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□歪ミイズム
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※浮気ツナ×忠犬獄寺
あっ、ダメ。
ダメダメ、そんなこと。
ここで貴方を抱いてしまったら、きっと俺は好きになる。
それでもいいの?
俺はよくないんだよ。
……ああ、でも、ダメ。
今夜だけと思ってまた流されて、彼の傷を抉る。
***
「寝不足かな?隈、できてるよ」
雲雀さんの細くて白い指が、俺の目元に触れた。
指の腹で撫でられて出る声は生理的なモノだから仕方ないと思うのだけど、視界の隅で捉えた彼は今日も今日とて激しく吠える。
「雲雀テメェ、気安く十代目に触れてんじゃねぇよ」
「なんのことかな?第一君にそんな事を言われる筋合いは無いと思うんだけど」
「うるせぇ!俺は十代目の右腕として言ってんだ!」
「つまりは君が勝手に言ってるだけなんだろ」
「テメェ…ッ!」
ガルルル!と、まるで本物の犬のそれに聞こえてくるようで。
耳障りと言ったらそれまでだし、慣れてしまえば心地良いBGMに変わる。
薄情だって思う?
かもね、そうかもしれない。
俺は猫で、君は犬。
君がそうやって忠誠を尽くそうとするから、きっと俺はそこへつけ込みたくなってしまう。
好きだからこそね。
「獄寺君。少し、静かにしてくれないかな」
「十代目…ッ!」
時に絶望的な顔で俺に縋ろうとする、君に、
「大丈夫だよ。君の言いたいことはわかってるから」
優しく微笑んで飼い慣らしたくなるのさ。
***
「あの子は随分と躾られたようだね」
「本当にそう思う?」
「或いは、ね」
ベッドのスプリングが軋む。
雲雀さんが何人目の浮気相手であったのかは忘れてしまった。
突き詰めれば快楽ってヤツを求めてるだけかもしれないけどね。
舌を絡めるのは気持ち良いし、欲を吐き出す場所を与えてくれればどうしようもなく愛おしくなってしまう。
一回は断るんだよ。
俺を好きにならないで、って。
でもね、ああ、ダメなんだ。
俺を想ってまた彼が泣くのだと思うと楽しくなってしまうの。
「意味深ですね。貴方ならどうします?」
啄むようなキスを繰り返して、俺の下で雲雀さんは顔を歪めた。
酷だね。
知ってたけど。
「僕にそんなことを訊くのかい?君は僕のモノじゃないのに……。でも答えてあげるよ。君が望むなら、僕もあの子のように泣いてあげる」
「ふふ、雲雀さんも充分躾られてるじゃないですか」
俺はどうしようもなく嬉しくて、今度は甘く深いキスを落とす。
ねぇ、本当は気付いてるんでしょ?
罵ってくれてもいいんだよ。
君にはその資格がある。
むしろ俺はそれを期待しているんだ。
いつになってもいい。
歪んだ愛し方から知らない俺を嫌いになって、なぶって、縛り付けて、
「これでもかってくらい、不本意だけどね」
そしたら俺は誰も泣かせることなく、君だけを愛せるから。
110617
タイトルはj/k/bの曲から。内容は関係ないッス。