本5 その他CP

□edge one's way
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タンザキ





「どうした?」




「…別に」



 面倒臭いとか行く理由なんか無い、なんて言われて断られるだろうと思っていたが、練習後に内心半分は諦めがちに家へ誘えば意外にあっさり承諾された。



 ちょっと拍子抜けだった。その割に連れてきた赤崎の機嫌は微妙で、家の主である丹波は煎れてきたインスタントコーヒーを手に首を傾げた。



 そう…機嫌は微妙なのだ。悪いわけでは無さそうだが悪くも見える。ただ機嫌が悪けりゃハッキリした性格の赤崎だ、即答で誘いは断るだろうと想像がつく。



 だから悪いわけじゃ無さそうだが、口数は少ない。目が合っても直ぐにぱっと逸らされる。



 どうしたものか…取り敢えずコーヒーに口をつける丹波だった。






「……ぁ…っち」



 出されたコーヒーをふーふーと冷ましながら軽く口をつけた赤崎が、まだ熱かったからお決まり的に「熱い」を口にする。



 猫舌なのでそーっとコーヒーに口をつける赤崎は密に丹波を和ませているが、当人は至って複雑な心境に悩まされていた。



 今日の微妙な態度はそのせいである。





 練習後、何の気無しに着替えて帰り支度をしていた赤崎にひょいと横から顔を出した丹波。



 家へと誘われ、行く理由なんて思いつかなかったが赤崎の口から出たのは承諾の返事だった。



 心境に微妙な異変。



 呼んでくれるのをどこかで心待ちにしてた気がする。



 丹波と居るのが嫌じゃ無い…とか。



 いや、寧ろ楽しいと言うか……安心するって言うか…。



 安心の訳は色々な葛藤の末好かれてるのがわかってるから…と随分な自惚れな気もするが多分そうなのだ。



 そう考えると勝手だよな、と思う。自分の態度はどう見ても丹波の想いに応えられてるとは言えない。



 だからと言って




 正直、





(…何して良いかわかん無ぇ!)




 つか、何だろう…




 まるで『応えたい』と思ってるみたいじゃ無いか…




「…マジか」




 ぽつりと小さく呟く。




 赤崎の葛藤は続く。







「………福笑いとかする?」




「…………は?」



 片手に目隠し、反対の手に福笑いの台紙をヒラヒラさせて丹波が赤崎に問う。



 予想もつかない提案に赤崎が呆気に取られていると丹波がテーブルに顔の絵のついた台紙と目、鼻、口、眉毛、耳とバラバラにパーツを並べる。




「正月にガミが置いてったんだよな〜」




「何で福笑いなんか…」




「さぁ?ガミだからな」



 アバウト過ぎる理由だが自分でも「ガミさんだからな」と思ってしまい返す言葉も無く間が出来た。丹波がその間を埋めるようにやってみると懐かしいし意外と面白いぜと口を開く。顔の前に目隠しを差し出される赤崎は、じっとそれを見てそうでも無いだろ、と呆れて眉間に皴を寄せていたが、はたと思いついた表情を一瞬見せた。丹波が不思議そうに「何だよ?」と聞けばまた「…別に」と目を逸らされ素っ気なく答えられる。




「…ホントにソレ見えて無いんスか?」




「えー?疑う?」



 苦笑いしながら丹波が目隠しをつける。




「本ッ当に見えて無いからな」



 そう言い福笑いを手探りで始める。




「ホントですか?」




「本当だって」




「絶対?」




「……そんなに疑う?…………っ!?」





 たかだか遊びにそこまで疑うなよ…、と再び苦笑する丹波は次の瞬間唇に柔らかい感触に驚いた。



 怖ず怖ずと重ねられる唇は普段の赤崎とは違い随分慎重だった。




「ホントに…見えて無い…?」




「……無いよ」



 今赤崎がどんな顔をしてるのか気になり丹波は目隠しを取ろうと手をかける。




「取るな」




「…ちょ…あかさ…っ」



 目隠しを取ろうした手を掴まれ阻止される。唇は何度も啄むように重なり熱をジワリと含みはじめる。




「……っ…ぅ…ン」



 浅い口付けでは物足りなくなったのか赤崎がそろりと舌を侵入させてきた。結構こんな色事に慣れてるのかと思いきや、そうでも無い。不慣れな感じで侵入させてきた舌は応じてやるとびくっと一瞬萎縮する。それでも勝ち気な性格故か動じたのを隠そうとした態度を取る赤崎は何か可愛いくて丹波の口角が上がる。




「ん…、ふ…ぁ…」




「赤崎…顔見たいんだけど?」




「…っん、恥ずい…から駄目っス…よ」




「スる方が目隠しプレイとか斬新だなぁ」




「…何馬鹿言ってんスか」




「だって煽られちゃったし」




「〜〜〜〜〜ッ!?」



 ぐいっと赤崎を自分へ抱き寄せて身体を重ねるとズボンごしだが丹波が反応を示しているのがわかり赤崎が硬直する。



 目隠しはまだしたままだけど赤崎が今どんな顔をしてるか今度は想像出来てしまい丹波の口元は緩む。




 だけど気になる。




「あーかーさーきー」




 だって、絶対可愛い。




「顔見たい」




「駄目」




「…じゃ赤崎が目隠しする?」




「………それも嫌だ」




「うーん、確かに。やっぱりお互い顔は見たいよな」




「………ッ…!?」



 手探りで位置を確認した丹波が赤崎をドサリと床に押し倒す。自分の家だが目隠しで見え無いから後ろに何かあるといけないと思い、丹波の腕の上に赤崎の頭が乗るように腕をまわしたから赤崎が床に頭をぶつける事は無かった。




「…丹さ……っ」



 随分紳士的だな、と意外な一面に驚いて丹波を見上げるとまだ目隠しをしたままの丹波が微かに触れるくらいにちゅ、と鼻筋口付けられる。見え無いせいで唇を探すように触れてくる唇は頬をゆっくり下り輪郭をなぞる。半分は業とかも知れない焦れったい動きに赤崎は思わずぎゅと目を閉じた。




「………ぅ…ん」




 さっきたくさん自分からしてみたが、されると全然違う。丹波の唇が自分のと重なると赤崎はぞくと肩を震わせた。




「ん…んっ……は…ぁ」



 ちゅく、と音をたてる深い口付けにくらりと意識が飛びそうになる。しゅる、と目隠しが取り払われる音が聞こえたが今度は赤崎に阻止する余裕など無かった。




「…うん、やっぱ顔見える方が良い♪」



 赤く上気した頬とか、どこへ置いてきたのかキツさの無い目がちょっと潤んでたりしてて目茶苦茶可愛い。




「恥ずい…スよ」




「直ぐにそんなのわかんなくなるって」




「……丹さんの馬鹿」





 くらり





「…ッ…重いっスよ!何なんスか」




「いや、だって…お前…」




 どうしたんだ?って思ってしまうくらい可愛いくてでもどこか小生意気な赤崎に撃沈した丹波が力が抜けたみたいに上に覆い被さって来るから赤崎がぐいとその肩を押し上げる。





「どいて下さい」




「えー、無ー理ー」




「どけっつの」




「今日は煽ったの赤崎だよな♪」




「…………う…」




「嫌じゃ無いだろ」




 そっと唇が重なる。




「…っ……嫌ですよ」




「嘘ばっかり」



 にっと笑う丹波にこのまま続けてても堂々巡りだと赤崎は丹波を押してた手の力を緩めた。



 その行動が意外だったのか丹波が驚いた表情を向けるから、お返しに今度は赤崎がニヤリと笑ってみせる。




 観念したとかじゃ無ぇからな。



「懐柔する気になった?」




「なりませんよ」




「…ちぇ、残念」





 コーヒーを受け取ったあたりまではちょっとくらいしおらしい事も考えてみたりしたはずだが…。




 応えても…良いかな。




 なんて。










 




おわり
 
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