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□真夏の☆ペテン
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「ゲーム柳、5−0!」
暫くして、審判を務めた柳生の無情な声がコートに響き渡った。
幸村、真田と共に立海の3強と呼ばれる柳の実力を明確に現している数字だ。
と同時に一年半前の、赤也が無謀にも彼らに挑んだ時の再現でもある。
「‥‥クソッ!」
勝ちたい。
どうしても柳先輩に勝ちたい。
――でも、その先はどうする?
言葉にならない思いで赤也はネットを蹴り上げた。
「俺はそんなにマナーの悪い人間に育てた覚えはないぞ、赤也」
「ハッ‥育ててもらったつもりなんかないッスよ」
「そうか‥なら仕方ないな」
1セットマッチのこの試合、第6ゲームは柳のサービスゲームだ。
いつものように華麗な仕草で柳はトスを上げ――その時、赤也の脳裏にフラッシュバックのようにある光景が次々と浮かんでいった。
それは、柳と共に過ごした短いけれどとても穏やかな時間。
赤也にとって柳は母親のような存在だった。
いつも真田や幸村に怒られる自分をベタベタに甘やかしてくれる、優しくて器の大きい先輩。
(‥‥そうだ、柳先輩はいつだって俺に優しかった)
(それなのに‥なんで‥‥)

「なんでなんだよぉぉぉ!!」
そして、赤也の全身が赤く染まった。




「そろそろだな」
その頃、幸村の病室に来ていた真田は何かを見計らったように腰を上げた。
「なんだ、好きなテレビ番組でも始まるのかい?」
「幸村‥俺をからかっているのか?」
「冗談だよ」
クスクスと笑う幸村。で、何の話なんだと訊ねると、真田はうむ‥と小さく頷いた。
「実は赤也のことなんだが‥あいつはどうも精神面で脆い部分がある」
「うん、それは俺も思ってた」
「だが何としてもそれを克服せねばならん。そこで俺はあいつを試すことにしたのだ」
「ああ、それで‥‥」
真田の言葉でピンときた幸村は、普段ここに居るはずのない人物に視線を送った。
いや、居るはずのない、というのは少し語弊があるかもしれない。
彼も真田同様よくこの病室によく見舞いに来てくれる。
但しそれは赤也と二人で、という意味だ。
自分と真田の邪魔をする程彼は愚かな人間ではない。

「――それで、蓮二が居るのか」



「まさか‥こんな事が‥」
舞台は再び立海のコート。
ジャッカルはその場に居る部員達の思いを正確に代弁していた。
まさか柳が負けるなんて――。
ゲームカウント7−5。
何よりも驚くべきは赤也の豹変ぶりだった。
全身が赤く染まった途端奇声を発し、信じられない程のスピードでボールに追い付いてしまう。
以前に一度だけ見た赤目モードとは比にならない変化だ。
「‥‥勝ったッスよ」
体力を使い切り、汗だくになった赤也が言った。
「そのようだな」
しかしあくまで冷静な柳。
するとおもむろに赤也の方へと歩き出し、その肩にぽんっと左手を置いた。
「だが、このままでは参謀にフラれる確率100%じゃの」
「‥‥‥へ?」
「! おまえ、まさか――」
赤也が目を丸くし、ジャッカルが何かを言いかけた時その声はコートに響く。
「それはどうだろうな、仁王」
そして柳は――いや、柳に扮したペテン師はジャッカルの方を振り返り、茶目っ気たっぷりにこう告げた。

「ウチの若いのを覚醒させる必要があったぜよ」





真夏のペテン


(つうかなんでジャッカルは知らねぇんだ?)
(おや、私は丸井君に説明するよう言いましたが?)
(え、そうだっけ?)
(まったく‥‥たるんどるぞジャッカル!)
(俺かよっ!?)

(赤也、心配しなくとも俺はおまえしか見えていない)
(柳先輩‥!)
(ははっ、しかしまたうちにバカップルが増えてしまったのう)

(‥‥っくしゅ!‥‥誰か俺の噂してるのかな‥‥)







110217
こんな方法もあったんじゃないかとw一石二鳥だろぃ☆←

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