本5 その他CP
□俺でしょ
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タンザキ
赤崎は寒いのが苦手らしい。らしい…というのは本人に聞いた所で勝ち気な性格なせいか認め無いからである。だから苦手を隠そうと我慢してる様は意地っ張りと言えばそうなのだが、何だか可愛いく見える。
そんな丹波の思考など知る由は無い赤崎は寝言で「…寒い」とぽつりと言うと言葉通り寒さ故、ペッタリくっついて丹波の横で寝息を立てている。
(あー顔が緩む〜)
普段は照れて(?)こんな事してくれはしないから口元が戻らない。
抱きしめたいが起こしてしまいそうだし…。
丹波の手は空中でさ迷っていた。
どういう経緯で今のこの状況かというと、まずは練習後、赤崎を家へ呼んだとこから始まる。まぁ最近では誘うとちょっと不本意そうにしながらも承諾して来てくれる。そこが可愛い。
重症?
問題無し!
誰に言うでも無く開き直る丹波。
赤崎の車に乗せて貰い自宅へ帰宅した。朝は堺に乗せて来て貰ったから赤崎が居なかったら電車で帰る事になってた丹波は「他力本願スね」と赤崎にサクリと釘的なモノを刺される。当サイトの妄想で丹波の住んでるマンションは堺の住んでるマンションと近く、堺(車通勤)の通勤経路で丹波のマンションの前を通る為、練習に行く時拾って貰う事が良くある。呆れた口調の赤崎は誘われた…という事もあるが、自分が送らないとまた堺が迷惑するな、と予想した。そんなのどうでも良い、と少し前ならそう思ったが、多少なりとも自分に対する口実であるのに赤崎は複雑な心境だった。横をチラリと見れば先程刺した釘はどうなったのか…カラカラ明るく笑う丹波に赤崎は小さくため息をついた。
食事も済ませて丹波の家へ来た赤崎。「奢って下さいよ」とずけずけと言いつつも実の所本気では無い。にも関わらず「気にすんな♪可愛い後輩に奢ってやるのが生き甲斐なんだよー」と軽口を叩く丹波は赤崎に払わせる事は無い。
そんな丹波を見ると練習の時とか試合中とかフォロー上手というか、大らかというか、器はでかそうだなと感じる。…ただ大雑把なだけかも知れないが。
何はともあれ着いて腰を落ち着けると練習後だし暖房は暖かいし、お腹もいっぱいだし眠くなる。
マジで寝そうなんで帰ります、と丹波に言えば逆に危ないから仮眠取ってからにしろと返され、丹波のベッドへ横になる事にした赤崎。「少ししたら起こしてやるよ」と丹波に言われ、その言葉を頼りに半分は疑いつつも、強烈な眠気に勝てずものの数分の内に赤崎は眠りについてしまった。
寝る時は朝の為にタイマーをセットして暖房は消す。赤崎に怒られそうだが丹波に起こす気は無い。
布団の中は、毛布と羽毛の掛け布団で十分暖かい。…一人なら。
スヤスヤ眠る赤崎の横へこっそり丹波が潜り込む。理性もつか…?若干…いや大きな心配だがこんなチャンスもそう無いだろう、とか思うあたり………既に理性は脆かった。
シングルだしさすがに二人入ると少し背中がはみ出るから寒い、ぴくっと眉を顰める赤崎に起こしたかと丹波が息を潜める。
出来ればもう少しこのままが良い…。
そう思った矢先…もぞ、と身じろいだ赤崎がそのまま丹波へとペタリとくっつく。「寒い」と寝言。予想外の赤崎の行動に驚く丹波の事は、寝てるせいかまるで気にしない。暖かいのに満足したのかそのまま規則正しい寝息をたてていた。
腕の中で大人しく眠る赤崎も何だか暖かい。
「……………」
可愛い…。
緩む顔は抑えられ無い。
懐かれてるみたいじゃん♪
思って何か悲しくなる考えだったが、普段も照れてるだけで懐かれて無いわけじゃ無いと自己完結。無防備に眠る赤崎につい目を細めてしまうその反面、安心され過ぎてるのも気になる。別にそういう対象で見られて無いんじゃ無いだろうか、と。
ほんの一瞬前にウカれた気持ちはさておいて、丹波は顔を顰めた。
可愛い…けど、
何で無防備に寝てんだよ。
警戒しなくて良いのか?
…襲うぞ?
「………ん…」
そっと赤崎に唇を重ねる。柔らかくて温かい。一度声を漏らしたものの赤崎は起きはしない。もう一回だけ、なんて思いながら気付いたら何回口付けしたか丹波にもわからなくなっていた。
起きないで欲しいと思ったのも最初だけ。これだけ行動を起こしても目を開けない赤崎に段々悔しくなってくる。
もやもやする気持ちで赤崎を見れば再び赤崎が身じろぐ。
もぞもぞと腕の中。
「……ん、……丹…さ…ん…」
ぎゅう、と
赤崎が抱きしめる。
毛布を!
「…オイΣ」
そこは俺でしょ!とツッコミを入れる丹波だが赤崎は爆睡してしまっていて聞いちゃいない。
名前を呼んで貰えたのは嬉しいけど…。
幸せそうに寝てるのも可っ愛いーけど…。
「…ん?……んんっ」
…色々悔しくて、いっそもう起こしてしまえとばかりに丹波が口付けを繰り返せば、今度は赤崎も目を開ける。
「…な…に、してんスか…っ」
ぼやけた思考で怪訝そうに丹波を見上げる赤崎だったが視界に入れたのは拗ねた表情の先輩。
「…子供みたいですけど…」
「…赤崎」
「何スか?」
「毛布はキスしてくれないからな」
「は?」
「俺のが良いって」
「…はァ?」
寝ぼけてるのか?いや寝てたの俺だし…。
必死に意識を起こそうとする赤崎だが、そんな間も持たせて貰えず再び丹波に唇を塞がれた。
「…ふ、…ぅ…ん、んんっ…」
ちゅく、と侵入してきた舌がトロリと絡まる。うっすら開けた目で丹波を視界に捉えると熱っぽい視線に抵抗する気を奪われる。
「…は、…っ…あ」
さっきは子供みたいに見えたのにやっぱり自分より年上なんだなとか改めて思う。
「…ん…、ッ……は」
やっと離れた唇から漏れた互いの吐息が妙に熱く感じた。
頬とか身体とか熱が篭ってるのがわかる。
離れた唇がヒヤリと暖房の落とされた部屋に晒されて何となく寂しいというか名残惜しく感じてしまい、そんな自分の思考に赤崎自身動揺する。
「…………丹さん」
ぽつりと丹波を呼ぶ赤崎の声はいつになく小さく、決断も早い赤崎にしては迷ってるような表情だった。
「……も」
「も?」
キョトンとして丹波が聞き返すと赤崎はもぞもぞと毛布へと潜っていく。気になるから追い掛けて丹波も一緒に潜れば僅かな明かりから見える赤崎の表情は困って眉を下げ頬が赤い。
「入ってくんなよ」
悪態もまるで効果は無い。
「気になるじゃんか」
「…………っ…だからッ」
「…もっと…シて…欲し…ぃ…………」
一度声を荒げたものの尻窄みに小さくなる声はいつもの気の強い後輩とは別人みたいだった。
だけど当人には違い無くて…。
「マジ…可愛い」
丹波がぽつりと呟いた言葉は赤崎にも聞こえて、ふいと赤い顔をしてそっぽを向かれる。
「じゃあ遠慮無く…」
「…早くしないと気が変わりますよ」
「そりゃ困る」
そう言い少々強引に唇を塞がれる。
帰る気なんか無くなっている。
そんな自分にちょっと不本意そうに赤崎は目を閉じた。
おわり