氷色・番外

□手荷物
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「長太郎先輩!」

『お待たせしました。』



走って待ち合わせの場所にやって来る彼。


「あたしが早く来ちゃっただけよ。
長太郎先輩だって15分も早く来てるじゃないですか?」

『女の子を待たせる訳にはいきませんからね。』



そんな誠実な彼の事を大好きだって改めて思ってしまう。


『行きますか?』

言うなり唐突に歩き出した。

「ちょっと待って下さいよ!」




慌てて長太郎先輩の後ろ姿を追う様に歩き出す。

長身の彼は人ごみの中でも目立ち、あたしの歩く目印みたい。




でも・・・。

あたしが人ごみに埋もれてしまいそうだよ。

どんどん先を歩く彼の後ろ姿が見えなくなってしまう。



「長太郎先輩・・・。」


あたしは不安になって彼に声を掛けちゃった。

『こっちにおいで。』


彼は笑って振り返ると、あたしの腰に手を掛けて小荷物の様に持ち上げて引き寄せてくれた。


『俺の事ちゃんと見失わないで下さいよ。』


「長太郎先輩、歩くの早いです。」



『なら、こうして歩けば大丈夫ですね。』



彼は照れた顔を見られたくないのか?上を向きながら、あたしと手を繋いで歩き出す。



この手を、ずっと離さないでね。




あたしは、まるで彼の手荷物みたい・・・。







〜continue〜
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