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□もう少し、ゆっくり歩こう
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※世宇子戦前




「分からない…何なんだよ〜…」



部室の中からは呻き声が聞こえてきた。


円堂が悩んでいたのだ。


祖父の特訓ノートに書いてあった新しい必殺技を会得しようと日々特訓に励んでいる。


だがどうしても1つだけ、意味が分からず頭を悩ませていた。



「だぁーっ!!なんなんだよっ!!!」



と大声で叫び、椅子にもたれかかる。


その大声は、部室の扉を開けようとした豪炎寺をひるました。


びっくりしたが、静かに扉を開けていく。



「どうしたんだ…?一体…」


「豪炎寺…」


「まさか…まだ悩んでいるのか?」



豪炎寺がそういうと円堂は苦笑し、



「まあな。どうしても分からなくってさ…」


「そうか…」


「でも、早く完成させないとな!!」


「よしっ!!」と気合を入れて、円堂は部室を出ようと取っ手に手をかけた。


その時、豪炎寺が円堂の腕を掴む。



「ごう、えんじ…?」



円堂は不思議そうに豪炎寺に視線を移す。



「どうしたんだ?」


「……焦りすぎるなよ。」


「へっ?」


「もう少し、ゆっくり考えてみろよ。少しずつ分かればいいんだから。」



と優しい目で円堂を見つめる。


円堂はスッと視線を下にそらす。



「…ありがとな」



小声で呟き、顔は少し濡れていた。


胸の重りが外れたのか、円堂の顔は少しずつ濡れる範囲が広がった。


相当追い込まれていたんだろう。


そんな円堂を見て、豪炎寺はそっと抱きしめる。



「円堂…」


「ごめ…ん…お、おれってば…」


「大丈夫…お前なら出来る。」


「う、うん…」



だから、1人じゃなくて皆で考えていこう。


焦らず、ゆっくり一歩ずつ歩いていこう。




‐END‐
 

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