本5 その他CP

□Crown-Day
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サカセラ





「じゃあ、ビーフストロングガノフで♪」 




「……………何だその強そうな食いモンは」





 世良はウカれている。



 大好きな先輩が「何か食べたいモン無ぇのか?作ってやるぞ」なんて言ってくれたからである。



 だからちょっとアヤシイカタカナの羅列も大目にみてあげて欲しい。くれぐれも管理人の誤植では無いので宜しく(^^ゞ。



 堺の呆れたツッコミも良くわかってはいなかった。




「…まぁ良い。じゃあ少し待ってろ」




「えっ!?マジで作ってくれるんスか!?」




「何だよマジでって…、割と時間かかん無ぇし材料もあるから構わ無ぇよ?あ、マッシュルームは無ぇな。エリンギで我慢しろ。サワークリームもさすがに材料足らないから生クリームで良いだろ?」




「え?あ?…はい?」



 立ち上がり冷蔵庫の中身と思案して堺がキッチンへ向かう。提案しておきながら言われた事をイマイチ理解出来ずにふわふわした返事の世良を横目に手際良く支度を始める。



 世良はキョトンとして堺の様子を眺めていた。袖を捲り慣れた手つきで料理を始める堺にカッコイイっス!!と目をキラキラさせてテンションを上げている。キッチンからリビングが見えるからそんな視線を嫌でも感じてしまい堺がチラと世良に目配りすると何かもう幸せそうに嬉しそうに照れて笑う。その世良の顔が堺は密に好きだったりする。可愛いよな、と思う。…なんて本人にはとても言えそうに無い。





 堺はきちんと自炊する事が多いから遊びに来たら大体手料理をご馳走になる事が常時だ。 



 正直上手いし美味しい。



 出来上がりは堺らしく男の料理!感が漂う。でも別に雑だとかじゃ無くてシンプルで美味しいと言う感じ。スポーツ選手が引退後とかにお店を開いたりするが堺もイケるんじゃ無いかなと世良は思う。ただ「俺はまだ(現役)やれんだよ!」とか怒られそうだから将来の話だが口にはしない。



 そんな訳で堺が料理してくれるのは珍しく無いが、メニューを聞いてくるのは珍しい。何でだろうな、世良は料理を待ちながらぽやんと暇潰し的に考える(本当は手伝いたいが断られる)。



 今日は久しぶりのオフで明日も休みだ。朝から堺の家へお邪魔した世良は珍しく朝早いな、と堺に開口一言に言われ苦笑する。だけど始発で電車に乗り早々に来てしまったにも関わらず、休みの日なのに既に起きてて規則正しい!と堺を尊敬した世良は、他人んち来る時はもう少し常識的な時間に来いと世良の頭をわしゃわしゃして諌める堺に「スイマセ〜ン」なんて反省の色も薄く目の前に堺が居る事の方が嬉しくて破顔した。



 何か…凄く会いたいと思ったのだ。



 いてもたってもいられず来てしまった。



 それを堺に話すと一度顔を背けられ黙ってしまったから、やっぱりこんな時間から来るなんて怒りますよね…と世良がしゅんとすると「…馬鹿」って言われて…。




 …言われて。




 まぁ、




 うん。




 朝っぱらからだけどね。






「…………」



 今朝の事を思い出し、顔を赤くする世良。



 現在は夕方。



 一日潰しちまったな、と目覚めに堺に言われて起き上がる。「堺さんに会いたかったから潰してなんかいないっスよ!超充実っス!」と明るく笑うと「元気な奴」と呆れた口調の割にふっと優しく笑う堺に擬音にするなら正にズキュンvと世良が胸を押さえた。堺さんと居ると心臓が忙しいっとやっぱりウカれて一人わたわたしてると堺から何食べたいか聞かれた。



 そう考えると珍しくメニューを聞いて来た堺の意図はわからない。



 たまにはそういう日もあるんだろうな、と自己完結した世良。深くは考え無い。




「ほら」



 身体も動かしたし、空腹はMAX状態だった。始めに牛肉と玉葱を炒める良い匂いで食欲がそそられた。




「いただきまーすv」



 待ちきれず掻っ込むように食べ始める。




「馬鹿!落ち着いて食え」




「ふぁふぁひはんほいひーっふ!」




「口に物入れてしゃべるな!」




「ほふぁーはんふぃふぁひっふへー…」




「誰がお母さんだ」




「……………」



 「お母さんみたいっスね」とバレ無いだろうともごもご言ってみたが何でわかったんだろう…。むかいに座り黙々と食べ始める堺に苦笑する。




「ちゃんと食えよ」




「へ?は、はい。あざーっス」



 何やら念を押され世良が小首を傾げながら返事を返す。勿論、言われずともちゃーんとガッツリ遠慮せず頂くつもりだ。




「…お前、ちょっと痩せたろ」




「はい?」



 不意に予想して無かった堺の台詞にキョトンとなる世良。堺の頬が僅かにだが赤い。




「今朝…その…そう思ったんだよ」




「はぁ……、あ!先週風邪引いて食欲無かったせいスかね??」




「ったく。ちゃんと食わ無ぇとスタミナまで無くなるぞ」




「な…ッ、スタミナまでってどーゆー意味っスか!」



 世良が剥れると堺が可笑しそうに笑った。




 でも




 そっか




 そんな些細な変化に気付いてくれたんだな…と胸がいっぱいになる。




「ご馳走さまっした!」




 お腹もいっぱいになりましタ!



 端から見てても気持ちの良い食べっぷりに「おう」と堺も満足そうに片付ける。




「じゃ堺さん!もう一ラウンドお願いします!」




「はぁ?」



 ファイティングポーズでのお願い(?)に堺は食器を持っていない方の手で頭を抱えた。




「…ったく」



 素直っつーか真っ直ぐっつーか正直っつーか…



 自分では考えられない直球の感情。



 隠すとか、ごまかすとか無い。



 呆れるけど…




 少し羨ましい。




「…馬鹿」




 だから




 今だけ自分も素直に世良を抱きしめる堺だった。















おわり
 
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