本5 その他CP

□作戦も計画的に
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ガミホタ





 お正月は堀田は2日に、石神は3日に元旦をずらして実家へ帰宅する事になった。じゃあ、年明けは一緒に過ごせるな〜、と嬉しそうな石神に例年通りなら元旦に帰宅するつもりだった堀田も嬉しくなった。



 簡単にお酒のつまみと、お正月だしスーパーなんかのできあいのお節料理の好きなものだけ買い物に行けば、伊達巻き、黒豆、栗金団等甘い物がカゴへ放り込まれる。




「ガミさん…これ…」



 甘い物ばっかですよ…、と堀田が苦笑すると「良いの、良いの♪」と軽〜く返される。石神は本当に楽しそうで、一緒に年明けを過ごせる事にそれだけ喜んで貰えるとか結構意外で、まぁ良いか、と思ってしまう堀田は自分も石神チョイスのお節料理と同じく”甘い”とつくづく感じて肩を竦めた。




「あの、本当に俺の家じゃ無くて良いんスか?」




「んー?大丈夫だって、昨日ちゃーんと片付けたから」




「あ、いや…そういう心配じゃ無いですけど」



 片付けが苦手な石神の家へ呼ばれる事は少ない。だいたいいつも堀田の家で過ごすから、珍しい石神の家への誘いに堀田も少し戸惑う。たまーに遊びに行く事になれば遊びに行くと言うより掃除をしに行く、と言っても過言では無い。それでも嫌じゃ無いと思える自分はある意味末期かも知れないと堀田も観念している。




「おかえりー」




「ガミさん…」



 石神の部屋に着くと一人暮らし故の性なのか真っ暗な部屋へカチカチと明かりをつけながらの台詞に堀田は苦笑する。そして堀田も靴を脱ぎ「お邪魔します」と一歩踏み入れた所で、じっと振り返る石神と目が合う。




 一瞬何かおかしな事を言ったかな、とキョトンとした堀田だったがさすがにまだまだ解明出来て無いとはいえ石神との付き合いも長いせいか直感的に「ああ」と気づく。




「ただいま」




「おかえり♪」



 満足そうな石神の表情に堀田も笑う。



 キッチンへ向かい堀田が冷蔵庫へ買った物をしまっているとコンロに火をつける石神が視界に入った。上には大きな鍋がのっている。




「作ったんスか?ガミさん」




「そ、食べたくなってさー。でも作ると量多くなるよな」



 一人分とか加減すんの出来無ぇし、と笑う。今日、自分を呼んだのもこういう理由かと納得し石神らしいなと堀田は思ってまた笑みが零れた。かなり自分もウカれてるみたいだと口元を押さえた堀田は冷蔵庫へ買い物したものを入れ終えると火の番をしてる石神の横へ様子を伺うように来た。




「ガミさんのおでんて何か美味しいんですよね」




「何か、って何だよ。まぁ、堺シェフ直伝だからなー」




「大根とか面取りしてあるのが意外です」




「堺シェフが厳しいからな。でも後は切るモン無いし、牛スジはつまみに良いし、簡単で良いよな♪…ほい」



 つい、と深めの取り皿におでんのだしが入ってる(小皿や小鉢は無い)。味見しろと目線で訴えてくる石神から取り皿を受け取ると堀田はそれを口にした。




「…美味いです」




 堀田が素直に感想を述べると、そっか良かった、と石神が軽く返す。味見自分でして無いんですか?と内心ツッコミを入れていると更にだしが取り皿に追加される。




「…ガミさん、もう良いですよ」




「じゃ、ラストな」



 何度か無くなっては注がれとやり取りし、取り皿だから味見と言うには量が多く、そしていつが終わりかわからなくなった堀田が石神を止める。ぐい、と出された最後の取り皿をぐっと一気に飲み干す堀田。




「…ッ…!!?」



 だしだとばかり思っていて確認もせず一気に飲み干したものはだしでは無かった。




「悪ぃ、大丈夫か?」



 ゴホゴホと喉を押さえて噎せる堀田に石神が背を摩る。




「…ッな…に、飲ませ…っ…」




「ウオッカ(アルコール度96←※適度なくらいまで薄めてあります)」




「…いや、まだ濃いですよ…」



 つか、96て。火が着くな、何てどうでも良い事を考えてしまう堀田。そんな事考えて無いで石神を一度バシッと叱った方が良いのでは…とも過ぎら無くも無いが一気に熱くなる身体に立ってるのもままならず壁へ背をつけると、そのままズルズルと座りこんでしまった。




「喉…熱い…す」




「悪ぃ…」




「何で…ッ」



 こんなもの飲ませたのか、尋ねかけてまた噎せる。




「堀田が酔うとこ…見た事無いからさー…」



 冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し堀田へと渡す。熱を冷ますようにゆっくりミネラルウォーターを口にする堀田だったが、さすがにアルコールに強いと言っても今回はそうもいかない。いつもはほとんど酔っ払うような素振りは無いが、酔いがまわってきたのかミネラルウォーターも上手く飲めず口の端から顎へ伝わせていた。




「…熱…」




「…堀田」



 噎せたせいか涙目で頬がほんのり赤い。手の甲で濡れた口端を拭う仕種が何か色っぽく見えて、石神が思わず堀田へと手を伸ばす。



 とろんと見上げながら吐く息にドキリとして一瞬飛ばしかけた理性。



 ただ、次の瞬間にはギッと睨まれさずがに怒るよな、と石神はたじろいだ。




「…あの…、堀田…」



 一回くらい殴られた方が良いかもな…、調子に乗ったのを反省する。




 堀田の手が動くのを見て石神は大人しく目を閉じた。





 トン、と。




 覚悟してた程の衝撃は無い。





 当たったのは肩へあてられた堀田の額。ぎゅと石神の服を掴む堀田の手はあまり力が入らないのか頼り無い。




「…今度はもう少し…薄くして下さい」




「…………………」




 怒る所だろ、堀田…。




 くたりと額だけで無く身体も預けて来た堀田に苦笑し、ベッドへと寝かしつける。




「…甘いって」



 ぽそ、と石神が呟くとほとんど意識を朦朧とさせながら堀田が口を開く。




「…次から直します」



 律儀に返事を返した堀田に、参ったな、と石神は頭を掻いた。















おわり
 
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