◆記念

□二ヶ月記念*
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「ナナコ 」

「んー?」




「別れよう◆ 」




「……は」






うそつき






今日はヒソカと付き合い始めてちょうど二ヶ月経った日。つまりめでたい二ヶ月記念日だ。あたし達は今の今まで笑顔でケーキを食べていたじゃないか。この男は突然何を言い出すのだろう。



「じょ、冗談でしょ? もしかしてあたしが知らないだけで倦怠期だった? まだ二ヶ月なのに?……」



体が奮え、手に力が入る。握っていたフォークが折れて絨毯に落ちた。



「違うよ、倦怠期じゃない ボクは蜘蛛だ◆ 恨まれることも多い ナナコを危険な目に合わせたくないんだ 」



まさかのカミングアウト。は? なに? こいつ幻影旅団だったの?



「幻影旅団?」

「そう◆ 」

「えーと、誰が?」

「ボクが◆ 」

「……」



幻影旅団って、あの幻影旅団だよね。もっと凶悪な奴らかと思ったら、意外と普通なんだ。ちょっと変態だけど。



「分かるかい? キミと別れたい 」

「何よ……それ……」

「ボクが怖いかい 」



挑発するような好戦的な瞳に、あたしは無意識に一歩後ろに下が



る訳無いじゃない!!



ふざけんなッ



「だから何?」

「ん? 」

「ヒソカが幻影旅団だから、何?」



もう口は止まらなかった。何を考えているのか分からない目を細めたヒソカは、何も言わずにあたしを見下ろす。



「大体ヒソカに問題があるのは知ってるよ、知ってて付き合ってるんだよ? 戦闘狂で変態だってことも分かってて付き合ってる」

「うん◆ 」

「その細くて器用な指で、人を殺したことだってあたしは知ってる」

「そうだね◆ 」

「危険とか、今更じゃんか」

「そうか、ボク自身が危険だったんだね なら尚更別れるしか無いな 」

「ばかっ!」



立ち上がったヒソカの足に、ケーキを投げつけた。さらにフォークを拾い、その上から突き刺す。ヒソカは笑いも怒りもしない。



「何で、何で別れるの!ヒソカが幻影旅団だって関係無いっ、ヒソカはヒソカじゃん、あたしの彼氏のヒソカでしょ? 危険なら守ってくれたらいいじゃない!」



視界が揺れる。ああ、涙か。あたしこんなに涙腺脆かったっけなぁ。



「ごめんね◆ 」

「謝らないでよっ……!何がいけなかったの?

毎日ヒソカに暴力をふるったこと? 死ねって言ったこと? ヒソカが大切に置いてたシュークリームを食べたこと? 面白がって水に塩を入れたこと? ヒソカのパンツにイルミラブって書いたこと? ワックスに洗剤を混ぜたこと? ヒソカの性癖をイルミにばらしたこと?」

「……ナナコ 」

「愛してる!本当に、愛してるのっ……お願いだから、



「ナナコ、




嘘だよ◆ 」




「……は」



出ました本日二度目の「……は」。



「でも謝らなくていいんだよね? ていうかキミ、ボクのこと嫌いなの? 色々意地悪しすぎでしょ◆ 」

「ちょっ、嘘? え、嘘なの?」

「嘘じゃない方が良かったかい? 最近ナナコの愛を暴力でしか感じてないから、言葉で確かめようと思ってね◆ 」



自分がとっさに言った言葉を思い出して赤くなる。



「……ひどい」
 
 
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