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□涓々十五題13
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わりと歪な関係だった。
俺がそう言うとあいつは声を上げて笑った。
「それにしても、今日は馬鹿に暑いね」
節電を勧める世間の例に漏れず、扇風機一つで酷暑を乗り切ろうとしている午後。
俺はだだっ広い幸村君の部屋のソファーに寝転がり、パチパチと携帯電話をいじくる。
幸村君の声は珍しく疲れが滲んでいた。
「なあ、いい加減クーラー点けようぜ。熱中症になっちゃ元も子もねぇだろ」
「それもそうだな……」
「あと飲み物」
「あれ、もう飲み終わったの?」
と、驚いた顔の幸村君。
それもそうか。
ここに来てまだ三十分も経っていないというのに、二リットルのペットボトルを飲み干してしまったのは少し異常かもしれない。
けど、今日はどうしようもないくらい喉が渇いていた。
これも暑さの所為?
考えたけど、如何せん頭が正常に動かない。
幸村君に空いたコップとペットボトルを渡すと、俺はまた携帯電話に視線を戻した。
***
昨夜のことはよく覚えていた。
甘ったるいキスの味。
唾液が、あらゆる体液が安っぽいAVみたいな水音を立てて俺の鼓膜を刺激する。
それは麻薬のように抜け出せいループだ。
欲しがったのは俺で、これから先も止めることはできない。
「のう、ブンちゃん」
中でも最も俺を虜にさせたのがあいつの厭らしい笑い声だろう。
いつから?
多分、忘れてしまった。
おまえの中にいるのが俺じゃなくても、俺は
「好きだ……」
「よく言えました」
そうしてまた一線を越える。
でも、自覚はあるんだ。
こんな関係を続けたところで何の意味もないし、逆に俺の心は毎分、毎秒と荒んでいくばかり。
俺達の関係は歪だ。……それとも、自覚しているからこそ俺は『歪んで』いるのだろうか?
***
「お待たせ。冷えてないやつだから氷も持ってきたよ」
幸村君はたくさんの缶ジュースと氷の入ったコップを抱えて戻ってきた。
時間にすると三分も経ってないはずなのに、随分と待たされたような気がする。
「廊下は暑いね。ここ入った瞬間天国」
「だろ?やっぱ夏はこうでなくっちゃ」
「そうだね。はい、サイダーだよ」
「おっ」
氷で冷やされた炭酸はしゅわしゅわと音を立てる。
ああ、夏だな。
こんなことで季節を感じられる俺なのに、ああ、くそ、どうして。
『仁王は、
俺のこと好き?』
喉から出そうで出なかった言葉。
炭酸に焼かれて、咽せて、もう泣いた方がいい?
答えは……解らない。
幸村君に大丈夫かと訊かれたので、俺は『もう一杯ちょうだい』と言った。
なけないけもの
(堕ちたいわけじゃなくて、だけど、もう、)
110717
右側ブン太が許せるのはニオブンだけだけど、ブンニオも大好きです