本7 その他CP

□手ーモチミク編ー
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ジノバキ『after such a long time』の続き。


モチミク




「あーーー」

「お、お疲れっス」

試合後はそれ程機嫌が悪く見え無かった持田だったが、控室に戻って来てもまだ姿を見無かった。少なからず気にかけていた三雲は漸く戻って来た持田に安堵するのも一瞬で、すっかり不機嫌な声色の持田にたじろぎつつ挨拶を済ませる。
どうしたんですか、なんて即時で聞ける気安さは持田には無い。さっさと控室から出てしまおうかと思ったが、気が付けばチームのメンバーは帰り支度を済ませて居無く持田と二人きりだった。
何と無く出るに出れ無いし、持田へは話掛けられ無いし…で間を持て余す三雲は、シャワーを浴びてる持田を控室のベンチで待つ事にした。


「何?まだ居たの、お前」

「え、…あ、まぁ」

戻っていても良かったかな、と素っ気無い持田の声に三雲は返答に詰まる。
持田は簡単にズボンまで着替えを済ませていた。上半身はまだ裸のまま黙々と髪を乾かしている。

「…………」

やはり、色々聞き難いし間が持た無い。

そう思い控室を出ようとした矢先、隣へ持田が座った。

「…も、持田さ…」

どうしたんですか、の問いは再び三雲の中に押し込まれた。
近付いて来た持田の顔にドキリと心臓を跳ねさせた三雲はそのまま唇を塞がれる。

「…ん、…っ」

躊躇無く侵入して来た持田の舌の感触に三雲はビクリと自分のを引っ込める。応じて良いか戸惑っていると更に口付けは深くなる。
応じろ、と言う事だろうか…恐る恐る返すと妙に甘ったるく絡められてぞくりとした。

「……ふぁ、…ぁ、…はぁ」

「…逃げ無ぇの?」

「…え?」

意識も飛びそうな程で、座っていなかったらその場に崩れていたかも知れ無い。唇を離されぼんやりとしてると持田から尋ねられ三雲はキョトンと持田を見返した。

「 逃げる必要無いんで…逃げません、けど…」

「ふぅん」

持田の意図は解ら無いが正直な思いをそのまま返す。持田は只、そうか、とだけ簡単に口にするとベンチへ背を凭れさせた。

「…ッ」

三雲の手を握って。



「も、も、…持田さん⁈」

「黙ってろ」

「………ッ」

先程から座っているだけでも崩しそうな身体を支えていた手を、持田から上から握られ、動揺するなと言うのが無理な話だ。慌てる三雲だったが持田にぴしゃりと黙らされ、自身の鼓動の早さばかりが内に響くのを困惑させた。

「嫌なのかよ」

「嫌じゃ無い…ス。只…」



「不慣れなもので…」

持田さんに、こーゆー事されるとか…。


真っ赤な三雲の顔を横目に、そしてW逃げられないW事が、案外気分が良い。

さっきまであんなに機嫌が悪かったのに自分も結構単純だよな、と持田は内心思う。


「おい、まだ居るのか?もう出発するぞ」

「あー、悪いね。城サン」

直ぐ行くよ、と首だけ振り返り持田が城西に返事をする。
突然開いたドアに三雲がビクッと肩を跳ねさせるのを見逃さ無かった持田はニヤリと笑い、更に三雲の手を強く握りしめた。
城西からはベンチの背もたれで死角になっていて見え無いとはいえ、三雲は相当動揺している。
それを見ながらくくっと喉を鳴らした持田は何やら楽しそうである。
そんなのが、ちょっとばかり悔しくなり三雲も硬直し握り返すなんて恐れ多い真似はと思っていたが、思い切って握り返してみる。

「さて、行くか」

「……ッ」

しかし、そんな三雲の思惑も、百年早ぇよと言わんばかりに持田がパッと手を離す。

感情を隠しきれず、明ら様に悔しそうな顔をした三雲に持田はもう一度笑った。






おわり
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