◆記念
□私の可愛い王子様
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ナナコとイルミは付き合っている。
ナナコから好きになり告白し、意外にもOKを貰ってから一ヶ月経った。
「イルミー」
「何」
「ん」
「だから何?」
現在の状況。ナナコはイルミの腕を掴み、目を閉じて唇を突き出している。
「分からないの?」
「うん。意味が分からない」
「……」
キスのおねだりポーズをやめナナコはごろんと横になった。今日も駄目だった。自分は本当に愛されているのだろうか……。
ちらりとイルミを見ると、こちらを見てもいなかった。「私のこと愛してる?」なんて聞いたら「愛? 何それ?」と真顔で答えられてしまいそうだ。
ナナコはため息をつく。
「……何なの」
「はぁ。何でも無いよ。はぁ」
「それうざいんだけど。やめてくれない?」
「ごめん。はぁ」
イルミは無表情でナナコを見た。声色からして苛々しているのはナナコにも分かったが、ついつい溜息をついてしまう。
「……」
「何でだろ……。はぁ〜」
「何でそんな溜息ばっかりなの。理由を教えてよ、言ってくれないと分からない」
「そうだよね、言ってくれないと分からないよね」
「うん」
「ならさ、イルミ。言ってよ」
「何を言えばいいの?」
「わ、私を……て…って」
「聞こえなかった。もう一回言って」
「だからっ、私を、愛してるって言ってくれない?」
イルミはナナコを凝視した。その遠慮無い視線にナナコはいたたまれなくなったが、何とか堪えてイルミと視線を合わせた。イルミは何も言わない。次第に居心地が悪くなってきたように感じたナナコは、少し早口で言葉を紡ぐ。
「だ、だって。私が告白して付き合ってって言っても、イルミは『いいよ』しか言わないし。呼んだら早かろうが遅かろうがちゃんと来てくれるけど、呼ばれたことなんて一度も無いし。恋人らしいこともしたこと無いし。……」
ああ言わなきゃよかった
ナナコの頭の中には後悔しかなかった。
「ふーん。オレに愛されてるって感じたいの?」
「う、うん」
「だから今まで何回もキスのおねだりしてたの?」
「知っ……! いつから……!」
いつから知ってたの?、とナナコは聞きたいのだが、顔が真っ赤になり頭も働かなくなっていた。
「オレが気づかない訳無いじゃん」
「……左様ですか……」
もうナナコのプライドはズタズタだった。イルミは絶対に気づいていないと思っていたので、かなり大胆に誘惑したこともあったからだ。まぁイルミは釣れなかったが。