◆記念
□甘いのをちょうだい
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私は俯いた。彼の視線をひしひしと感じる。しかし私は顔をあげなかった。それでも彼は私を見つめ続けている。……気がする。
「……なに?」
観念し、話し掛けた。ただし視線は未だに足元だ。彼は何も話さない。ただ、カチャカチャと食器の音がする。
「…………なに?」
もう一度聞いた。彼は「別に」と言いまた黙り込む。
……もう我慢ならない。
「何か話してよ。気まずいし、そんなに見つめられたら気持ち悪い」
普段の彼からは想像出来ない程、寡黙。ちょっと酷いことを言ってみても、彼は無表情を崩さない。
「何、どうしたの。いつもみたいにキモいこと言って笑わせてよ。ヒソカから変態をとったら何も残らないよ」
「……」
「……」
え、何この人。私の声聞こえてますか?
……もしかして、耳が聞こえなくなる病気にかかってしまったのだろうか。そしてそれを私に伝えるかどうか迷ってる? いや待てよ、さっき「別に」と返事が返ってきたじゃないか。これは無いな。
「もしもーし、ヒソカさん?」
「キミは、」
……ヒソカさん、途中で言葉を切らないでいただきたい。挙げ句「何でもない」だなんてあんまりだ。
「今日のヒソカつまんないね。イルミでも呼ぼうかな」
半ば冗談で言い(つまり半分は本気)、携帯を取り出す。すると瞬時に携帯は真っ二つになった。
わあ、携帯が二つに増えたよ。……って、
「ヒソカこらああああ!!! わ、私の最新の携帯が! まだローンも残ってるのに!!」
何気なくトランプを弄ぶ彼を怒鳴り付け精一杯睨む。
この野郎、こっちはヒソカみたいにお金がいくらでもあるわけじゃないんだぞ!
「ねぇ、ナナコ◆」
「ヒソカ嫌い」
「……」
あ、ちょっと今のはまずかったか……。彼に謝ろうと身を乗り出す、が、彼の方から話を切り出した。
「ねぇ、ナナコ◆ 考えたんだけど…… ボク達、このまま付き合っていていいのかな? 」
「……は……はあぁ!?」