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□彩日十題09
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風紀委員の仕事は思いの外早く片付いてしまった。
壁時計に目をやると、時刻は午後五時を少し過ぎたばかり。
雨の日の部活は五時半までだと言っていたから、あと三十分は待つことになるだろう。
だが、ちっとも苦痛ではなかった。彼の為なら。

雲雀は机の上に並べられた資料を鞄の中に仕舞うと、花瓶の水を替え、応接室の中をゆっくりと掃除した。
それは一時間前に舎弟によって成されていたのだが、何かをしていなければ落ち着かなかったのだ。

暫くしてもう一度時計を見る。
あれから十分も経っていないことに驚いた雲雀は、諦めたように溜め息を吐いて昇降口に向かった。


***


ようやく待ち人が現れたのは応接室を出てから三十分後のことだった。


「今日は随分と遅いんだね……」

「ありっ、もしかして待っててくれたのか?」

「たまたまだよ」


外の雨は激しさを増している。
まるでバケツをひっくり返したような凄まじい雨音に雲雀の声は殆ど飲み込まれてしまったが、待ち人山本はただ笑顔で返した。

ずるいよ。
なんて、言えない。
それだけで自分の全てを持っていかれたような気がするから、この男は不思議だ。


「そっか。なあ、良かったらウチ寄ってかね?夕飯食ってけよ」

「僕の家は反対方向だけど」

「じゃあ泊まってけばいいだろ」

「君って人は……」


徐に差し出された右手を凝視していると、二の腕の辺りを強い力で掴まれた。
強引だね。そんなところが好きだなんて、きっと僕はどうかしてる。


「雲雀」


ねぇ、家に着いたら僕の話を聞いてくれるかい?


「なんだい」

「こういうのも、悪くないよな」


山本が笑いながら真っ黒な傘を開く。
その肩に寄り添うようにぴったりとくっ付いた瞬間に傘が大きく傾いて、それから唇の熱を感じた。




雨の日、わざと傘を忘れて行った


(願わくば、このまま遠くへ連れて行ってよ)





110716
雨と言えば山獄より山綱より山スクより山雲っ

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