Both sides

□Episode 5
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後半戦のホイッスルが空高くまで鳴り響いた。
奏多の脳内では先程の太陽の言葉が離れずに、いつまでも駆け巡る。
太陽の気持ちが奏多に分からないわけではなかった。
むしろ、自分もそう思っているだろう。


「(あぁ…!!もうどうしたらいいの…!?)」


アナウンスの声が一段と大きくなった。
顔をあげて見てみると、どうやら太陽と天馬がボールを取り合っているようだ。
足だけでなく、手や腰、体全体で対立していた。
もちろん、言葉でも。
太陽は、天馬を本気にさせようとしているのだろう。
でも、自分は喜ばない。
喜べない。
喜びたくても、喜んで見れるわけがない。


「(お願い…!お願いだから…!!これ以上、だと…!!)」


そんな願いとは裏腹に、天馬のプレーに少しずつ活気が戻ってきていた。
太陽の言葉に、心を動かされたのだろう。


「…っ!!」


奏多は耐えきれず、立ち上がってフィールドギリギリまで駆け寄る。
「奏多?!待って!!」という葵の声も聞かず、 フィールドに向かって叫んだ。


「それでいいの?!本気を出したら、太陽は…!皆は…!!」

「違う!!」


天馬の声が、 奏多の気持ちを打ち消した。


「天馬…?!」

「確かに、本気を出すと太陽が危ない状態になるかもしれない。二度とサッカーが出来なくなるかもしれない。
でも、それからじゃ遅いんだ!だから今!このサッカーが出来るこの瞬間に、本気でやらないと太陽が、そしてサッカーが悲しむよ!!」

「っ…!!」

「だから、俺は本気を出して今、太陽を越える!太陽よりも遥か…遥か上を飛び越えるんだ!!」


天馬の力強い意志が、固い決意が化身となり姿を表す。
それは、今までの化身とは遥かに強く、大きく、勇ましく、そして華麗だった。


「いくぞ!魔神ペガサスアーク!!」
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