本 ジノバキ

□場所は不問
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 試合後のバスの中。


「よし、お疲れ!あんまり良い内容じゃ無かったが反省はまた明日の練習でするとして…今日は疲れを残さ無い様に休めよ」



 達海からの一言。続けて「椿は個人反省会」とご指名を受けて、はぁとため息をつきながら椿が返事をする。



「まぁ今日のバッキー、グダグダだったしねぇ」



「王子、キツイよ」



「…まぁ頑張れ」




 ジーノの一言に返す言葉も無く苦笑して、フォロー(?)を入れてくれた丹波と励ましてくれた隣に居た宮野に見送られ立ち上がって一番前の席にいる達海の元へと向かう。



 が、バスが急にキッと止まるのでバランスを崩して二つ後ろの後部席にゆったり座るジーノのところへ倒れ込む。シートの上に尻餅をついた。ジーノの足の上とかでなくてまずはほっとした。しかし一歩間違ってたら、大事な足に何かあってはと思うと焦る。



「わ、あ、あっ、王子っ、すッ…スミマセン!!」



 直ぐ立ち上がろうにもバスが再び動き出してしまい上手く起き上がれない。「何やってんだよ椿〜」と先輩達に呆れられつつシートの背もたれとジーノの伸ばされた足の間から起き上がろうと必死の椿。ジーノの足に気をつけて起き上がろうとするので何だかままならない。



「こらバッキー、危ないよ」




 怒ってる風でなく飼い犬を諌める口調でつん、とその長くて綺麗な人差し指でおでこを弾いてくるジーノに顔がかぁと熱くなる。



「走行中は気をつけなよ」



 と、さらに頭を撫でられる。



「すみません…あ、あの…王子…、大丈夫でしたか?」



「大丈夫だよ」




 ジーノが変わらず伸ばして組んだ足を除けてくれないので走行中という事もあり椿は立ち上がるタイミングは完全に逃した。退くに退けないだけなのだが動かない椿にジーノは口角を上げた。




「ここが良いの?バッキー」



「へ?…あ、いや、違っ…退きたいんス…けど」


 語尾が小さくなる椿の声は走行音でジーノには聞こえ無かった。



「じゃあもっとこっちにおいで」



「わ、…んっ、ちょ…っ王子」








(バスん中でもかーー!!?)




 と、選手達の心の叫びとか空気はジーノに読む気は無い。



「俺、呼んでんだけど?」



 試合後の疲れに加算してドッキドキの車内。試合で疲れてる選手よりも疲れた声で達海が声をかける。




「あ、スミマセンっ!」



 その声に椿が慌てるがジーノはマイペースで椿の頭を撫でながら




「今日はバッキー、ココが良いんだってさ。タッツミーがこっちおいでよ」



「な、…お、王子っ」




 監督の方を呼びつけるなんて悪いです、とオロオロする椿にジーノがにっこり笑いかける。




「ここが良いよね?バッキー」



「…っ、ぁ…」




 監督だから行くより来させるべきだ、というわけなど一切無いがその場に行くのはさすがに達海でも物凄ーく躊躇う。





 ため息をついてげんなりしつつ、少しは考えてみて、




「嫌だ!」




 と、当然の結論が出る。





 結局、ちゃんと椿が達海の方へ行き個人反省会は行われた。















おわり
 
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