低い声色でそう言われ、既に堺の顔は触れそうな程近い。
すっかり大人しくなった世良に思わず素直で可愛いな、なんて堺は思った。大きな目が少しずつ伏せられていく。赤い頬と、きゅと閉められた口、ちょっとだけ眉を下げている表情は緊張してる所為か普段の態度とまた違う幼さがあって、つい犯罪じゃ無ぇよな…と自身に確認する。

「あ!」

「あ?」

「フィフティー…フィフティーン?スか⁇」

「…………残り35%は如何した…」

唇が触れる寸前の気の抜ける台詞。

惚れている、って凄ぇな。

自身にそんな実感をした堺だった。






おわり
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