◆記念
□二ヶ月記念*
1ページ/2ページ
「ナナコ 」
「んー?」
「別れよう◆ 」
「……は」
うそつき
今日はヒソカと付き合い始めてちょうど二ヶ月経った日。つまりめでたい二ヶ月記念日だ。あたし達は今の今まで笑顔でケーキを食べていたじゃないか。この男は突然何を言い出すのだろう。
「じょ、冗談でしょ? もしかしてあたしが知らないだけで倦怠期だった? まだ二ヶ月なのに?……」
体が奮え、手に力が入る。握っていたフォークが折れて絨毯に落ちた。
「違うよ、倦怠期じゃない ボクは蜘蛛だ◆ 恨まれることも多い ナナコを危険な目に合わせたくないんだ 」
まさかのカミングアウト。は? なに? こいつ幻影旅団だったの?
「幻影旅団?」
「そう◆ 」
「えーと、誰が?」
「ボクが◆ 」
「……」
幻影旅団って、あの幻影旅団だよね。もっと凶悪な奴らかと思ったら、意外と普通なんだ。ちょっと変態だけど。
「分かるかい? キミと別れたい 」
「何よ……それ……」
「ボクが怖いかい 」
挑発するような好戦的な瞳に、あたしは無意識に一歩後ろに下が
る訳無いじゃない!!
ふざけんなッ
「だから何?」
「ん? 」
「ヒソカが幻影旅団だから、何?」
もう口は止まらなかった。何を考えているのか分からない目を細めたヒソカは、何も言わずにあたしを見下ろす。
「大体ヒソカに問題があるのは知ってるよ、知ってて付き合ってるんだよ? 戦闘狂で変態だってことも分かってて付き合ってる」
「うん◆ 」
「その細くて器用な指で、人を殺したことだってあたしは知ってる」
「そうだね◆ 」
「危険とか、今更じゃんか」
「そうか、ボク自身が危険だったんだね なら尚更別れるしか無いな 」
「ばかっ!」
立ち上がったヒソカの足に、ケーキを投げつけた。さらにフォークを拾い、その上から突き刺す。ヒソカは笑いも怒りもしない。
「何で、何で別れるの!ヒソカが幻影旅団だって関係無いっ、ヒソカはヒソカじゃん、あたしの彼氏のヒソカでしょ? 危険なら守ってくれたらいいじゃない!」
視界が揺れる。ああ、涙か。あたしこんなに涙腺脆かったっけなぁ。
「ごめんね◆ 」
「謝らないでよっ……!何がいけなかったの?
毎日ヒソカに暴力をふるったこと? 死ねって言ったこと? ヒソカが大切に置いてたシュークリームを食べたこと? 面白がって水に塩を入れたこと? ヒソカのパンツにイルミラブって書いたこと? ワックスに洗剤を混ぜたこと? ヒソカの性癖をイルミにばらしたこと?」
「……ナナコ 」
「愛してる!本当に、愛してるのっ……お願いだから、
「ナナコ、
嘘だよ◆ 」
「……は」
出ました本日二度目の「……は」。
「でも謝らなくていいんだよね? ていうかキミ、ボクのこと嫌いなの? 色々意地悪しすぎでしょ◆ 」
「ちょっ、嘘? え、嘘なの?」
「嘘じゃない方が良かったかい? 最近ナナコの愛を暴力でしか感じてないから、言葉で確かめようと思ってね◆ 」
自分がとっさに言った言葉を思い出して赤くなる。
「……ひどい」