本5 その他CP

□make over
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タンザキ





「ぁ…っ…ち」



 丹波の家に連れて来られた赤崎はお構い宜しく出されたコーヒーに口を付けた。猫舌な赤崎は丹波にしてみれば調度良いくらいの温かさでも熱く感じるようで、普段の勝ち気な切れ長の瞳も何処へやら…、カップを両手で持ちふーふーと冷ますその姿はずーっと見ていても飽きないくらい可愛いかった。




「何スか?」



 口元を緩める丹波に赤崎は眉間に皴を寄せた。




「可愛いーなーと思って♪」




「な、っ…何馬鹿言ってんスか!………それにしても本ッ当ーに意外ですが部屋綺麗で驚きましたよ」




「酷い!丹さんこー見えても綺麗好き」




「……はぁ」




「…嘘でース。ホントは堀田君に手伝って貰いましタ」




「…ハァ?何他人様に迷惑掛けてんスか!ちゃんと自分でどうにかして下さいよ」




「因みにガミも居たけど役に立たねーんだ」



 俺と一緒で片付けられないからな、とカラカラと明るく笑う丹波にどうやら反省の色は無い。石神も居たという事は役に立た無い男二人が居る中、どれ程散らかっていたのか想像は計り知れないが今はすっかり綺麗な部屋にした堀田の苦労は相当なものだろう、と赤崎は肩を竦めた。




 その時、不意に丹波の携帯が鳴った。




「あれ?…ガミだ。何〜?」



 いくら良く知る相手とはいえ軽過ぎる応対に赤崎が呆気にとられる。




「あー、わかんね。ちょっと待ってて」



 電話の内容は何かは聞き取れ無いから、赤崎も黙ってコーヒーの残りを飲んでいるとぽーいと携帯が飛んで来るから一瞬目を疑い、しかしすぐ現実に意識を引き戻し赤崎は慌ててキャッチした。




「危ないスよっ」




「ちょっとだけ相手しててよ」




「はぁ?」



 そう言うとTVの辺りで探し物を始める丹波に、良くわからないまま「もしもし?」と電話に出た。




『あ、赤崎?ヤッホー♪』



「……………どーも」



 ここの家主と変わらないどこへ飛んで行くのやら軽ーい口調の電話ごしの石神の声に赤崎はげんなりする。




「あ、えーと…丹さんち片付けに来てたそーですけど…」



 何を話せというのか、相手をしてろと言われても困る。一旦切れば良いのでは?そう思いつつ取り敢えずさっきの丹波の話を振ってみた。




『あぁ、綺麗だろー?丹波頑張ってたしなー』




「え?堀田さんが片付けたんじゃ無いんスか?」




 石神から伝達されたらしい。間を空けて…俺は手伝っただけだよ、と電話ごしでは無いから少し離れたトコで堀田の声がした。



 意外だ。そんな事一言も言わなかったのに。自分の為?とか自惚れて良いんだろうか…。電話中というのも忘れ赤崎は黙ってしまった。




『だから今日は大人しくしといてやれよー♪』



 噛み付いちゃ駄目だぞー、と飼い犬か猫みたいに宥められ、そんな事しませんよっと反論すると笑い声が聞こえてきた。そんな感じで後輩として仕方無しに先輩にからかわれていると丹波が戻ってきた。ひょいと赤崎から携帯を奪う。




「ガーミー、やっぱり無いわ。堺に返したっぽい」



 そう言うと「堺に聞いてみて」と付け加え電話を切った。



 パタンと閉まる携帯に結局何の話だったのか口には出さないが目で訴えてたらしく答えは丹波から話された。




「たまたま映画のタダ券もらったんだけどさー」




「へぇ…何見に行くんスか?」




「ハリー〇ッター。最新のパート2」




「ハ〇ーポッター?」




 予想外のタイトルに赤崎が目を丸くする。




「誰と?」




「妬いた?」




「違いますよ!」




 声を荒げる赤崎にそれでも楽しそうに丹波は笑っている。大人の余裕ってヤツだろうか?いつも丹波の方が子供みたいな癖にこういう時は自分が子供扱いされて赤崎がムッとなる。そんな赤崎は気にせず丹波は話を続けた。




「ガミと堀田と堺」




「……はぁ」




「ただ堺以外は見たこと無かったんだよな。あ、TVでどれだったかは見たけど…。そしたら堺にいきなりパート2から見んな!て怒られた(笑)」



 と、いう訳で最初から順番にDVDを見てから映画に行く事になった。結構奥が深いんだよね、見てみたらと話す丹波。どうやらDVDの貸し借りの話だったらしい(堺の?←これも意外だ)。




 電話の用事はわかったが、それは置いといてムッとなり明らかに顔に出てる赤崎にそれでも話を続ける丹波は笑っているから余裕めいて見えて赤崎は益々苛立った。子供扱いされてるなんて考えてしまう事事態子供な証拠かも知れない。今だに口元を緩めっぱなしの丹波にそれこそ噛み付きそうに睨む赤崎は、はたと石神との電話を思い出し暫くの沈黙の末、はぁとため息をついて気持ちを落ち着かせた。




「赤崎?」




「何でも無いっスよ………ッ!?」



 黙ってしまった赤崎を覗き込むように顔を近付けた丹波がその距離を縮める。たった一瞬だが空気が変わる。キスされると気付いて押し退けようと反射的に丹波の服の胸のあたりを掴んだ。



 唇が重なるまでの僅かな時間だが色々な事を考えてしまった。そして、本当に少しだけ早く赤崎から唇を重ねた。



 顔が離れれば驚いた顔の丹波に勝ち気な性格故かちょっとした優越感の赤崎。ただ顔が真っ赤になり余裕の欠片も無い。




「片付け…頑張ったらしいから…ご褒美ですよ」



 まぁ、頑張らないといけない程散らかす普段の怠慢のせいですけどね、と照れ隠しについた悪態もイマイチ格好がつかない。




「……も、少ーし貰って良い?」




「…え、……っ…ん」



 丹波の言葉に赤崎が聞き取れ無かったように視線を返す。避けられなくても背けるくらいは出来たが赤崎はそうはしなかった。ゆっくり柔らかく重なる唇にぞくりと赤崎は身体を震わせた。何度か啄むような軽い口付けを繰り返し、は、と呼吸をするとうっすら開いた唇へ丹波の舌が侵入してくる。




「んん…ッ」



 身を引こうとしたがドサリと身体はソファーへ押し倒されて引けなくなった。絡まる舌にくらりと目眩がしそうになり、その隙に服の中に丹波の手が滑り込んできた。 




「…っ…あ……痛ッ」




「あ、悪い…」



 口でそう言っても丹波はまだ唇は離さないし、行為も止めない。胸の突起を摘まれ顔を顰める赤崎がぎゅうと閉じる目が何だか頼り無さ気で堪らなく可愛いくて止められそうに無い。




「丹…さ…」



 微かに赤くした頬と潤んだ瞳で丹波を見上げ赤崎は呼吸も少し乱し始めていた。今日は大人しくしてろと言われた手前というわけでないが…それでも大人しくされるがままになってる自分に赤崎は信じられずにいた。







 ピルルルル♪





 再び丹波の携帯が鳴り、ハッとなる赤崎。丹波といえばチラと携帯を一瞥するも出ないに決めたようでつい、と赤崎の肌を指の腹でなぞる。




「…んっ……」



 ビクンと身体を跳ねさす赤崎に口角を上げる丹波は、次の瞬間には何やら悪寒でも走ったのか直感がきたのかぱっと携帯を開く。




「やべ、堺だ!はーい、お待たせ〜」




『お待たせ〜じゃ無ぇよ!!』



 堺に怒られるのは苦手らしい。丹波が慌てて電話に出る。赤い頬をして横目でその様子をチラリと見る赤崎は動きを早めた心臓を押さえて落ち着かせようと、はぁと息を吐く。電話ごしじゃ無いのに堺の声は良く聞こえて苦笑した。




『DVDまだ返して貰って無ぇぞ!お前んちにあるだろ』




「あれ?ホントにぃ?………って来る?家に?今から!?ちょ…っ堺っ!!」




 ツーツー…



 プツッと切れた電話に丹波が苦笑する。




「えーと…、今から堺が来まーす」




「…お邪魔しました」




「えー、帰るの?赤崎ぃ」




「面倒臭そうなので帰ります」




「こんなにシといて?」




「シたのは丹さんでしょ!」








 騒がしい丹波は放置して赤崎はさっさと丹波の家から退散した。





(頑張って貰った分は返したよな?)




 ↑意外と律儀。




 熱い頬を押さえて逃げるように帰宅する赤崎だった。















おわり
 
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