本5 その他CP

□full of mistake all over
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タンザキ





「…ぉ…っと」



 練習中、きゅうに悪寒みたいなものが走りパチリと赤崎と目が合う。



 いや、合うていうなんて生易しいものでは無い。…確実に睨まれた。



 何でだろう…。最近、赤崎を怒らすような事はして無い筈だし。でも、赤崎のその視線は背筋がヒヤリとする程で、マジで何したんだ?と丹波は自分を振り返る。



 最近割と当たりが良いというか、ちょっと素直というか甘えてくれたりとかあったりして可愛いと言うか………(脱線)いや、前から可愛いけど………(大幅脱線)、…とにかく所謂デレ期の到来かと内心ウカれた矢先の出来事。




「やるな、赤崎…」




「何言ってんの、丹波?」




「う、わッ!!」




「わッ!?」



 『ツン』(というレベルじゃ無い気がするが)を忘れ無い後輩へ独り言が口をついて出た頃、ポンと背中を叩かれ丹波はビクッとなり声を上げる。叩いた石神もつられて声を上げた。




「何だよ、もー」




「あはは、…悪ぃ」




「どうしたんスか?ぼーっとして」



 石神と横に居た堀田にも首を傾げられる。




「や、赤崎がさー…」



 睨まれたのを話すと案の定、何かしたんじゃ無いの?と追い撃ちがかかる。



 しかし、丹波には本当に覚えが無い。だからこそ怖い。




「浮気でもした?」




「…して無ぇよ」




「何で一瞬堀田を見たのかな?」




「は?え?深い意味は無ぇよっ」



 ちょっと視線を逸らして堀田がたまたま視界に入っただけだが、石神から殺気を感じ堀田の事になると怖いなー、と丹波は石神に苦笑する。まぁ…それはさておき、赤崎だ(最優先)。



「そんな睨んでるかー?」



 赤崎は既に練習にもどっている為、石神達が遠巻きから見てもそんな様子は無かった。




「あ、コラ。あんまり見るな、減る」




「何が?」




「色々」




 赤崎の事になるとケチだなー、と笑う石神。堀田は会話に置いていかれている。



 結局、聞いてみたら?と他人事宜しくお気楽な石神の返答に、まぁそうかもなーと丹波も思い練習に戻った。










「……………」



 練習後、赤崎を家へ誘うと意外にあっさり「良いですよ」と言われた。怒っている筈なのだがあまりそうは見え無い。家へ着いてソファーへ赤崎を座らせてキッチンでコーヒーを煎れて戻って来た丹波は、練習中のあの冷眼から察するに隣へ座って良いか悩んだ。



 後輩相手に情け無いな、と眉を下げてテーブルへコーヒーを置く。赤崎をチラリと見るが、どうも普段と変わらなく見えた。ともかく怒っていようがいまいが隣が良いと思い丹波はストンと赤崎の横へ座る。




「…あー…のさ、…何か怒ってる?」




「…べ、別に」



 気になる事はさっさと聞こう。丹波が尋ねると、何か怒らすような事したんですか?と逆に問われ丹波は顔を顰めた。




「…無い、と思う…けど、じゃあ練習中何で睨んでたんだよ?」




「…睨んでませんよ」




「何かあるなら言えって」



 普段なら先輩へだろうと言いたい事を言う癖にらしく無ぇよ、と丹波が続けると赤崎の性格上口を開くと思いきや、赤崎は押し黙ってしまった。




 何か言いたそうにはしてるが赤崎らしく無くハッキリしない。どうしたものか、一先ずコーヒーを飲んで考えている丹波は軽く吹っ掛けて結果、怒り半分でも口を開かせるか、自分のキャパを越えそうだがジーノばりに甘ったるい台詞で誘導して話して貰うか…後者は無謀だなーとか色々思案していると、暫く黙っていた赤崎が頼り無く丹波の服を引っ張る。




「…赤崎?」




「…………ぃ」





 コツンと赤崎の頭が肩にあたる。(それだけで、トスッと射抜かれたが←笑)




「…この頃…何も…してくれない…」




「………………へ?」



 俯いたままポツリと呟いた赤崎の予想外の台詞に丹波は目を丸くした。




 練習中のあの表情じゃ、全く今の赤崎の言葉に結び付くとは思え無いが…。



 …怒ってたんじゃ無いんだな。




 えーっと、つまり…







「寂しかったって事?」




 赤崎の顔を見ようと身体を動かすが赤崎が俯いたまま離れ無い。




「赤崎ー?」




「………ッ…」




「顔見たいんだけど?」




「…恥ずい…からヤダ」



 何とか両手首を掴んだものの赤崎は顔を上げない。耳が真っ赤なのは見えるから想像はつくけど。




「顔上げてよ」




「……ヤダ」




 髪に顔を寄せるとピクリと赤崎の肩が揺れた。



 確かにここの所お互いの予定が合わなかったから、思えばこうして二人きりなのも久しぶりだなと丹波は口元を緩めた。




「何笑ってんスか」




「見て無いのにわかんの?」




「………何と無く」




「…ほら赤崎、早く顔上げ無ぇと勿体無ぇよ」




「………何が?……っん」



 丹波の台詞に意味がわからないと漸く顔を上げた赤崎に甘く噛みつくように丹波が唇を重ねる。




「……ん、…ぅ…」



 浅い口付けを何度か交わして、それでも名残惜しさを感じつつ唇を離す。




「な?」




「…何が?」



 相槌を求められ、だから意味がわからないってと赤崎が口には出さないが視線で尋ねる。




「俯いてる間にもっとたくさん出来たじゃん♪」







「……馬…〜〜ッ………」



 それはそれは嬉しそうな先輩の表情に後輩はもう黙るしか無かった。






「ー…続きは?」



 にっ、と口角を上げる丹波に悔しいから否定の言葉が過ぎる。




 過ぎったけど…。








 「する」と赤崎が小さく一言。






 とりあえず、凍りつくかと思うくらい睨むのは止めような、と寂しい時の対処法について丹波が赤崎を諌めるのはもう少し先である。














おまけ



「砂糖」




「…は?」




「ハチミツ、メープルシロップ、生クリーム、ジャム、チョコレート、コンデンスミルク…あ、黒蜜?…スクラロース、アスパルテーム、ネオテーム…」





「何言ってんスか?急に」




「いやー”ジーノばりに甘い”?にチャレンジしてみようかと思って」




「…色々(致命的に方向性を)間違えてますよ、それに最後の方甘味料じゃないっスか(つか、えらい詳しいな)」




「まぁ、キャラじゃ無いしー」




「無謀っスね」




「んー、でも言われたら嬉しい?」




「……………別に…」









 アンタは横で笑ってくれてれば良い…。







「…ってΣ!…ッ…言えるか!!」




「な、酷ぇッ!俺だって頑張れば言えるって!」




「え?あ、違っ…」




「よーし!考えるから待ってろ赤崎!」




「だ、だから違うって!」















 さて、丹波は甘い台詞が出たのでしょうか(笑)。


おわり
 
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