本6 ジノバキ

□いただきもの3
1ページ/1ページ


Fahrenheit』の華倫様から頂きました♪拙宅本「honeyed」の続き(^ ^)

* * * * *

 今日の練習は、午後からであった。
 半日分であっても休養の時間は皆に十分な活力を取り戻させてくれていたが、ジーノは「微妙に体調不良」と嘯き、練習の輪に入ったり休憩の為に退いてみたりとピッチの中と外との出入りを繰り返している―如何せん、相対的に休憩している時間の方が多いが。
 自分の隣に立つジーノが幾度目かの欠伸を御零しになられるのを聞き、達海は揶揄を口を出した。
「オイオイ、王子サマよぅ、体調管理はしっかりしろよ。Noblesse obligeだろー?」
「…そんな、意欲的関心に満ち満ちているのは英吉利貴族だけだよ」
 放膽な言葉を切り、ジーノはもうひとつ、小さく欠伸を零す。
「……伊太利亜貴族は、英吉利風にいうなら“柔弱”だからね」
「なんだそりゃ」
 ジーノの中にそんな判断基準は無いのだと婉曲に云われ、苦虫を噛み潰したような顔で達海は呆れた。

*

 虚幌、では無いと椿は息を乱しながら見遣る。カーテンを透かして零れ始めているのは、絶対に朝日である。いつもとは違う時間に眠りこけ、いつもとは違う時間に目覚め、いつもの愛撫が欲しくてひとり、身を揉んだ。それを見つけられ、今に到る。
 牀蓐に伏せた身の、腰だけを高く上げた体勢というものはとても恥ずかしいと椿は汗を滲ませる。双丘をジーノの両手の親指で割り開かれ、濡れて綻んだ秘莟を晒して、熱く疼く中に来て欲しいと強請る様子が彼の視線の下に全て明らかにしてしまっている。だが、正面から抱き合い、ジーノをもっと感じたいと無理に腰を浮かせてしまったりせずにいられるという点においては、長い時間をかけて交わる躰に掛かる負担は少ないのかと、羞恥と天秤に掛けて思う。
「…王子…っ、…ン、ン…ッ…」
 すり、とひくつく其処をジーノの先走りに濡れた切先で優しくなぞられて椿は唇を噛んだ。ぬるりと滑るもどかしい感覚に耐えられず、早くジーノを含みたくて膝が震える。
「…ふふ…、可愛いね」
「! や…、おうじ…っ…」
 ジーノの擽るような笑みに、椿は頬を紅潮させる。お互い、一度遂情しているのだが、ジーノの余裕ある態度に比べ、自分のなんと余裕の無いことかと湧きいずる熱に幾度も身震いを繰り返し、全く思う儘にならない我が身に愧羞し、きゅ、とシーツを握り締める。
「焦らされた方が、感じてるんじゃない? バッキー」
「…ち、ちが…ッ…」
 咄嗟に否定を口にしたが、直ぐに己は嘘を云ったと椿は強く瞼をつむる。つむった瞼の裏側にちかちかと火花が散る。ジーノに先をほんの少しだけ挿し込まれた内側の襞が、もっと奥へ慾しいと急かし、ざわめいている。
「…本当?」
「! あっ、あ…ッ」
 試すように退いた自分を引き止めるようと吸い付いてきた椿の其処に、ジーノは唇を歪めた。痙攣を起こしそうな程に細かに震えて、椿が懸命にねだっている。

*

 曠然と微笑し、ジーノは穏当な声音を出す。
「バッキーが夜啼きしてたから、慰めただけだよ」
 達海の剣呑な目付きがジーノの白皙を刺してきた。
「それだけ」
 その刺さる鋭さを物ともせず、猶もジーノは微笑してみせる。達海の視線の理由、それを容易に察する事が出来る故に、その形を崩さない。
 悪びれる様子の全く無いジーノの恒居を崩すのは容易ではないと素早く判断したのか、軽く舌打すると達海は視線を練習する選手達へと向けた。
「………」
 青い芝の走り回る椿の動作に、どこか体を庇うような不自然な仕草は見られない。従って、ジーノが云う「慰めただけ」に間違いはないのだろうと揣知される。
 それにしたって、「それだけ」なのだったら、何故ジーノはこうも億劫そうなのか、釈然としない。しかも、それを今ここで口に出して指摘してよいものか悪いものか、立場の上下関係のharassmentの観点からは如何なんだ云々の、所謂「年相応の分別」がついてしまうからには、達海はいよいよ怫然とした気分になる。ジーノの扱いは面倒くさい。

*

 深い嘆息をジーノは零す。
「熱くて、熔けそう…」
 根本まで椿の後孔に入りきって、椿の中の熱を味わうように動きを止める。めずらしく「欲しい」と強請ってきただけに椿の昂奮は中々冷め遣らぬようである。褥に這う背を見下ろせば、玉のように浮いた汗が脊椎の稜線を伝って次々と滑り落ち、肩峰から肩甲骨まで忍従するような力が籠もり、肌が張り詰めている。
「…ン、…お、王、子…っ…」
 ジーノの形に拡張された中に直に伝わる脈打つ血潮の熱さを椿も思い知る。ジーノで満たされ、下腹部が蕩けそうだと、溜息をつく。
 上体を屈め、ジーノはうつ伏せる椿の項に軽く接吻した。
「……少し、このまま」
 互いの敏感な粘膜を密着させている、その陶酔感を分かち合おうと慇懃にジーノは囁く。
 それに頷きながら、ジーノの唇の柔らかさに背筋の緊張を僅かに弛め、椿は籠もる熱を少しでも逃がそうと胸郭を大きく波打たせ息をつく。
「……ふ…、…はぁ……」
 然し、佚慾が椿の思考から四肢の手綱を奪い去ってしまったようで、宥めるように項に度々落とされるジーノの口付けにも大仰に躰は反応を示し、慄き震える。

*

 いつも達海の意向を不器用な仕草で窺い、己が内心の意見との大幅な隔たりに素っ頓狂な声を上げている松原は、今は選手達の傍で声を張り上げている。あれでなかなかに十分な緩衝の役割を果たしている貴重なスタッフだと松原の存在感を達海はジーノと二人並んでいるという状況の中で分析する。
 そんな感慨を覚えている達海の内心など、ジーノには一向関心の無い事で、己が思う處を云いたいように放言してみせる―自分が相手だから、この態度なのかもしれないとも達海は懐疑している―。
「むこうの方で」
 向こう―、欧州の事だろうと達海は脳内で発言を補った。
「リラックスしたい時には如何する? って話題があって」
「ふん?」
 己のperformanceの維持に確たる指針を持っているジーノが何を云い出すのか、多少の興味と冷静な関心で以って、達海は次の語を待つ。
「一番は、…beneとセックスする事だってなってるよ」

*

 粘り気のある先走りの露ごと、慾情して膨らんだ先端をジーノの指で包まれ、抓むように、少し痛い位に擦られて椿は嬌声を上げる。
「ひゃ…ァ…ッ、だ、だ…めぇ…ッ…」
 じん、と痺れる、痛みに近い快感に蜜口から新たに露が分泌される。その滴は直ぐさまジーノの指先に絡め取られて赤く色付くそこに塗り込められ、また新たな涙粒が滲む。ジーノの指先の動きひとつで己の身は傀儡のように快楽の糸に括られたように操られているとすら思われる。事実、神経の上を痙攣が引っ切り無しに走り、姿勢を維持していられず、幾度もlinenに落ちそうになる。
 腰を支えるジーノの手に椿は手を伸ばして重ねる。衝かれる律動でぶれてうまく重ならず、もどかしい。
「ダメじゃない癖に?」
 耳朶をねぶるように唇を寄せられて囁かれる。吐息を含んだその聶許の耳朶に触れる柔らかな刺戟に、椿は思わず身の裡を搾る。
「! あ、ァン…ッ」
 其処が狭まった分、ジーノと強く擦れ合い、熱い刺戟に大きく肢体を震わせる。その震えを貫くように、ジーノの肉茎は律動を刻み続ける。己の体液で濡れた前と、ジーノの体液を含まされて濡らされた後ろと、同時に、しかも丹念にいつくしまれて、椿の唇は嬌声を止められない。尚も、律動とは異なる調子で揉まれるジーノの手の中の蜜口からはぬめりが止め処無く流れ出し、肉楔で穿たれる一番鋭敏な其処は痺れきって、椿の体は椿のものである筈なのに椿の意思の外で瘧に罹ったように揺盪とわななく。長い階を一気に駆け上る時のような、忙しない呼吸が咽喉を震わせ、spasmのフロアに追われた身は軈而、際まで追い詰められ、orgasmに背を突かれて手摺りを乗り越え、放物線を描いて落下しようとしている。
「アッ、お…ぅじ…っ、あ…ぁン…、…イ、…く…っ…!」
 意識―否、正気を全て持っていかれる墜落を留めようと強くシーツを握り締めてジーノの律動を受け止め、躰の内側の急所を烈しく突き上げられる快楽に背を撓らせる。喘鳴を繰り返し、己ひとりが墜落してしまう恐ろしさを訴え、必死に抗おうとジーノを呼ぶ。
「ッ、…ん、……イイ、よ、バッキー、…イって」
 背に覆い被さってきたジーノの汗に濡れた肉叢と乱れた息遣いに煽られ、遂に椿は腹の内側を行き来するそれを體の慾の欲する儘に締め付ける。
「…あッ、イ、く…ッ、イっちゃ…、……アァッ!」

*

「…はぁ? ……かえって体酷使して、疲れね?」
 厭きれた声で達海は反論を口にする。
 片眉を動かし、ジーノは達海の反論に温厚に説いてみせる。
「……緊張と痙攣と弛緩、Orgasmoの後には体の内側、深層からの脱力が可能だという事だそうだよ」
 流眄に達海を見遣ると、大した興味もなさそうな仕草で額髪を指先で払いながら、芝生の上で走り回る人々の動きを辿る。
「まぁ、でも、人は快楽に没頭しちゃうと怪我とか痛みとかに頓着しなくなっちゃうものだからね。真っ最中では特に。その辺りは注意しなきゃいけないとは思うよ」
 目の前にばかり気をとられると全体が見渡せなくなると、やや離れた位置からメンバーの動きを見てジーノは昨年との差異の出てきた点を頭の中に書き留める。
「……ボク自身は、全くの夢中にならないように抑制してたからさ。多めにみてよ」
「…テメ…吉田…」
 つまりは、キモチイイコトに夢中になっている椿を、一つも疵瑕を拵えぬように配意して、尚且つジーノは己自身の体にも瑕釁がつかぬように自制してやっていたのだから気疲れしている、ということか、でもそれなりにはイイ思いはしたんだろうがと達海は額に手の甲をあて、頭痛を堪えるような仕草をする。
 その上、先刻、自分は酷使して疲れるような行為をした事があると自らバラさなかったか。このキレイな顔は矢張り胡散臭い、達海は思わぬ舌禍に忌々しそうに舌打ちした。

*


*****

ありがとうございました‼
達海とジーノの会話が個人的に大好きですvキャッチボールで無いのがツボなんです(笑)。達海でこの感じなので椿は騙されっぱなしですよ。それで良いです\(//∇//)\。椿も兎に角可愛い過ぎですvボールを蹴らせてあげたい王子様からの配慮…。優しいな、王子v騙されてる…(笑)。
拙宅の駄文から神懸りに素敵作品頂き本当ーにありがとうございます‼
お役に立てるか迷宮入りばりに謎ですがまた何時でも是非連絡下さいね(^ ^)

ここまで読んで下さってありがとうございます!



※ウッカリ、本文が変な事になってたので手直ししたらあとがきを消してしまったので昨日までと内容が違います…。粗方一緒です。
昨日までちゃんと本文掲載出来てたでしょうか?…スミマセンでした(>人<;)もう大丈夫だと思います。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ