本5 その他CP
□非日常の何気無い一日
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ガミホタメイン(+タンザキ、サカセラ)
「…何してんスか」
大した怪我では無いが一応消毒して来なさい、と達海に言われ医務室へと足を運んだ堀田はドアを開けるなり視界に入ったモノに一瞬時を止め、力無く口を開いた。
「え、だってセンセーさ今日は定例会で居ないんだってさ」
「そうなんですか?…ってそれを聞いてる訳じゃ無いんですけど…」
呑気そうに返って来た言葉に堀田は肩を竦めた。
返答した主にズレた回答だった自覚は無い。未だ医務室のドアの前に立つ堀田を軽〜く手招きして何やら楽しそうだ。
「ガミさん…」
もう一度、それは何ですか?と視線を送る。それで伝わるかどうかは堀田にはそのつもりは無いがチャレンジ精神を要する運次第と言って良い。
マイペースな石神はにっと笑う。
「似合う?」
「え、ま…まぁ」
堀田も自分が医務室へ来る少し前に石神が医務室へ向かったのを知っている。石神も堀田と同じく大した事は無いのだが擦りむいたので消毒に来ていた。
だから石神が居るだけなら、こんなどうしたもんか…と眉間に皴を寄せる事は無いし、定例会も毎月の事だから先生が居ないのも納得する。
堀田の返答をまぁ良しとした石神は漸く自分の近くまで来た堀田の足をマジマジと見つめる。
「うわ、痛そー」
「見た目程痛くは無いですよ」
「俺もさっきやっちゃったんだよな」
「…わ、ガミさんのも十分痛々しいですよ」
「つか、お揃いだなー♪」
「何言ってんスか」
怪我をしたのに一緒の場所に同じような傷という事に石神が嬉しそうに笑う。堀田もその顔が子供みたいだとほんわり和んでしまい慌ててハッとなる。流されてる場合では無い。
「…じゃ無くて!ガミさんっ、だから何なんですかその格好!?」
「うん、だから似合う?」
「ま、まぁ…」
「………………」
↑再度流され己を反省する堀田。
「…何で白衣なんか着てるんですか?しかも眼鏡までして」
「これってワンセットだろ?」
「そんなきまりは無いと思いますが…」
そうなの?と気の抜けた返答をする石神は話の切替も早く堀田の足へ手を伸ばす。
「ついでだから手当てしてやるよ♪」
「は?いや、自分でやりますよ………っ…痛ッ」
石神がひょいと消毒の染みたガーゼを堀田の足へ押し当てる。軽く当てるつもりだったが急に石神が手を伸ばすから少々強めに傷口へ当たってしまいさすがに結構傷口に痛みが走り、堀田がぎゅと痛そうな表情をした。
「…………」
「痛いっスよ、ガミさん」
「………………」
「…ガミさん?」
堀田が石神を諌めるが、石神は黙ったままじっと堀田を見つめている。今度は何だろう…とか思ってしまった堀田の目に、へらっと嬉しそうな石神の表情が入ってくる。
「何か今のカオ色っぽいなー♪」
「…………何言ってんスか…」
「ベッドで手当てシようか?」
「……遠慮します」
「優しくするから」
「何をですかっ」
「……………手当て?」
「…今の間と語尾の?マークが嫌です」
ぐいっと近づく石神を押し返すが、こんな時は石神の力はいつもより強い気がする。ドサリとベッドへ押し倒されて、さすがに不謹慎ではないかと堀田も睨むが当の石神は白衣に眼鏡で何とも怒る気も失せる。
それに…
何か、
格好良い…………。
「…堀田…顔、赤い」
「…え」
不謹慎は自分もか、と内心反省していた堀田。普段とは違う石神の姿に不覚にも頬が赤くなる。そんな堀田に心配そうに覗き込んでくる石神はこれも普段は見ない真面目な表情で、今の石神の格好に加算して堀田は益々頬を赤くした。
「…邪魔だった?」
ガラッと医務室のドアが開き、かけられた聞き慣れた声に堀田がハッとなる。
「あれ?どうした、丹波」
ベッドへ堀田を押し倒したままにも関わらず石神は動揺一つせずいつもの軽〜い口調で入って来た丹波に話しかける。
丹波も目の前の状況に動揺は無い。ただその丹波が引っ張るように連れて来た赤崎は見ちゃいけないもの見た…と複雑な顔をしていた。
「んー?俺はさ赤崎とぶつかっちゃってさー、見てよコレ」
「うわ、痛そー」
丹波の腕には派手な傷が出来ていた。
「俺に当たり負けしてるようじゃ駄目なんじゃ無いスかね」
赤崎がふいとそっぽを向きそんな厳しい台詞を吐くが、丹波はにんまり笑ったままだった。
「何笑ってんスか、気持ち悪い」
「そりゃ俺のユニ(フォーム)の裾掴んで”スミマセン”とか可愛く謝られちゃなー♪………ごあッΣ」
「あれは俺が悪かったなと思ったからで…っ、つか、余計な事は言わなくて良いんスよ!」
怪我をしたのにウカれ気味な丹波が上機嫌で話すと赤崎からすかさず鉄拳が飛んで来る。
「酷いっ、赤崎〜俺怪我人なのに」
「頭の方はソレ以上悪くなんないっスよ」
「赤崎可愛いーなー♪(棒読み)」
「便乗して来ないで下さいッ」
二人のやり取りを端から眺めていた石神にからかわれ赤崎が拗ねたような表情になる。それも可愛いなーと丹波は口元を緩めていたが、はたと石神の格好に気付く。
「ガミ…何その格好?」
「いや、センセーが定例会で居なくってさぁー」
「あぁ」
「「……………」」
今の石神の返答で何で納得出来たのか?堀田と赤崎が内心のツッコミをシンクロさせているのは、石神と丹波は知る由は無い。
「…って、何でアンタまで着てんスか!」
「えー、似合う?」
着てみたいと遊び心に石神から白衣と眼鏡を借りる。赤崎から呆れまじりにツッコまれるが、やはり何処か似てる石神と丹波。丹波のお気楽な台詞に何か数分前を思い出すな、と堀田はぼんやり思い苦笑した。
「…………ッ」
遊んでんなら練習戻りますよ、とドアに手をかけた赤崎の視界に眼鏡を装着してくいっと上げて見せる丹波が入ってくる。不覚にもドキッとしたのは絶対言ってやん無ぇ…と顔を背けた。
「まだ気にしてんの?大丈夫だって」
「〜〜〜〜〜ッッ」
まだ、ぶつかってしまった事を気にしてると丹波に勘違いされ宥めるように頭を撫でられる。「子供扱いすんな」と顔を赤くした赤崎はうっかり存在を忘れかけてた石神と堀田と目が合う。
「…邪魔かな?」
ニヤリと笑う石神にこれ以上ここに居たらフリーダムな先輩の玩具になると赤崎は再びドアに手をかけた。
「…わッ」
その時、赤崎がドアを開けるより早くドアが開いた。
「何やってんだ、お前等?」
開いたドアには世良を担いだ(と言っても肩を貸してるだけだが)堺が立っていた。
「そーゆー、堺こそ何してんの?」
石神が首を傾げ尋ねた。
「あぁ、蹴ったボールがコイツに顔面直撃したから一応連れて来たんだよ」
「鼻血?」
「鼻血っス」
鼻を押さえてるから鼻声で世良が返事をする。
そして、やっぱり気になる。
「何でそんな格好してんだ?お前…」
また馬鹿な事してんな、と言わんばかりに堺が眉間に皴を寄せ口を開く。
「あ、堺も着る?」
「…言って無ぇし、……っ馬鹿!…離せッ」
暴れる堺だが石神も丹波も慣れたもので堺に白衣と眼鏡を手際良く装着させる。こんな悪巫山戯の時、堀田には二人を止める術は無いので椿では無いがオロオロしてしまう。そして、堀田で止められ無いものは残り二人の後輩達も止められない。
「おし、出来た♪」
「おし、じゃ無ぇよ…」
バターーーン!!
「何?今の音」
「…世良さんが倒れましたよ」
鼻からの出血を悪化させて卒倒した世良を眼下に苦笑いな先輩達だった。
おわり