Short
□二人世界
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「今日は二人で一緒にいられて、良かったなあ…」
貴方は煙草を吸いながら、まっすぐに屯所の池を見つめて
私はその仕草を静かに見つめる。
それだけで幸せな時間を感じる事ができた。
ふと耳を澄ませてみる。
真夏の夜なのに今日は静かで
虫の声も、蛙の声も、隊士達の騒ぐ声も
聞こえてこない。
「世界で、二人きりになったみたい」
「……そうなったら、寂しくてたえらんないだろお前は」
「そうかもね、でも
土方さんと一緒ならアリかなって」
「……」
あらら、なんだか照れたらしい。
黙ってまた煙草を吸って、冷静さを保とうとしてる。
そんな姿を見ている時
私の身体が、もう時間だよ。と警告のベルを鳴らした。
ーーちょうどいいのかもしれない。
「冗談〜、さてと
私はそろそろ部屋に戻るよ
……また明日ね、土方さん」
おう、と片手をあげてくれる。
そして、
『また明日な』
もう二度と果たすことのできない、約束をする。
*
end
→
後書き