Both sides

□Episode 6
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「奏多ーっ!どこなのーっ?!」

新雲学園との熱戦が終わり、数時間。
天馬は姿の見えない奏多を探していた。


「どこにもいない…」


スタジアムの周りを探しても、一向に現れることがない。
もう、ここにはいないのだろう。


「天馬。あいつは先に帰ったかもしれない。だから、俺たちも帰ろう。」

「でも…!」

「もう日も落ちる。暗くなったら探すこともできないだろう。」

「…はい。」








家に入って、ベッドに向かって飛び込んだ。


「(それでいいの…?!)」


そう叫んだ奏多の顔が忘れられない。
あれは何の偽りもない、哀しい顔だった。
頭の中をぐるぐる巡る。


「(あんな顔見たら…放っておけないよ…!)」


枕に顔を疼くめる。
こんな気持ちで明日を迎えてしまうのか。
そう思うと、すごく気持ち悪い。


「…こんなんじゃだめだ。」


勢いよく起き上がり、部屋の扉を開ける。
悩みを晴らすには、あそこしかない。
天馬はそこを一直線に目指して、歩いていく。






「ここに来るのも久しぶりだなぁ…」


階段の一番上の段に腰掛ける。
やってきたのは、河川敷のグラウンド。
前にも、ここに来てぐずっていたものだ。


「前は秋ねえが来てくれて、励ましてくれたんだよなー…」


と、昔話を語る。
鎮静を保っているグラウンド。
もちろん、人影なんて道にもいない。
天馬はグラウンドを見つめる。


「奏多って…一体なんなのだろう。」

「私は私、だけど?」


いきなり聞こえた声にびっくりして、「うわぁ!」と叫んでしまう。


「なっ、奏多?!」

「何よ、人を幽霊のように扱って。」


信じられなかった。
ほんの10秒くらい前は、人なんていなかったのに。


「ずっと探してたんだよ!?いきなりいなくなるから…!」

「ごめん。心配かけちゃって。」

「で、奏多はどうしてここに?」


そう問いかけると、奏多の表情は哀しいのか、嬉しいのかよく分からない笑みでこちらを見てきた。


「その前に、そこにいる人に出てきてもらいたいな。」


と、奏多が指差したのは建物の影。
そこからもう一つ、新たな影が出てきた。
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