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□仄恋十題10
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沢田綱吉の周りにはいつも、他の小動物や赤ん坊が集まって小さな群れを作っている。
なんて不愉快なんだろうね。
それは何度も口にしてきた台詞だけど、ふと、目に入ってしまった君がひとりぼっちで泣いていたらどうすればいいのかな。

こんな所で何してるんだい。
それとも、


「どうしたの」


僕が声を掛けると、女の子みたいに華奢な肩がびくんと跳ね上がった。
警戒しなくていいのに。
夜の校舎を歩いてる君の方が不審者だって、どうして気付かない?


「ご、ごめんなさい!すぐに帰りますんで……」

「聞こえなかったのかい?僕はどうしたのって訊いたんだ」

「それは……っ」


ふうん。僕には言えないことなんだ。
焦る沢田綱吉。でもね、涙が止まっていないよ。


「ねぇ、怒らないから話してごらん」


言ってから、逃げられないように肩を掴んだ。
不安そうに揺れる二つの大きな眼に見上げられる。

うん。わかるよ。自分でもなんで、こんな事を言っているのかわからない。
見回りをしていたのだから、本当なら君を咬み殺さなきゃいけないのにね。
今日の君は咬みごたえが無さそうなんだ。……あれ、ちょっと違うかな。


「獄寺君と、喧嘩しちゃったんです……。よく考えれば俺が悪かったのに、ついカッとしちゃって……言っちゃいけないことも、いろいろ、言っちゃって……」

「そう。それで、君はどうしたいの?」

「謝りたい……っ!今すぐに、ごめんって……」


ほとんど嗚咽だった。沢田綱吉の瞳からはどんどんと涙が溢れ出し、小動物への懺悔を叫ぶ。

君らしいね、本当に。
僕はそれ以上何を言っていいのかわからず、衝動のままに背中に手を回した。
驚いてるのは雰囲気でわかるよ。


「雲雀、さん……!」


廊下に僕の名を呼ぶ沢田綱吉の声が響く。
嬉しい。けれど、どこか苦しくて、痛い。
それが不愉快だとは思わないけど、僕は、無意識の内に抱きしめる力を強めた。




泣きたくなったら僕を呼んでね


(嘘、泣きたいのは僕の方だよ)





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