◆短編
□第4次試験
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※4次試験
ゾクッ
「ひ」
ざわざわと草木は揺れ、危険を感じた動物達は逃げていく。恐ろしい程の禍禍しいオーラ。
ビリビリと震えるような空気の中、彼、ゴンは耐えている。自分が小さな悲鳴を漏らした事にも気づかず、ただ目の前の奇術師ヒソカを見つめる。
全身を包む寒気は、まるで虫が体中を這い回っているようだ。抑えようがないくらいに足は奮え、背筋がこれでもかというくらい伸びている。
(うわ…。怖い、嫌だ、ここに居たくない!!なんて殺気だ…)
一次試験中に感じた「ゾクゾクしたけどドキドキした」なんてものは無い。今すぐ逃げ出したい。
しかしここで逃げてはいけない。ゴンはすぐに背中を丸め、かつてない恐怖から身を守った。足が竦んでいてその場から動けなかったから、というのもある。だがそれでもゴンは自分の意志でその場に残った。ギュッ、と釣竿を握りしめる。
「も〜〜やだなァ あの二人のせいで欲情してきちゃったよ… 」
ジュルリ、そんな音が聞こえた気がした。ヒソカの赤い舌が、同じ色の唇を舐めている。ゴンは自分が舐められたような錯覚に陥り、汗を流す。汗が頬を伝う間も、それが地面に落ちる時も、その音がヒソカに聞こえてしまわないかびくびくしていた。
「静めなきゃ 」
「……ッッ!!!」
突然肩を叩かれて悲鳴を上げそうになる。とっさに口を手で抑え、その上からさらに手を乗せられた。ゴンが恐る恐る振り向くと、そこには笑みを浮かべる女が居た。自分と同じ黒い髪、黒い瞳。特に特徴は無い普通の女だった。
「何してるの?」
「ぁ……、オレは、」
「誰だい 」
ぐるんとヒソカはこちらを向いた。一体何が可笑しいのか、クツクツと喉を鳴らしている。ゴンはびくりと震えた。手に力が入り釣竿は悲鳴を上げる。