short

□青色の恋
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「‥サエさん。今、なんて‥‥」

佐伯虎次郎は天才なんじゃないかと、たまに思う時がある。
いや、そりゃテニスは上手いし勉強だってきっと出来る方なんだろうけど、サエさんの凄いところはそこじゃあない。
何と言うか‥感覚的というか‥‥ああほら、頭が良いんだ。
もっと上手い表現はあるはずだけど、それだ。
だけど、それを解っていても、さすがにちょっと驚いた。――あの人に対する俺の気持ちに気付いているなんて。

「んー、だって。結構わかりやすかったよ?」
「そ、そうか‥‥」
「うん。あといっちゃんと亮も気付いてるね。ていうか本人も‥‥」
と、何でもない顔でサエさん。

‥‥が、それは大問題以外の何物でもない。
さっきのサエさんの「ダビデってバネのこと好きだよね」発言よりも驚いた俺は絶句し、するとややあってサエさんはクスクスと笑った。

「冗談だよ」
「‥‥冗談かよ!」
「わ、ダビデが突っ込んだ!俺すごくない?」
「すごくない!ぜんっぜんすごくない!!」
「あははは」

ああもう前言撤回!
俺はいじけて地面、ていうか砂浜を蹴ってそのまま後ろに倒れ込んだ。
空が青い。海も青い。(‥‥ついでに心も青いんだ)

「‥‥なんで、わかった?」

目を閉じて視界の青を消してから問い掛けた。
サエさんは声のトーンを幾分落とし静かに答える。

「俺も同じだからだよ」
と、少し泣きそうな声で。

いや、もしかしたら本当にサエさんは泣いているのかもしれない。
だって俺は目を瞑ったまんまだし、まあ開けたところでサエさんが人に涙を見せるとは思わないけど‥‥サエさんの言う意味が本当なら、それは悲しいことだ。
恋愛は自由だなんて嘘。
しちゃいけない恋もある。

(だからサエさんは、俺の気持ちに――)

なんだか自分が恥ずかしくなって膝を折り曲げたら、隣にサエさんが腰を下ろす気配がした。

「‥‥ねぇ、サエさんの好きな人って誰」
「わお、直球だねぇ」
「いっちゃん?亮?それともまさかの首藤?」
「はは、全部違うよ」

もちろんバネでもないからね、と念を推すサエさん。
じゃあ一体誰なんだ?
気になって体を起こし、そこで俺はあることに気付く。
――サエさんはずっと、前方にいる二つの人影を見つめていたんだ。

「俺はね、ダビデ。もし君とバネが付き合ったとしたらあいつの方が何倍も大変だと思うよ。‥‥だって君やあの子のようにかわいい後輩は、変な虫が付きやすいからさ」
「サエさん‥‥って、それバネさんが変な虫みたい!」
「ふふ、じゃあ二人のとこまで競争ねー」
「ちょ、待ってよサエさーん!」

でも、これが青春ってヤツなら嫌いじゃない。





青色の恋


(うおっ!?サエとダビデで突っ込んでくるぞ!逃げろ剣太郎!)
(えっ、なんで!?)
(剣太郎ー!愛してるー!)
(! さっ、サエさんが壊れたぁぁぁ!!)
(くっ、俺も‥!バネさん愛してるー!!!)
(えぇぇぇえ!!?)

(うんうん、六角は今日も平和なのねー)







110210
平和で良かったね(笑)※佐伯天才説は私がイメージするダビデの彼に対するイメージであって、私のイメージではありません。
 サエさんは努力家っぽい^^


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