本5 その他CP

□maneuver
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ゴトタツ





(ここが後藤のウチかぁ…)



 初めて入る部屋に内心ちょっとだけワクワクさせる達海はぼんやりその部屋を見渡した。



 ”後藤の部屋”なら昔にも何度か来たことはあるが、それも今のとは別の場所だったしかなり前の事だ。



 日本に戻って来てから初めて入る今の後藤の部屋に何処か擽ったいような気持ちになる。半ば無理矢理連れて来られた後藤の家だったが気分は悪く無い。




「で、何作ってくれんの?」




「大したものは出来無いぞ?」



 クラブハウスに住んでいる達海はコンビニ等で軽く食事を済ませる事が殆どで、試合前なんか部屋に篭りきりになり食事等忘れてしまう程だ。食事に気を使うべき現役時代でもあまり今と変わらなかったように思う。まぁ、地元や地域に愛されてると言っても良い達海はそんな後藤の心配は杞憂な程にあれこれご近所から食べさせて貰っていたのかも知れ無いが…。



 それでも、こうして達海を連れてきて食事を作ろうという後藤は、やはり達海の世話をやくのが趣味なのかもな、と自分に苦笑する。




「……ってそのまま作んの?」




「え?…−ああ。そうだけど…何か変か?」




「……ふーん」




「?」



 クールビズだけにそこまでキチンと着ている訳では無いが、着替えもせずそのままの格好でキッチンへ立つ後藤にまだ部屋のドアのあたりに居た達海は暫く黙ってその姿を眺め、ニヒと口角を上げた。




「…っ…達海!?」



 キッチンにて簡単に食事の用意をしている後藤の背中へ、達海がぎゅうっと抱き着いてきた。達海の不意の行動は何年一緒にいても驚かされる。それでも大分慣れた方ではあるが…。




「絶っ対、ゴトーが悪いと思う」




「何の事だ?」



 後ろの達海を振り返りながら後藤は何の事だかわからず首を傾げた。ぎゅとまわされた達海の手にはじめは退かせるつもりで自分の手を重ねて再び後藤は苦笑し笑みが零れた。




「何笑ってんだよ」




「ん?…いやー俺もまだまだ若いなーと思ってさ」




「…ハァ?………っ…ん」



 クルリと達海へ向きを変えて、その唇を塞ぐ。



 微かに戸惑う達海の表情にまだ昔のようなあどけなさが見えて緩む口元は抑えられそうに無かった。




「…っ…ん、ん。…も、何なんだよ…」



 そんな後藤に怪訝そうな視線で達海が唇を離すと、まだ離す気は無いとばかりに後藤は達海の頬へ手を伸ばした。




「…本当、変わらず可愛いなと思って」




「…………ゴトーも変わん無ぇよな…」




「何が?」




「色々」



 悪戯っぽく笑う達海が触れそうな程顔を近づける。




「……直ぐ俺に煽られるトコとか」




「…うん」




「…俺の事、スゲー好きなトコとか」




「…そうだな」




「ツッコむトコだろ」



 後藤の返答に呆れた口調でそう言うと、後は再び唇を塞がれる。「まぁ、わかってて煽ってんだけど」と笑えば「知ってるよ」と返された。















おわり
 
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