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□立海恋愛事情
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※幸←真←柳←赤



『何番目だって良いんです。柳先輩のそばに居られるなら、俺は、それで‥‥』

赤也にそう言われた日のことを、俺は今でも昨日のことのように鮮明に覚えている。
必死で縋るその目には涙が溜まっていて、それでも俺からすれば予測の範疇であった。

『しかし惨めだぞ、赤也。おまえは悔しくないのか?』
『‥‥そんなことっ、』
『あるのだな』

赤也は寂しそうに俯き、涙を一粒零した。
――悔しい。それを言うなら俺だって、そんな感情痛いほど知っている。

つまり、一筋縄でいく恋愛などこの世に存在しないのだ。‥‥赤也が弦一郎に劣等感を抱いているように、俺も精市からすればただの負け犬なのだから。


「‥‥惨め、か。それはきっと俺にも当てはまることなのだろう」

ある日の夜、赤也を抱きながら逡巡した後に深く溜め息を吐いた。
そう、俺達は惨めなのだ。とてつもなく、想像も出来ぬ程に。

「柳先輩‥、」
「だが、それで良い。というか、それしか方法が見つからぬのだ」

俺は赤也にキスをして、今日もまたそれを弦一郎に重ねた。
目を瞑れば彼がいる。
赤也は泣いて、だけどそれも見慣れてしまったよ。

「‥‥愛してる、本当に‥愛してるんスよ柳先輩‥」

――そんなありきたりな台詞も、

「ああ、わかっている。わかってしまうことが、苦しいんだ」

――この胸の痛みも。

本当は俺も声を上げて泣いてしまいたかったけれど、残念なことに俺の体にその機能は付いていなかった。
それに、それをするなら赤也を抱いているこの瞬間ではなく、精市を想いながら俺に抱かれる弦一郎に、愛を呟く時が良い。

(愛してる、弦一郎。‥‥ああ、世界一滑稽な言葉だ)

心の中で赤也の台詞をなぞって、俺はまた溜め息を吐いた。





立海恋愛事情


(決して交わらない糸は、どこに向かって行くのだろうか)






‐Fin‐
101114


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