For you

□馬鹿だな、お前だからだよ
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「今思ったんだけどさ。」


いきなり、円堂は俺を見て言葉を発した。


「なんだ?」


と、俺が問いかけてやると円堂はニカッと笑って


「本当に髪、伸ばしてくれてたんだな!」

「あぁ…まあな。」

「本当にしてくれてるとは思わなかったよ。」


そして、また笑う。
俺もつられて笑う。


「うん、やっぱり風丸は長い方が似合うな!」

「それは、俺は短髪は似合わないってことか?」

「そういう意味じゃないさ!だからさ、こっちの方が見慣れてるっていうか…!」


円堂は必死に言葉の続きを考える。


「でも、別に切って良かったんだぜ??」

「そういう訳にはいかないだろう。」

「なんで?」


円堂の丸い目が俺を問い詰める。

この目で見られると、正直なんて言ったらいいか分からなくなってしまう。


「…お前に言われたからに決まってるだろ。」

「俺に…?じゃあさ、豪炎寺とか、鬼道に言われても伸ばしてた?」

「あー…それはないな。」

「なんで?」


こいつの鈍感さにはいつも驚かされる。

俺は思いっきり溜め息をついてしまう。


「なんだよー…!!」

「お前も気づけよな…」

「何に?」

「だからさ…お前だから、だよ。」

「…は?」

「つくづく鈍感だな。お前は。」


そうして俺は円堂の額に一つ、キスを落とす。


「っ…!!?」

「円堂のバーカ。」

「なっ…!?バカっていうなー!!」


そんな声が聞こえるが、気にしない。


円堂、髪を伸ばしてる理由なんて、一つしかないじゃないか。

好きな相手に言われたら、誰だって伸ばすだろ。

好きなお前に言われたから、俺は伸ばしてるんだ。



-END-
 

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