本7 その他CP
□climax moments
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タンザキ+ガミホタ
代表に選ばれるかの発表が後何日も無かった。なかなか“二人きり“では会う機会も無かったから誰も居無いロッカー室とかで久しぶりに二人きりだと、それまで落ち着いていた筈の感情はジワリと静かに、しかし一気に熱を持ちW恋人Wであるのを複雑な気持ちで痛感する。手を出したくなる、なんて大人だからだろうか、若しくはそれ以前に稚拙なだけだろうか、葛藤しつつ何の気無しに着替えてる赤崎を横目で、そう見える様装っているだけかも知れ無いとも思える。少し緊張というか、空気が張ってる感じがその横顔から伺える。精神的に疲れて無いかも気にかかり、その状態で何処までなら許容範囲内かと丹波は半ば駆け引き的にスルリと赤崎の腰に手をまわす。
赤崎「…っ、…何スかっ」
驚いて声を上げる赤崎に丹波はぐいと顔を近付ける。手が払い除けられ無い事を幸いに先程より僅かに力を込める。
赤崎を見れば、釣り上がる目尻程怒っている様では無さそうだ。
丹波「キスして良い?」
赤崎「はぁ?」
聞いておきながら返答も待たず、丹波は更に距離を縮める。
赤崎「ま、待…ッ、誰か来たらどうすんスかっ!嫌ですよ!」
丹波「軽くだから」
丹波「そういう事じゃ無ェんスよっ………んっ」
迫ってくる丹波を押し退け様と赤崎が丹波の肩を押したが先に口付けられてしまい反論は塞がれる。強引に迫って来た割に重なる唇は柔らかくて赤崎はぞくと身体を震わせた。
赤崎「………ぅ…んっ」
バタン!
「あ」
赤崎「………ッ‼」
浅い口付けにも関わらず、何度か重ねては離れてと繰り返されるとくらりと意識を飛ばしそうになる。
不覚にも足元にフワリと浮く様な感覚に陥る頃、ロッカー室のドアが開き…まさかさっきそう口走ったせいだろうか、何でこのタイミングで⁈と思考をめぐらせつつ、この事態に流石に冷静では居られ無い。
石神「丹波〜、場所考えろよー」
堀田「…………」
丹波「あー…、悪い」
からかう様な石神の声が聞こえたが赤崎は硬直し言葉も発せられ無い。堀田とははた、と目線が合ってしまったが互いに何とも言えずにいると丹波が苦笑しながら答える。
丹波からすれば目撃者が石神、堀田であった事には多少なりとも安堵する。
しかし、赤崎はそうもいかなった様で丹波を押し退けると慌ててロッカー室を後にした。
丹波「うー」
石神「どうした?」
次の日の練習中、真顔で唸る丹波にヒョイと横から石神が尋ねた。
丹波「…赤崎が口聞いてくれ無い」
石神「……気の毒に」
丹波「マジでそー思ってる?」
石神「はは、…でも何で?」
堀田「…昨日、ガミさんと俺に見られちゃったからじゃ無いですか?」
堀田も二人の会話に加わる。
堀田「今、代表に選ばれるかどうかの最中だから色々神経質になってるんですよ」
堀田がそう話す。と、言っても当人に聞いた訳では無いので憶測だが…。そんな時赤崎が横を通りかかる。赤崎は、かっと顔を赤くして足早に通り過ぎる。
石神「これは長くなるかなー」
丹波「あんまり俺をビビらすなよ」
堀田「………」
口調からはわからなかったが、丹波が落ち込んでいる様なのを傍目で堀田は察した。そうは見え無いが石神も多分其れに気付いてる。かといってどうしてあげられる訳でも無い当人同士の微妙な問題で…他愛無いと云えばそうなのだが、昨日のタイミングの悪さに小さく溜息を吐いた。
丹波「ちょっとはピリピリしてんのが和らげばなーなんて思ったけど」
石神「若いから多感なんだよ」
丹波「切ない台詞だなー」
まぁ、後でちゃんと謝るわ、と溜息もつき頑張れと石神に背を叩かれた丹波は練習へ集中する事にした。
そして練習後、偶然にも昨日と同じ様にロッカー室で丹波は赤崎と二人きりになる。心無しが赤崎が警戒してる感が悲しいが自業自得なので仕方無い。
丹波「あ、赤崎ー…」
呼べば表情は渋いものの視線は合わせて貰えた。昨日は悪かった、と潔く謝る。赤崎はまだ黙ったまま返事は無い。
丹波「張り詰めてる感じしたからさ、気が紛れればと思ったんだけど…」
でも、半分は自己満足だし…役に立た無い先輩で本当ごめんな、と苦笑いで頭を掻いた。赤崎が一度視線を逸らして沈黙は続く。丹波もそれから何も言えずにいたが、そんな間に珍しく戸惑いを見せつつ赤崎が静かに口を開いた。
赤崎「………俺ー…」
バタン!
赤崎「………ッ‼」
石神「あれ?」
丹波「またこのタイミング?」
赤崎が漸く口を開こうとした時、またまた石神によってロッカー室のドアが開けられる。昨日の今日でもあるので石神と一緒に居た堀田は、しまった、と複雑な顔をした。呑気そうな石神の声色に申し訳無さも加算する。
丹波と赤崎の距離は近いものの昨日程では無い。ただ、どう見ても赤崎が動揺するので丹波も気を使う。そのせいか慌てて離れる赤崎を止めるのが遅れた。
堀田「赤崎」
昨日同様、逃げ出しそうな赤崎を静止させる様に堀田が赤崎を呼び止める。落ち着いた低い声色で決して強く呼び止められた訳では無いが、ぐ、と動きを止め押し黙った赤崎は昨日の事を思い出し顔が赤い。堀田を見るその表情は困惑していた。
そんな赤崎を見据えた堀田は静かに視線を移動させ赤崎から石神へと向き直る。
何なのかと、赤崎が疑問に思っていると真ん前で堀田から石神に口付けされた。
赤崎「……へ?」
堀田「これで見られたのはおあいこだからな」
そう言い自分のロッカーから携帯を取り出す。どうやら忘れたので取りに来たのだと赤崎は茫然としながら見送る。
目の前で堀田に石神へそんな事をされて赤崎は言葉も発せずただ素直にコクリと頷いた。
それを確認し、堀田は微笑むとロッカー室を後にした。
石神「惚れ直すなー」
石神がそんな一言を呟きまだ感触の残る自分の唇に触れにんまり笑うと堀田を追いかけロッカー室を出て行った。
軽〜い口調でごゆっくり〜なんて気の抜ける台詞を吐きながら、石神がヒラヒラと口調に負け無い軽さで手を振るから残された丹波、赤崎は堀田からの流れでぽかんとしたままだった。
丹波「あ、…えーっと」
閉まるドアの音と一緒に我に返った丹波が口を開く。
赤崎「何か…堀田さんが凄いスね」
丹波「まぁ、石神の相手出来るくらいだからなー」
驚いたものの、堀田のその思いきれる態度は凄いと赤崎は自己反省を密やかに、頭を掻いた。
赤崎「…その、発表前でピリピリしてたのは確かなんスけど…」
丹波「…そうだよな、…うん、こんな時に悪かった」
赤崎「いや…あ、でも、その……キスされたら…一瞬…た、丹さんと少しだけど…離れんの嫌だな、なんて考えちゃって…」
丹波「……え」
赤崎「一瞬スけどね!…ただ、こんなんじゃ駄目だって…思って……っ」
そう言い終えるが早いか丹波がぎゅと赤崎を抱きしめる。
丹波「可愛いーな、赤崎ぃ」
赤崎「一瞬!…スよ」
丹波「そんでも凄ぇ嬉しい」
赤崎「………」
丹波「赤崎が代表に選ばれるの、俺も楽しみなんだ」
赤崎「そりゃ…どーも。……え、と…色々、すみません」
我ながらしおらしい台詞が出たもんだと、神経質になり過ぎてる事を赤崎は反省した。
丹波の腕の中は何だか心地良くて久しぶりに気分が軽くなった。
…そんな事はまず言えそうに無いけど。
おまけ
「あれ?」
ロッカー室から少し離れた壁際で口に手をあて真っ赤な堀田がいた。
ロッカー室から離れた、とう所が堀田の気遣いなんだろうと石神は再度にんまり笑い堀田へと近付く。
「恥ずい…」
ぽつりと自分のさっきの行動に呟く堀田。
「可愛いーな」
石神は楽しそうに笑っている。惚れ直したよ♪と付け加えると堀田が更に顔を赤くして唸るので緩む顔は抑えられそうに無かった。
おわり