short
□六月の花嫁
1ページ/1ページ
※18歳くらい設定
「ジューンブライドと言ってね。六月に結婚した花嫁は幸せになると言われてるの。 確か日本にも同じ風習があったはずよ」
ブライダル雑誌を片手に得意気に話すビアンキを、俺はぼんやりと眺めていた。
俺は男だからそういうのはわからないけど、流石に彼女はリボーンと結婚未遂(?)をしただけのことはある。
いつもの刺々しいオーラも、今は京子ちゃんやハルのそれとあまり変わらない。
「ツナはどうなの? あの子、きっと待ってるわ」
ふと、ビアンキは俺に微笑んでみせた。
「え、俺?誰かに嫁ぐ予定は今のところないけど」
「そうじゃなくて、隼人を嫁に貰わないのかって訊いてるのよ。 年齢的には問題ないでしょ」
「まあ…法律的にはあるけどね」
思わず苦笑すると、愛に法律は関係ないわ!と一喝。
ビアンキに常識が通用するとは思えないけど、事実日本に住んでいる限りそれは難しい問題だ。
獄寺君を俺のお嫁さんに。
すごく…そそられる話ではあるんだけど。
***
「っていう話をビアンキとしてたんだけどさァ」
「なっ…!お、俺が十代目とッスか!?そそそんな恐れ多い…!」
「……うん、その反応は予想は出来たけど」
顔を真っ赤にし、右手をこれでもかってくらいブンブンと振る獄寺君。
……分かり易いのはいいんだけど、そこまでされると傷付くよね。
「獄寺君は俺と結婚したくないの? 俺のこと嫌い?」
ちょっと卑怯だとは思いつつも、獄寺君の服の裾を掴み涙ぐんでみせる。
(これは昔付き合うか付き合わないかの頃によく使ってた手だけど、多分まだ通用すると信じよう)
彼だって男だし、色んな葛藤があるに違いないけど、俺の想いだって生半可なものじゃあないんだ。
恥ずかしがるくらいならもっと好きと云って、そしたら君が離れないように縛ってあげるから。
あと数センチで唇と唇がくっ付きそうな距離まで近付けば、獄寺君はシュンと寂しそうに背中を丸めた。
「俺が…あなたのこと、嫌いになるわけない……」
「じゃあお嫁さんになってよ」
俺は申し訳程度に左手を取り、そっと、薬指に口付けをする。
俺も君も夢見るだけの愚かな子供じゃないから、心は少しだけ痛かった。
叶えたい想い。
でも、叶わないかもしれない願い。
それでも君とならどんな困難でも乗り越えられるって、信じてる俺はまだ子供なのかな?
「返事は?」
「……ふつつか者ですが」
「ありがとう。大好き」
大好きだよ、獄寺君。
――だけどこの気持ちだけは一生変わることないから、夢見るのも悪くないの。
今年の六月は無理かもしれないけど、いつか、花嫁姿の君に永遠を誓うよ。
六月の花嫁
(ところで俺が旦那っていう案はないんスか? お、俺も十代目のウェディング姿が見たi)
(ないよ)
110601