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□彩日十題03
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仕事を終え、軽くシャワーを浴びた後に昨日のカレーを温めていると玄関のチャイムが鳴った。

ああ、匂いに釣れられてやって来た駄犬一匹。


「おう、隼人じゃねぇか。こんな時間にどうした」

「メシ……」

「ん?オジサン耳遠いからちゃんと言わなきゃわかんねぇぞ?」


目線を合わせてぽんぽんて頭を叩くと唸る駄犬、もとい隼人。
そんなに睨まなくてもいいのにねェ。最近のガキは怖い怖い。

一言「会いたい」って、ちゃんと言えば虐めたりしねぇのによ。
なんだか俺が馬鹿みてぇじゃねぇか。


「まあいい、さっさと上がれ。あ、おまえ辛口は平気だったよな?」

「あ?カレーでも作ってんのか」

「昨日のだけどな。残すなよ?」

「誰が」


隼人はそのまま、まるで自分の家のように我が物顔で俺の横をするりと通り抜けていく。

いや、まあそのうち隼人の家になるんだがな。
あいつはまだまだガキで、ついでに言うとバカだから、ここに住めなんて言ったらどうせ断るに決まってる。
俺達にはまだ早い、とか言ってさ。

一体何が早いんだが、想像している時点でおまえ、それこそバカだろう?


「おっと、火ぃ点けっぱなしだったぜ」


俺は慌ててキッチンに戻り、コンロの火を消した。

隼人が大人になるまでにはIHに変えねぇとな、とかいっそイタリアにでも引っ越すか、とか考えながら二人分の皿とコップを取り出す。
確か冷蔵庫に貰いもんの桃があったはずだから食後に切って出してやろう。


「出来たのかよ」


御盆にカレーを乗せて持って行くと、隼人は脱ぎっぱなしにしてあった俺のスーツの上に座っていた。


「おま、ハンガーに掛けてやろうって気持ちはなかったのか!」

「ねぇよ。つか替えはいくらでもあんだろ」

「あーあーこのスーツ高かったんだぞばかやろォォ……」


日本円でウン十万もしたオフホワイトのスーツに手を伸ばす。
こいつを嫁にしようとしていた一分前の自分を殴りてぇ!……痛いからやんねぇけど。


「ん、このカレー……不味くはねぇな」

「当たりめぇだ!」


駄犬との恋は、なんだか前途多難である。




ひねくれ者のおまえのことなんて、


(好きだぜ隼人……うわ、自分で言って腹立ってきた!)
(うぜぇ)






110802
受けに振り回される攻めが書きたかったんだ

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