本7 その他CP

□いただきもの2
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Fahrenheit』の華倫様より頂いたタンザキです。大して役にも立ててい無いのに頂いてしまい大変申し訳無いですがそれはそれは有難い一品ですo(^▽^)o



「なぁ、花火大会、行かねーの?」

丹波はフローリングに座り、ローテーブルに肘をつき頬杖をついた儘、部屋の主に尋ねた。
「んな、花火だからってはしゃぐような餓鬼じゃねぇよ」

返ってきた言葉は相変わらず小生意気な言い草で、赤崎らしいと云えば赤崎らし過ぎて、ならば何で自分を此処へ呼び付けたのかと気紛れな猫の目のような赤崎の気分に、内心嘆息する。
 そして、互いにそんな噛み合わぬ気分であるからか如何かは判然とはせぬが、会話もそれ以上、何時ものようには続かず、どうせ花火の見える赤崎のワンルームマンションまで来たのだから花火は見て帰ろうと半ば意地のように決め、TVのリモコンを取り上げて電源を入れる。番組表のボタンを押して花火開始の時間迄の暇潰しにと画面いっぱいに表示された各局の一覧をスクロールさせつつ眺めた處で、ある局のU-22代表発表の時間枠がある事に不図、気付いた。赤崎が花火を見に出掛ける事もせず部屋に籠もり、しかし、それでもたった一人で居る事には耐えられずに自分を呼び出したのかと思惑を忖度すれば、何ともいじらしい態度かと丹波は微苦笑した。

ならば、TVを見る等と無頓着な態度で居る事はするまいと電源を落とすと、丹波は室内をそわそわと時刻が近付くにつれて動き回る赤崎を静かに眺めていた。刻々と進む壁時計の秒針に比例するように落ち着きを無くす赤崎は、自分を眺めている丹波の静かな視線に俄かに気付くと怫然と眉を顰め、サッシ戸の鍵を開錠するとその外のベランダへと無言の儘、つかつかと出て行ってしまった。
「………」
 子供のようなその行動に対して、何故か呆れるような、白けたような気分になる訳でも無い自分の心情の有り様に、丹波は己の寛容さは己で思っていたよりも深いようだと感心する。知りたいのだろうけれど、知るのが恐いだなんて、繊細なやつだなと自然に微笑が零れる。そうであるならば、赤崎の気が済む迄とことん付き合ってやろうと、勝手知ったる他人の冷蔵庫とばかりに、数缶入っていたビールの内、二本を冷蔵室から取り出すと低反発のシートクッションの上に腰を据えた。

ガラスの向こう側では赤崎が一人で百面相をしている。得意そうな顏付きの時には代表に選ばれたパターンで想像しているのであろうし、顔を顰めて唇を尖らせている時には選ばれなかった時の事を妄想しているのだろうと揣度出来た。自分にはついぞ縁の無かったその煩悶を、ガラス一枚を隔て、向こう側で赤崎は味わっている。何と馥郁として眩い姿なのだろうと缶のふちを齧りながら見遣り、それでも奇妙に、己が経験出来なかった栄誉あるその苦悩と喜悦を存分に得ている赤崎を嫉ましい等とは微塵も思わぬ心の平穏さに、我が事ながら驚いている。噫乎、一体、己はどうなってしまったのだろうと、これ迄思いも拠らぬ心境に達しているこの時を、クーラーの効いた室内で缶ビールを呷る丹波はホップの
苦さと共に舌の上で転がし、堪能する。

そうしている間に、ジーンズの後ろポケットに突っ込んでいたスマートフォンを赤崎は取り出していた。神妙な、今この時選ばれないとするならば、自分の人生は終ってしまうのだと云わんばかりの悲愴な顏付きで、如何やらだれかと通話をしていると見えた。多分に、震えそうになる己が声を内心、必死で叱咤して何時もの横柄な口調を無理に作っているのだろうと丹波には分かっている。
 短い通話が終わり、虚脱したのか、赤崎はベランダの手摺に懐くように撓垂れかかる。緊張で蒼白かった頬が紅潮し、赤崎の希みは達せられたのだと明らかである。
「……さてと」
 丹波は空になった缶をその儘ローテーブルの天板に置くと、徐ろに立ち上がり、多分に追い返されないだろうとベランダへ通じるサッシ戸へと爪先を向けた。それから、やや放心気味の赤崎の意識を此方へ戻そうと、軽くガラスをノックする。
「!」
 今、初めてそこに丹波が居ると知ったかのような、新鮮な驚きに彩られた赤崎の顔が振り返る。
「赤崎」
 非道く柔らかな声音が丹波の口から出る。
 まろぶように赤崎がサッシ戸へ駆け寄り、急くようにもどかしそうに開け、赤崎は丹波へと両腕を伸ばした。


「タンさん!」
 遠慮も無く赤崎の全身が飛び込んでくるのを、丹波も両腕を伸ばして引き寄せる。熱帯夜の外気に晒されていた所為だけではない、精神の高揚から発する十歳も若い身躰の火傷しそうな熱を、丹波は糸惜しく抱き締めた。



*****

ありがとうございました!
華倫様の御作品は文章力が素晴らし過ぎです!\(//∇//)\
大人び様としてる赤崎を一見子供みたいにはしゃいでる丹波が実は大人な態度で幅広く深く受け止めてるのが良いですよねーvvv
メールで頂いた返答と重複し、しつこいですが、この後花火見ながらシますよね‼ベランダでΣ‼(←書きたいのか⁈)

…なんて↑しょうも無い事を書き走ってるあたり迷惑甚だしさが溢れんばかりですが、何気にこれからもお世話になると思いますので宜しくお願いします!

ここまで読んで下さってありがとうございます!

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