雷鳴

□開幕
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最初からこうだったわけじゃない。最初からオレがこいつに従ってたなんてあるはずがない。
そもそもオレとこいつは支配するとかしねぇとかの関係じゃねえんだ。



『わかったかよ九尾のガキ』
「お、おう…。わかったけどその…九尾のガキって呼び方やめてくれってばよ。ナルトって名前があるんだ」
『そりゃあ悪かったなナルト』




八尾に自分の名を呼ばせてからナルトは八尾の頭の上で爆睡しているビーを見た。
そしてもうー度八尾を見て苦笑いをした。



暇つぶしに八尾に会ってみるかと提案したのはビーで、その時ナルトは力強く頷いた。
それが一時間ほど前。

今はビーの中の八尾と会話をはずませていた。



見たところ八尾はナルトの中の九尾のように檻の中に閉じ込められてはいないようだった。
それどころかちゃんと封印されているのかどうかすら怪しい状態だ。
いったい尾獣と何をしたらこんな仲になるのだろうか。
もし自分が封印を外したらきっと、いや確実に九尾は自分を殺そうとするだろう。

ナルトが目を伏せると、八尾は頭を少し持ち上げた。




『…こいつ振り落としてやろうか…。オレの頭の上で寝やがって…』
「なぁ八尾」
『あ?』
「おまえってちゃんと封印されてんのか?」
『されてるっちゃあされてるが…封印はゆるゆるだな』
「それはおっさんの意志なのか?」
『当たり前だろうが。てめぇの四象封印よりかは劣るがそれでもオレを封印してきた鉄甲封印だ。ビー以外には解けねーよ』
「…あのよ、おまえはおっさんの体を乗っ取って暴れたり…尾獣化したりしないのか?封印ゆるゆるならいつでも…」
『ガキ』





さっきまで軽かった空気がいきなりずんと重くなる。
八尾の表情はまったく変わっていないように見えるが、ナルトは肌で感じていた。


八尾の怒りを。



嫌な汗を流し続けるナルトとは反対に、ビーは心地良さそうに寝ている。

ピリピリした嫌な空気が空間を支配していた。



『その質問には答えてやる。その代わり二度とそのことは口に出すな。………ビーが起きてる時に言ってみろ………殺すぞ』
「っごめん…ってばよ」
『…封印が解けてる状態で何でオレが暴れねーのか。んなの簡単だ。オレが暴走したらオレは雷影達にまた封印の壺に戻される。オレが壺に封印されたらビーが尾獣を抜き取られた影響で衰弱して死ぬ。…簡単なことだろーが』
「あのおっさんのために…暴れねーのか?」
『あぁ、そうだな』




八尾はきっぱりと言い放った。
ナルトはそれにただ驚くだけで、口を開いても言うべき言葉が見つからなかった。
ナルトが黙って俯くと、八尾は怒りを抑えた。



『おまえよぉ』
「えっ、何だってばよ」
『ビーの兄貴に会ったことあるか?』
「雷影だよな?…うん、会ったことあるってばよ」
『そうか。おまえあいつのことどう思う?』
「う〜ん…。…暑苦しくて…弟思い?」



鉄の国で会った雷影のことを思いだすと、その言葉しか頭に思い浮かばなかった。
ナルトはかなり的を得た答えを返したと思ったが、八尾は何か言いたげに鼻を鳴らした。




『あれはブラコンっつーんだよ』
「ブラコン?」
『あぁ。ちなみにオレはあいつがあんまり好きじゃねえ。オレの角を叩き折ったってのもあるが…ビーを自分の目の届く範囲に置いておきたがるからな』
「雷影ってそんなやつだったのか」
『悪いやつじゃあねぇんだけどな。弟バカだ』



何となくのほほんとした空気が漂い始めた時、ずるずる、と何かが滑る音が聞こえた。
その音の正体は何のことはない、八尾の頭の上で寝ていたビーが少しずつ下へ下へとずり落ちていっている音だった。

八尾は下に落ちてしまいそうなビーの体を蛸足の尻尾で器用につまみ上げてまた元の場所へと戻した。
迷惑そうなことを言っていたわりには随分なサービスだとナルトはその光景を見ながら思ったが、八尾もまんざらでもないようだった。


保護者のようになっている八尾はまるで雷影だ。
そしてそうさせるのはビーの性格であり、全てなのだと思う。
ナルトはやはり、相容れぬとわかっていても九尾のことが気になった。
そして、八尾にどうしても訊きたいことがあった。


これを今訊かなければ恐らくもう口に出すことはないだろう。



「なぁ八尾」
『あ?んだよ、質問ばっかだな』
「……あのよ」


覚悟を決めたナルトは顔を上げて口を開いた。


「おまえとおっさんが初めて会った時のことを教えてくれ」



 
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